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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第八章 神聖皇国レーベルラッド
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第117話 そんなつもりはなかった

申し訳ありません、予約時間を間違えていました……

遅れましたが投稿いたします。

 婚姻式までは後3日と迫っていた。私はと言うと、引き続き半身には問題児さんや教皇の様子、シエロと剛谷のやり取り様子を録画させているよ。


 けど、この2日で大分変化は起きている。良い方に?……多分良い方だと思いたい。



 例えば今日、剛谷がシエロの部屋に押し掛けて来た時。私もそれ見てたんだけど、色々

とおかしな朝の始まり方だった。



「剛谷様。勇者であるならば、規則正しく生きねばなりません。レディの部屋に入る際には必ずノックをするのが紳士にあるべき行動ですよ?」

「え、え?あ、はいッ!あれ?シエロちゃん何か昨日とちg「剛谷様?」はいッ!!」

「まだ婚姻前の女に軽々しくそのような名前の呼び方をしてはいけません。本来ならば婚姻前の女性の部屋に入ることすら慎まれるべきなのです。それを許されているのは、貴方の勇者としての功績があるからこそなのです。では、それを踏まえてもう一度、貴方と私の立場を考えて呼んでみましょう」

「……えっと……しe「名前ではなく」み、巫女様ッ!!」

「はい、なんでしょうか?」


 散々問題児さんの接し方を指摘した挙句のこの笑顔である。あれぇ、おっかしいなぁ……私、シエロがもっと優しくしちゃうのかと思ってたのになぁ……問題児さんが凄いオドオドしてしまってるし。もしかしてあっちが素とかだったりする?



「えっと……今日こそは、ウエディングドレスを決めようっと来たんだけどさ?」

「それならばもうこちらで決めました。昨日はぐっすりでしたものね?既に手配は済ませてありますので、剛谷様は今日から正しき指導者として特訓して頂きます。上に立つ者であるならばマナーを知らねば生きてはいけません。イロハすら知らないのならばそれも含めてミッチリやります。良いですね?」


「そ、そんn「い・い・で・す・ね?」……はい」


 あっちが素だったかぁ……問題児さん改め剛谷と呼ぼう。女性免疫が無かったからあんな喋り方だったんだねきっと。ま、まぁ良いか。シエロが活き活きしてるんだし。私達はもう片方を見に行こうか?アリーナ。


『ういふー♪』





「……グシ…グシシ……」

『あの人たのしそ~』

『楽しそう……まぁ確かに笑っているけど』



 やって来たのは城内の一室、枢機卿の私室だ。実際、枢機卿はちゃんと外に別宅を構えているのだが、自らが反乱を起こし排除した教皇・シエロ派の人間に強襲される恐れを考えてこちらに住んでいるらしい。


『情報提供者のアリマニさんには蜜酒を1樽分あげといたよ』

『ふとっぱら~♪』


 さて枢機卿だけど、外見は……うん、とにかく太い。一言で言えばダルマに手首と足首が付いているようなそんな体形かな。野太い眉毛なチャームポイントだと思うよ。今冬の筈なのに室内で汗垂れ流してるし、運動した方が良いと思うなぁ。

 名前はランド・マクゲイル……か。凄い、あの体躯なのにステータスが初期のフォルナ以下だ……



 今は何かの帳簿?かな。みたいなのを見ながらほくそ笑んでいたので、上からその映像を録画していた。ご苦労様私。お疲れ様私。

 そいで私達も見てみると、ほーん出るわ出るわ横領の数々。国のお金使って珍しい魔道具やら観光地近くに別荘やら建てているみたいだね。チョコチョコやってる辺り姑息だ。


 まぁこっちはこれで片付く問題だったなぁ。地下に居るであろう権力者共々白日の下に晒すけど、そこらへんはアリマニさんが上手くやってくれるだろうさ。


『じゃあもう少しこの人を見たら次行こう。まだまだ色々出してくれるかもだし』

『おたから?』

『盗んじゃ駄目よ?』

『あぷー』

 はい、その膨らみほっぺ押しまーす。




「クアッド、レーベルは?」

「まだ眠ってらっしゃってますなぁ」

「れ~べる~」

 宿屋の部屋に戻ると、クアッドはずっと眠っているレーベルを見ていてくれた。昨日からまったく眼を覚まさない相棒。美香が言うには本体が豆粒ぐらいの大きさまで小さくなったって言うんだから、人のこと言えないじゃんか。レーベルの馬鹿。


「起きたら説教しないとね、アリーナ?」

「ぷんすッ!」

 ん?またほっぺ押して貰いたいの?よーし、クアッドと片方ずつ押しちゃる。



 美香の方も気になってたんだけど、遂に1人目を倒してたよ。私達自身からノリの意見貰ってそのまま実行するとはやるじゃないか。けどそれで良いのか勇者?美香だから良いか。


「クアッドは観光?」

「いえ、一通り巡り終わりましてな。今日は1日レーベル殿を見ていたいと思います。お2人はどうされますかな?」

「今日は1日『妖精魔法』の練習かな。2日後には美香の聖鎧を取りに行く予定だしね。諸々の準備は前日に全部やるし」

「なるほど、では部屋に?」

「そのつもり。さぁアリーナ、修行開始だよ」

「ほいさッ!」



 私達はベッドに横になり、お互いの手を握って眼を閉じた。今から始まるのは言った通り『妖精魔法』の修行だ。

 ただし、直接魔法は使わない。『複数思考』を使い、『同調』したアリーナと全ての思考でゲームをするだけだ。


 全て違う種類のゲームで。



「それでは」

「お願いしますッ!」



『黒、右上隅星』

『天元』


『2六歩』

『5二飛』


『あめだま』

『まもの〜』

『濃度』

『どげざ〜』


『一番下取るよ~』

『ばっちこい♪』


『右手青』

『左足赤~♪』


『dのポーンをd5へ』

『fのポーンをf3へ~』

 

 現在は6つの思考でそれぞれ囲碁・将棋・しりとり・ジェンガ・ツイスターゲーム・チェスでやっていた。とにかく全部キツイ。私がアリーナに勝てる可能性があるのは……ごめん何も無かった。私は一度として、全てのゲームでアリーナに勝った事が無い。


 INTの差と言われればそれまでだけど、単純にアリーナは私よりもゲームをやり込み、そしてこの世界の誰よりも熟知しているのだ。更にヤバいのは、それ等が全て極限まで昇華されており、おそらくクアッドでも潜り込めない位置まで読んでしまっているということ。


 なんせ一手打てばノータイムで返されてしまう。こちらも賢明に手を考えるけど、それも待っていたかのように打ち返され、負けへと誘導されていくのだ。


 静かに、確実に、一つの反撃すら許されずに。

 

 けど、負けたけど。悔しいけど、楽しい。何度かやった修行方法だけど、この時間が一番安らいでいるのが自分でも分かる。


 

 全てを全力投球で相手の思考に潜り込ませて使っていると、アリーナと2人きりの世界で、永遠にぬるま湯の中に浸っている気分になる。




 とっても深いところで、繋がっている気分になる。





「けど負けるんだよなぁー……」

「勝ったー♪」


 はい、通算3499戦3499敗目です。いや無理、勝てんて。幾ら繋がっているのが気持ちよくてもそれで勝てる程アリーナまったく甘くないのよ。態度は甘々通り越して脳みそトロけるぐらい優しいのに。


「んふ~~~ッ!!」


 しかも繋がっている間その気持ち良さも全部アリーナに伝わるから、終わったら頬を紅く染めたアリーナにハグされるんだよ?一杯ほっぺちゅうされんだよ?勝てる訳ないやん?


(いや駄目だ、耐えるのよ私ッ!!例え全身から愛が噴き出て絶命しようと、せめて一勝ぐらいは勝ち取らないと色んな意味で示しが付かないッ!!)


 けど実際問題、今の私では逆立ちから反転宙返りしてアリーナには勝てないだろう。なんせINTに『妖精魔法 で全振りしても勝てなかったんだから。どうなってんの?ステータス差関係無いのん?



 ん~~~~~~………やってみるか、禁断の方法。



「アリーナ、ちょっと私の性格変わるけど、最後にもう一勝負お願い」

「良いよッ!」

「よし、じゃあ、妖精魔法……はつぴょッ!!」



 私の意識は、そこで途切れた。








…………っはッ!!!

「どうなってうぅぉおおッ!!??」


 ベッドの上で私達は裸になって抱き合って寝ていた。え?何があった?勝負してたよね?私何したの?


「おぉ、ようやく意識が戻ったみたいですなアイドリー嬢。とりあえず服を着られてはいかがですかな?」

 と言ってクアッドは私達の服を差し出した。え、何で持ってんの?え?私が脱いでアリーナのも脱がして渡したって?何やってんの私?マジで何やってんのッ!!?


「あいどり~~」

「アリーナッ!大丈夫!?」

「へいひ~」


 心なしか唇が少しふやけてるアリーナが呂律の回っていない口で喋る。裸で、潤んだ瞳で、紅く上気した頬で、私の隣で……………ふぅ。よし、少し落ち着いた。



 事の顛末を簡単に纏めると、私達は裸の状態で抱き合い、先程同様の勝負をしていたらしい。ただ、かなりの接戦だったらしく、夕方を通り越して夜中までやっていたんだってさ。勝負したゲームは将棋。勝ったのは……私とのことだ。


 そっか、やっぱりそうなるのか。だとすると、これは本当の最終手段として使える。ただし私の自我が無くなるから結果から過程を全て吹っ飛ばすけど。出来れば今回のはアリーナだけのものと思いたいな……レーベルでもやりそうだけど、いいやレーベルなら。



「えっと、本当にごめんねアリーナ?怖くなかった?」

「全然………凄い気持ち良かった…またしたいの……駄目?」

「……」

「おっとアリーナ嬢、アイドリー嬢が気絶してしまったのでそこらへんで」

「ありゃー」


 数時間後に起きたレーベルに「何で起きたまま寝てるんじゃ主よ?」と言われるまで私の眼は覚めなかった。


次の日


「今日も朝からアリーナがよく引っ付いとるのう主よ。いつもの三割増しぐらいで」

「いや……うん、なんでだろうね。はは……」

「~~♪♪」

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