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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第二章 冒険者になってみた
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第12話 初めての護衛

「護衛依頼、ですか?」

「うん。聞いた話に寄ると、冒険者が足りてないんでしょ?」


 朝早くからギルドに行くと眠そうな顔したレーナさんが居たので、早速依頼のお願いをしたんだけど、案の定渋い顔をしていた。具体的にはジト目で睨まれた。んー仕事人な顔してるなぁ、私は好きよ。

(ゾクゾクしちゃうの~?)

(しちゃうのです)


 彼女はまるで調子に乗った新人冒険者を窘める様な顔で口を開いた。


「昨日説明したと思いますけど、護衛は中級冒険、最低でもDランクのパーティが望ましいんです。アイドリーさんまだ1人ですよね? 本当にやる気ですか?」

「実はベアウルフを同時に6匹仕留めた事があるって言ったら?」

「盗賊10人に囲まれるよりはマシですッ!守りながら戦うのも大変なんですよ?とても一人じゃ無理ですよ……」


 当然の正論を言われては私も口が開けなくなる。人である私では確かに無理だと思われるよね。下がる気は無いんだけどさ。



「けど、他に冒険者は居ないんでしょ? この人の依頼では隣町までの護衛だから、1日荷馬車を走らせれば辿り着けるし、そこまでの危険は無いと思うんだけれど?」

「ん~~~分からない人ですねぇ」

「いや、心配されてるのは分かるから。ごめんね?」

「そういうことじゃありま「良いじゃねぇか?」――ギルド長!?」


 レーナさんの後ろから出て来たのは、昨日戦った試験官、ドロアさんだった……ギルド長?


「おはよう。ギルド長って試験官もやるの?」

「おはようさん。いや、あれは暇潰しだ」

「仕事して下さい!!」

「そうだ~仕事しろ~」

「貴方は自重です!」

「……あい」


 怖い。目がジャッカルだ。


「まぁまぁ。で、アイドリー。お前護衛を舐めてると死ぬことは分かってるな? 通常の討伐より数倍難しいことも。更に1人だ。難易度で言うならBランクまで跳ね上がる。それでもやるか?」

「ある人の信頼を得て約束したからね。なんと言われてもやり遂げるつもりだよ。この街の冒険者は今役に立たないみたいだし」


 その言葉に2人は顔を露骨に歪めた。やはり思うところはあるようだ。


「レッドドラゴン討伐の件か。確かにあれはしょうがないとは言え、街の流通を止める程冒険者を集めるのはやり過ぎだな。ほれ、これ見てみろ」


 渡されたのは、レッドドラゴンの討伐依頼の紙だ。読んでみると、明らかにおかしいことが一つある。


「なにこれ、ランク制限が無い?」

「ああ、だから初級ランクの奴等もこぞって行っちまった。こちらが止めるのも聞かずにな。商人ギルドのギルド長と一度領主に直訴しに行ったんだが、門前払いされちまったしよ。だからお前さんみたいな奴しか今頼れる奴が居ない……でな?」

 

ドロアさんは私の耳を貸せと言うので、頭を傾ける。



「戦った俺だから分かるが、お前さん全然本気じゃなかったろ?おそらくだが『手加減』と『隠蔽』のスキル持ってんな?」

「!!」


 うっ……やっぱり分かる人には分かるんだね。ここは素直に認めておこう。変に怪しまれるよりマシだし。


「よくわかったね」

「長年この仕事やってるからな。手加減スキルなんて持ってる奴そうそう居ない。だから同類の臭いは分かるのさ。で、余裕なんだろ?」

「……条件は?」


 ニヤリとドロアは笑った。もうさん付けしてやんないもんね。


「話が早くて助かる。お前には優先的に期限の迫った依頼をこなしていって欲しい。その分街への貢献度が大きいからランク昇格も早くなる。ランクが高くなればそれだけお前も力を隠す必要が無くなるし金も良く溜まるって寸法だ。どうせ訳ありなんだろ?」

「そんなに長く居つくつもりはないよ?」

「レッドドラゴンの討伐隊が数日後に出発する。遅くても1ヶ月あれば討伐を終えて帰って来るから、それまでで良い。どうだ?」


 しばし考える。依頼板を見る限り、1ヶ月でこなせる量などたかが知れている。しかもそのほとんどは商人の護衛任務だ。それだけでも50近くある。


「……ん?」

「どうした?」

「……いや、なんでもない。良いよ。それ受けるよ。ただし条件がある」

「おう、出来る限り聞いてやる。言ってみろ」


 なら耳を拝借。ごにょごよごにょにょ~にょごにょ。


 話し終えると、それはそれで困ったという顔になる。


「……あー、確かに出来なくは無い。だが説得が大変だぞそれ。つーか出来るのか本当に?」

「そこらへんは任せる。私はとりあえず今日の護衛をして明日帰って来るから、明日の昼過ぎにまた顔を出すね。出来るかどうかで言ったら……楽勝だね」


「……わかった。レーナ!!」

「は、はい!」


 こちらを茫然と見ていたレーナさんにドロアが声を掛けると、ビクっと我にかえった。ごめんね仲間外れにして。


「こいつの依頼を受理してくれ。後こいつが発行したステータス表は一旦破棄だ。後日また新しいの作らせる」

「え、あ、はい。わかりました」

「それじゃあ行ってきまーす」





 外に出ると、1人の男が既に私を待っていた。1人はパッドさん。もう1人は……


「おはようパッドさん。で、貴方がアルバさん?」

「ああ、そうだ……おいパッド。お前本当に冗談じゃなかったんだな」

「だから言ったろ。安心しろって」


 一体どんな説明したんだろう? まぁなんでも良いけど。


「ちょっと揉めたけど、依頼は受理されたよ。準備が出来てるなら行こう。積み荷は?」

「ああ、入り口広場にあるが。嬢ちゃん、本当に大丈夫なんだな?」

「保証はするよ」


 なんとも信用出来なそうな顔をするが、アルバさんは深い溜息を零すと、そのまま広場に向かって歩きだした。手で来いと合図を出される。


「どうやら良いみたいだね。じゃあパッドさん、私行って来るね」

「ああ。ちょっと気難しい奴だけど、悪い奴じゃないんだ。どうか頼むよ」

「任された」


 パッドさんの期待とかもあるけど、アルバさんを救うことで商人達からの信用も得ていかないとだからね。にしても……


(信用さんナシ~?)

(まぁ女の子に守られるって言われても心配しちゃうよね普通は。ま、その分頑張るよ)

(貴方を応援するアリーナです!)


 アリーナに応援されれば100万馬力ですよあたしゃあ。



 さて、広場に付くまでに保険を頼んでおこうかな。


(さてさてアリーナさん?)

(なーにー?(パチッ))


 アリーナ、朝起きてからずっと私のフードの中で1人将棋をしている。まさかこんなに嵌るなんて思わなったよ。まだまだ負けない……と思うけど。


(これから友達の頼みで隣町まで行くんだけど、街に着くまであの男の人の肩に乗っていて欲しいの)

(んー?)


 アリーナはいそいそとフードから顔を出すと、指定されたアルバさんをしばらく見つめる始め、数秒後に笑顔になった。


(いいよ!)

(ありがとう。よろしくね)



 これで万が一アルバさんが襲われても、アリーナが助けに入ってくれるだろう。最初の頃は絶対に矢面には立たせないと意気込んではいたんだけどね。ここらへんの魔物やドロアのステータスを見てて、「あ、これ絶対大丈夫なやつだ」と思ったのでこうした。




「……なにこれ?」

「なにって、『レブナント鉱石』だ……まさか知らんのか?」


 広場に着いたら、荷馬車の後ろに鉄製の荷車が2つ繋がっていた。その中にはエメラルド色の石が満杯に詰まっている。これがレブナント鉱石?


「ほれ、1個持ってみろ」

「え、わっ」


 拳大の鉱石を私に投げ渡してきた。というか早いよ!野球ボールの剛速球を受け取ったような音したよ!?


 石を握ってみると、なんとなく脈動しているのが分かる。光る原因が魔力なのは確かだけど、どうやって蓄えられてるんだろう? とりあえず感じたことそのまま言ってしまおう。


「何か脈動してるし、魔力を感じるね」

「おう、通称”鼓動する石”なんて呼ばれ方もしてる。そいつが魔道具や武器の素材になるんだよ。で、これを待っている鍛冶屋が隣町に大勢居る。あいつらに石を運んでやらなきゃならん。でないとあいつらも生活出来ないからな」


 

「それはいけないね。早速出発しよう」

「おう、で、他の奴はまだなのか?」


「え?」

「ん?」


 他の人…………?


「おい……おいおいまさか」

「私一人だよ? ソロだもん」

「嘘だろ嬢ちゃん!!??」

「レブナント鉱石って幾らぐらいなの?」

「今の相場だと、100ℊあたり金貨3枚(300万円)ぐらいだ」

「たっかっ!!!」

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