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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第八章 神聖皇国レーベルラッド
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第116話 意識改革

「ということでして……」

「あー…うん、私も日ノ本さん派かなぁ…けど、シエロはちょっとだけ同情しちゃったんでしょ?」

「はい……誠に恥ずかしながら、彼の見る眼が少しだけ変わってしまいました。確かに私や美香にした仕打ち、お父様や騎士団への仕打ちはとても許せるものではありませんが……」


 そりゃあんた、半身から連絡受けてみればベッドの上で泣きじゃくってるぐらいだもんね。私も慌てて行ったさ。それで何が原因かと思って録画水晶を見てみれば、あの光景なんだからさ。


 これだと作戦開始した瞬間ただの公開処刑になっちゃうねぇ……結末だけ変えるか。


「とにかく少し方向を修正しようか。叩き潰す事は確定だけど」

「そ、それも出来るだけ穏便にして頂ければと。制裁だけ出来れば良いので……」

「いや、痛い目見させて正気に取り戻させないと駄目でしょ?」


 大丈夫、絶対に殺さないから。精々半殺しだから。


 けどこれで決まりだね。この国は信仰する側もされる側も正気に戻す必要がある。朝比奈が派遣しなければ私の勤労は最小限で済んだのに……朝比奈マジ許すまじ。



「シエロ、問題児さんは馬鹿だ。自分で首を絞めているのにそれを止められない。だから、彼の考えは一度全部壊そう。その為に、貴方も恐れず立ち向かわないと駄目だってことが分かった。耐えてるだけじゃ解決しないよこれ」

「はい、私ももう彼と眼を合わせないということは止めます。美香に言った言葉を私は彼にも言わねばなりませんから」


 そう言って半身にお菓子をあげるシエロ。おい私、美少女に餌付けされるとは羨ましいじゃないか。え?最高だって?だろうねッ!!っと、欲望の会話にかまけて私の本題を忘れるところだったね。


「ああそうだ。シエロ、枢機卿って何処に居るか知ってる?」







「むぅ……まだ駄目かのう」


 レーベルは何百回目か分からないコンティニューの中眼を覚ます。いつものように起き上がりアイドリーズを見ると、その数はもう半分といったところだった。美香は未だに1人目で苦戦している。もう何度寸止めされたか分からないぐらいに。


「向こうも進まぬようじゃのう……まぁ良い。ほれ、次じゃ。来るがよい、主達よ」


 そうして何度目か分からない一方的に不利な戦いがまた開始される。アイドリーズを倒した御蔭で大分レベルが上がり戦いが楽にはなったが、未だレーベルが求める戦い方にはなっていなかった。


(これでは主達に申し訳が立たぬのう……)


 前よりは軽くなったアイドリーズ達の攻撃を捌きながら、レーベルは考える。未だに自分の種族は『覚醒』していない。祖父の言われた通りのやり方の筈なのに。否、もう何百年も前からやり方は変わっていないのだ。彼女は覚醒する為に今までの行動を繰り返していたのだから。



「ほっとッ!しかしこれでは、ただの訓練じゃなッ!!………よーし、試してみるとするかのう」



 レーベルは、身体にほぼ全ての魔力を捧げた。



 身体中から紅い魔力が眼で見える程の濃密さを持って現れる。それは熱となり、足元の雪も、その下の土もドロドロに溶かし始める。


 手に持っていたハルバードも耐え切れずに少しずつだが溶け始めた。その状態にアイドリーズ達は動きを止める。


「レーベル、何をッ!?」


 それを見ていた美香が戦いを止めレーベルに問いかけるが、彼女はまったく見向きもしなかった。


「なに、ちょっとした実験じゃよ。良いから来い主達よ……我を、殺してみせよッッ!!!」


 レーベルは、初めてアイドリーズ達に本気の殺気で襲い掛かった。即座に散開し水魔法を中心に戦い始めるアイドリーズ。だがレーベルは意にも返さずその攻撃を全て触れる前に蒸発させていく。



「しゃぁぁぁぁあああらぁああああああぁーーーーーッッ!!!!」

「ッッ!!!」



 猛烈な熱風を纏いながらアイドリーズ達の中心に突っ込むと、ハルバードを力の限り横降りした。その一撃はアイドリーズ達を吹っ飛ばしたが、ハルバードはその瞬間役目を終えたように爆散する。



 だが、レーベルはもう1つの『本当の武器』を解き放った。いや、放てた。


 レーベルと同じく濃密な紅色の魔力を身に纏うその武器を見たレーベルは、戦いも忘れて笑いが止まらなくなる。


 

「はぁっはッ!!!やったぞッ!!遂に出おったなこやつめッ!!!ふははははげぼはぁッ!!!」

「レベールッ!!??」


 そして高笑いを上げながら水槍で串刺しにされたレーベル。そのまま生気を失い、パタリと倒れる。流石に今までと様子の違う彼女を見て慌てて美香は駆け寄った。レーベルを近くで見ると、豆粒のような宝石が額にあるのを見つける。


「うそ……こんなに小さくなっちゃったの!?ちょ、みんな早く魔力渡してあげてッ!!」


 緊急事態により、全てのアイドリーズ達がレーベルに向けて魔力を流し込むと、徐々にだが宝石は大きくなっていく。手の平サイズまで大きくなる頃には、ほとんどのアイドリーズ達が消えてしまっていた。



 美香に用意されたアイドリーズ達を除いて最後の1体となったところで、レーベルが復活した。だが、姿が子供体形まで縮んだ状態で。


「……む…なるほど、こうなったのじゃな。アイドリーズ達が居なくなっておるが、やはりギリギリじゃったか?」

「そうだよッ!!何て無茶してるのさッ!?」


 美香は言い迫るが、レーベルはどこ吹く風と流してしまう。


「しょうがなかろう。これぐらいせんとあの武器を出せんかったのじゃ。しかしこれで固有スキルとしても会得出来た。レベルも上がり……よし、覚醒も成功しておる」


 シッシッシと笑いながら自分のステータスを見るレーベルに、美香はある意味の恐怖を感じていた。あんな簡単に死にかけているのに、死への意識が低過ぎるのだ。思わずその場にへたり込んだ。



「そ、そこまでしないと駄目なの?」

「おん?……あーそうか。美香は人間だから分からんかもしれんが、我々古龍は、その暮らしは本来魔物の中、それも最上級に危険な場所じゃ。その中では毎日弱肉強食、例え古龍と言えど死の危険性が付き纏うのじゃ。だが、我等はそれ故に強さへは貪欲じゃった。例えそれで死んだとしても、な」

「けど、死んだらアリーナちゃん悲しむよ!?」

「うぐっ!……今はそれを言われると困るんじゃが、しかしこれは古龍の本能にも似た行動じゃから、変えることは出来ぬ。死の中にこそ強さが宿る。死線の中にこそ活路を見出す。それは人間でも同じであろう?」



 美香の膝に座り、何もかもを妖美に燃やし尽くしそうな紅い赤い瞳で美香の顔を見上げるレーベル。そこには一片の迷いの無い意志があった。



「我とて死ぬのは嫌じゃよ。しかし、必要ならば、そうしなくては大事な者の命が危機に晒されてしまうなら、希望が潰えてしまうなら……その時は命を賭けねばならん。だからそんな事が起こらぬように、自らを例え悪鬼修羅の茨道の修行であろうと、やるのじゃ。勝つ為に、守る為に、生き抜く為に」

「……凄いなぁ」

「なに、こんなこと言っておるが、根底は至極単純じゃぞ?」



 レーベルは立ち上がった。立ち上がっても目線は座っている美香と変わらない。そのまま手を伸ばして、美香の目を見ながら撫でる。


「こうやって誰かの頭を撫で付け愛でる喜びを得る為に、我は今戦っておるのじゃからな」

「……レーベルが男だったら本気で惚れてたよ」

「すまんな、我の隣はアリーナで埋まっておる。おっとアイドリーズよ、今我空っぽじゃからその剣で刺されるとマジで死ぬからな我?」


 アリーナという言葉が出た瞬間周囲に待機していたアイドリーズ達の凄みのある真顔の恐怖が2人を襲ったのだった。




「……ふぅ」


 あれから、レーベルは疲れたと言ってそのまま寝てしまった。1人残ったアイドリーズがレーベルを膝枕し、身体を保温してあげてるのを横目に、私は私のすることに目を向ける。目の前に居る人に勝つ為の策を作らなければならない。


「……ん~~~ッ!!」


 けど何も思いつかない。私にあるのは『聖剣』という武器とスキルだけで、それに何かを組み合わせるという事が出来ないからなぁ……レーベルみたいに種族的特性を生かした技とかも作れないし……


「…………待てよ?……アイドリーズちゃん達集合」

「「「?」」」

 3人揃って真顔ジト目でこっちに来た。うはぁ、何かに目覚めそうだよ。っていけない、ちゃんと真剣にやらないとッ!


「えっとね?貴方達の知恵を貸して欲しいの、ノリで良いから適当に色々意見を言って欲しいんだけど」

「「「よしきた」」」


 ということで、私の戦い方の開拓に一役買って貰うことにした。そして1時間程議論を重ねてみた結果……




「ん~どれも直ぐに出来るか分からないなぁ……?」


 幾つかは練習すればいけそうだけど、考えた本人達に通用するか分からない……いや、やる前から諦めちゃ駄目だよねッ!!よっし、やってやるんだからッ!!


「いくぞぉー、えい、えい」

「「「おーッ!!」」」


「むぐぁ…うるひゃいのじゃぁ……zZ」

没技

「聖剣に鎖付けて回そう」

「聖属性魔法を超高密度で放ってレーザーみたいにならない?」

「女は黙って拳で語ろう」

「……合体」

「「「それだッ!!」」」


「ノリにも限度があるよッ!?」

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