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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第八章 神聖皇国レーベルラッド
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第107話 空の旅夢気分

「今思っても、珍しく強引な手を使ったのう主よ」

「しゃあない。あれぐらいインパクトが無いとね。それに武闘会のネームバリューも使っておかないと損じゃん?ノリ的に」

「綺麗だった~♪」

「そりゃあ良かったよ。ほら、次のをお舐め」

「はもっ……にがみ~」

「はむっ……ほんとだ、う~~ん上手くいかないなぁ」


 私達はアモーネのギルド職員に書類を渡した後、とっとと馬車とゴーレム馬を出して出発した。アモーネに留まった期間は予想以上に短く済んだのは良かったね。短期間でもシエロは強く出来たし、美香も勇者と戦えるだけの力を手に入れた。



 さて、そんなこんなで私達はシエロの故郷、レーベルラッドへ行く道中である。北に近付く程寒さは増してくるけど、妖精の私達には関係ない。ただ、レーベルが寒がっていたので、妖精の姿の私とアリーナで引っ付き、妖精魔法で身体を保温していた。

 そして私は飴玉で味の練習をしながらアリーナや他の皆に試食して貰っている。今まで一番ヤバかったのは舌に激痛を走らせた味だったね……味だったのかな?


「甘いのを出そうとしているのに何で辛くなるんだろ……?」

「それは頭の中で対抗する味を思い浮かべてしまうからですな。そうなると逆の味が出易いのですよ」

「ほへぇ……もっと単純に考えられれば良いんだけどなぁ」


 老紳士クアッドは御者台で楽しそうにゴーレム馬の手綱を引きながら答えてくれたけど、その馬、手綱引く必要無いんだよね……。


 私は何だろう、人間的な感性で考えてしまうから、純粋に1つの事を考えるのが苦手だ。ノリに身を任せればいけると思うんだけど、日常で出せるようになりたのよ。


「みんな~、できた~、たべて~♪」

「ああ、うん………わぁ、超うめぇ……」

「ほんとうじゃ、世界樹の飴そっくりの味じゃな」


 クアッドはアリーナにも私と同じように、しかし小出しで妖精魔法の経験値をくれた。それをアリーナは私よりも速くそれ等を吸収し使いこなしてるんだよねぇ……ハイスペック過ぎない?

「「……」」


 おっと、勇者と巫女がまた限界のようだ。そろそろ休もう。




 遠くに見える雪山をしり目に、まだ草原の見える位置で私達は暖かいスープを飲みながらこれからの話をしていた。話では、あの向こうにレーベルラッドはあるらしい。


「それで、レーベルラッドってどんな国なの?私勇者教の信者だらけって話しか知らないんだけど」

「全然知らないんじゃん……えっとね。レーベルラッドは山に覆われた秘境の国なんだよ。勿論専用の道があるから全然危険じゃないんだけどね?」

「そして、国全てが純白の建物で統一された美しい国ですよ。しかし人々の心は温かく、外から来た人達にも親切に教えてくれます」


 それからも2人を話しを聞いていた。勇者教信者のルールや特有の格好。教会の場所、地形、そしてシエロの家もある大聖堂付きの城の場所も。



「剛谷は?今どうしてるか分かる?」

「今は……どうにも分かりません。レーベルラッドの情報は普段そこまで出回らないのです。勇者教としての特色しか知られていませんから。それに、乗っ取りも一瞬でしたし……既に教皇になっている可能性もあります。教皇の顔は国民達には見えないですから……」

「それに、教皇の言葉なら信者は皆その通りに動いちゃうから、下手すると大変なルールが加えられてる可能性もあるんだよね……流石にそんな分かり易い馬鹿はしないと思うけど」



 だから乗っ取っていてもバレないってことか。それなら主要人物だけ抑えれば何とでもなるね。国民達が何も知らずに暮らしているというなら、シエロのお父さんを救い出してそれで終わりになりそうだ。剛谷にはレーベルラッドから出て行って貰うけど。


 懸念事項はその教皇の言葉による新たなルールかな?こっちに不利な感じでなければ良いけど。


「じゃあ作戦を考えようか。2人は何かある?」

「とにかく私は自分の聖鎧を取りに行くよ。あれがあれば剛谷君にも対抗出来るし、今のステータスなら勝てるからね」

「私はお父様を救い出します。本物の教皇が言葉を紡げば剛谷の乗っ取りも白紙に戻せますから。侵入口は、私達が逃げ出した抜け穴がありますから、それで行けます」


 正攻法としては十分だね。私達のグループがそこに入れば安全に遂行出来そうだ。イレギュラーが無ければだけど。


「じゃあ班決めしよっか」



 

 そして暫くの話し合いの結果、それぞれのグループが決定した。


 聖鎧を取り戻し、剛谷を打倒しようチーム。

・レーベル

・美香


 シエロの父親を救出しようチーム

・クアッド

・シエロ


 レーベルラッド探検チーム

・アイドリー

・アリーナ



「よし、完璧だね」

「殴り倒すぞ主よ」

「「ほよ?」」

「ぐっアリーナは可愛いが、主がやるとムカつくのじゃ……」


 えー…だって、新しい国探検してみたいんだもん。なんだかんだ上だけで全てを終わらせるってのもあれだし。何より私が介入し過ぎている気がしなくもないからね。それに、やることもちゃんとあるんだよ?


「探検とは言ったけど、基本的にやるのは情報収拾と国の様子を見る為だよ。どんな風に変わっているかも分からないし。後……シエロ、さっきの抜け穴の話だけど、それってどことどこが繋がってるの?」

「え?ええと、教皇の自室と、山の使われてない坑道です」

「多分それバレてるから、使わない方が良いよ?」

「確かにのう」


 その言葉を聞いてシエロは落胆する。いや、多分把握されてない筈が無いし、君のお父さんに吐かせない筈が無いもの。まず罠が仕掛けられている筈だよ。


「じゃあ、どうやって侵入するの?門で確認されたら確実にバレるよ?特にシエロが」

「そりゃあ、地上が駄目なら空からでしょ」

「……え?」


 私は侵入経路を話すと、立ち上がってゴーレム馬と馬車を収納した。さてさて、夜まではテントで過ごすかな。妖精魔法で保温しとけばあったかいでしょ。


「ちょっと、話すだけ話して準備始めないでよッ!?」

「おい、それ我が凄い寒いんではないかッ!?」

「わ、私死んじゃいますよ~~~」


 と思ってたら青い顔した3人が私の肩を掴んで抗議してきた。アリーナ?クアッドとティータイム中だけど?


「大丈夫だって。美香にはモーリスを貸してあげるからクッションになるし。レーベルは着地するまでの間は保温してあげるよ。シエロはクアッドが受け止めてくれるから安全だしね。それに、クアッドは妖精魔法の扱いが私より上だから。私が居なくても上手くやってくれるんじゃないかな?」

「そ、そうかもしれないけどさぁ……」

「んーじゃあ、あれだ」



 私は立ち上がって妖精魔法を発動した。

(イメージは、ガルアニアで生み出した時の自分の分身。今回は回復じゃなくて……で、発動ッ!!)



 手の平から、私の分身体が妖精として現れた。妖精は広がるようにして更に2体に別れ、それぞれの肩の上に乗った。

 アリーナが「ねーアイドリー、私も、私もほしー、出してー?」って言うけど、貴方は本体で我慢してつかーさい。



「す、凄い、愛らしい妖精が……口が達者じゃないアイドリーが生まれた……」

「ヨクモイッタナオロカモノ」

「うわ、片言だッ!!」


 私の思考そのままに喋るからね。全部ノリだけど。今回は複数体だから多少片言になっちゃったよ。というか、口が達者じゃないって…そこまで達者なこと言ったかな…?


「美香は後でお仕置きするとして……その分身は『通信』が出来るようになってるから、頼めば私に繋いでくれるよ。ただ、定期的に魔力を補充してあげてね」

「相変わらず出鱈目じゃな妖精魔法……」

「ヤメレ~」


 私の分身を弄り回すレーベル。ちょっと夢中になっているようだ。クアッドは分身を頭に乗せながら「面白い使い方ですなぁ」とニコニコと飴玉をあげている。


「えへ、えへへ……」

「……美香?」

「えへへ……っは!!」

 人の分身の足を開いて何を見ているのかな?このポンコツは……




 真夜中、極寒とも呼べる山に囲まれた国、月明りに照らされているであろう白銀の国レーベルラッド。その遥か上空で、1匹の赤い龍が緩やかに下降しながらその時を待っていた。




「うわぁ……こっから落ちるの?」

「怖いですッ!!これは無理ですッ!!!」

「クアッド、シエロ離さないであげてね。きっと気絶するから」

「承知しましたぞ」


 クアッドはシエロの腰を持って持ち上げた。まだ寒くない筈なんだけど、シエロはガタガタ震えが止まらないようだ。こういう時はとっとと行くに限る。何とか抜け出そうともがくけど、クアッドはビクともしない。


 さ、逝ってみよっか?



「あ、待ってッ!!まだ心の準備出来てないんですッ!!トイレ、おトイレ行くのッ!!行くから、行くまで待ってて漏れちゃうから、漏れちゃいますか「じゃあ行ってらっしゃい」「では」らあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~…………」


 おー落ちてったね。さて、私達も行かないと。美香に顔を向けると、抱き締めていたモーリスを更に強く抱きしめてブルブル震え始める。真っ二つになりそうだねモーリス。その状態で魔力吸ってるけど。



『き、鬼畜じゃのう…』

「……わ、私はやっぱり「じゃあレーベル人化してね」『うむ』いやぁああああああぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~………」


 こっちも良い悲鳴だ。さてと、モーリスに『同調』で言っておかないとね。


『モーリス、美香も多分気絶するから上手く受け止めてあげてね?』

『(プルッ)』

『やった我もあれじゃが愉悦入っとるな主よ』

『妖精のパンツ見ようとするポンコツ勇者には丁度良いと思う』

 


 シエロの様子を見て恐怖を抱いたんだろうけど、君もシエロの苦行を味わっておきなって(ニッコリ)。


 私はアリーナと妖精になってその様子を見届けると、2人でフワフワと降りて行った。




「アイドリー、私達は~?」

「とりあえず普通に入ろっか」

「はいな~♪」


 ほら、私達は冒険者だしね。

「無事着きましたな……暫く起きそうにありませんか」妖精魔法で軽やかに着地

「……」白目で泡を吹きながら気絶


「美香、着いたぞ、起きよ」龍魔法で悠々着地

「……」モーリスの身体にバウンドし顔面から地面に激突

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