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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第七章 ダンジョン都市アモーネ
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第104話 ここで会ったが千年目

 真夜中まで妖精魔法の練習をして、ギリギリそれっぽい味のゲル状の何かが出来上がったけど、私は後悔していない。


 で、もう大体皆寝たと思うので私達は行動を開始した。子供達をレッドドラゴンに乗せ、一直線にダンジョンの外へ飛ばしていく。アシアとルン、


 そしてレッドドラゴン1匹だけはこのまま残って貰った。ダンジョンの入り口でジェスさんに訳を話す必要があるからね。




「「「おねえちゃ~~ん、ありがとーッ!」」」

「おー、元気でやるんだよ~~」

「フォルナによろしくの~~」

「またね~~♪」

「御達者で~~」



 口々にお礼を述べて空に消えていく子供達に私も返事をしながら手を振った。そして子供達の乗せたレッドドラゴン達が全て飛ぶと、その後を残りの数百匹が追い駆けるようにして飛び立つ。


 こちらに残った最後の1匹は、リーダーのレッドドラゴンだった。律儀だね君も。



 ということで私達もさっさとダンジョンの入り口まで戻って来た。外月明りと星々の輝きだけでも十分過ぎる程明るい。いつ見ても綺麗だなぁ……何回見ても飽きないや。


「あ、アイドリー嬢……」

「ん?ああ、良いよ行ってきて」

「ありがとうございますッ!!」


 妙にソワソワしていたクアッドに許可を出すと、妖精になって空の彼方へ飛んで行った。初めての空に興奮が隠し切れなかったんだろう。子供のように……まぁ妖精の姿は子供そのものか。多分日の出を見たら帰って来るだろうさ、多分。






 小屋の方に出向いてみると、夜中でもまだカウンターが明るかった。中に頭で船を漕いでいるジェスを発見。アイドリーが肩を叩くと、パチっと目を覚ましたジェスが眠気眼でアイドリー達の姿を見た。


「んがっ…?……ああ、何だお前達か………ああッ!?帰って来たのかッ!!!」

「声、声抑えて」

「え、ああ、すまん。っておい、何で子供がアシアとルンしか居ねえんだ……まさか」


 変な勘繰りが入る前に、アシアが間に入って誤解を解く。



「違うんだジェスさん。僕達はちゃんと全員帰って来たよ。それで、他の子達には先に都市を出て貰ったんだ。僕達はもう野良バッカー止めて、違う場所で暮らしていくことにするよ。それで、僕とルンだけ残ったのは、ジェスさんにお礼が言いたかったから」

「……礼、だと?」


 ジェスに対しての礼、それは子供達の野良バッカーとしての生き方を肯定してくれていたことだ。子供達は日々冒険者達に馬鹿にされ、毎日ギリギリの生活を強いられてきた。時には暴力も振るわれたし、悪ければダンジョン内で野垂れ死ぬ事もあった。けど、そんな子供達に対して、ジェスは決して否定的にはならなかったのだ。


「ジェスさんが、市場や宿屋で出た食材のクズを子供達にやってくれって頭を下げてたのを知ってるし、子供を捨てた娼婦達に引き取ってやってくれないかって話を持ち掛けたことも知ってるよ」


 彼の顔は段々と顔色が悪くなってくる。


「……ちっ」

「ジェスさん。だからあr「うっせぇ黙れッ!!」


 ジェスは、アシアの言葉を怒声で遮った。そして顔を向けず、手で消えるように、



「もう人に頼らず生きていけんなら、どこへでも行っちまえッ!!二度と面見せんなッ!!!」



 そう言って、ジェスは小屋から出て行ってしまった。アシアとルンは涙を流してそれを見送ることしか出来ない。


「ジェスさん……」

「……何か素直になれない訳があるのかもね。私達が聞いておくから、2人はもう行った方が良い」

「けどッ!!」


 ルンが反論しようとするが、アシアがそれを止める。


「ルン……皆を待たせる訳にはいかない。悲しいけど、行こう?」

「っ……(コクン)」

 アシア達はレッドドラゴンに乗ると、アイドリーを見た。お互いが頷き合い、アイドリーはレッドドラゴンに合図を出すと、大空へと羽ばたいていった。




 アシア達が消えて行った空をしばらく見上げた後、私は皆に振り返る。


「……さて、私達は宿屋に行こうか。明日もう1回ジェスさんに事情を聞かないとね」


 その言葉に皆が頷き、私達は歩き出した。ギリギリ一部屋開いていた宿屋を見つけると、今日は皆で固まって寝た。子供達が居ないからか、少しだけ寂しかったしね……






 遅い朝を迎え、宿屋の朝食を取っていたら、何か知らんけど外から冒険者がゾロゾロと入って来て囲まれた。こんな善良な一冒険者に何の用かな?


「朝っぱらからムサいのう……」


 まだ少し眠いのか。怒りマークを張り付けているレーベル。そんなこと言っちゃいけないよ。確かに男臭いけど。その中で、見覚えのある冒険者が姿を現した。ギルドの前で屯っていた奴だね。


 宿屋の人が声を掛けようとすると、そいつは睨んで店員を黙らせた。そしてこちらを見ながら正当性を説明する。


「暴れるつもりは無いが……こいつ等が抵抗すればどうなるかは分からんな」

「そんなことはしないよ。で、話は?」

「お前達が野良バッカーを独占してダンジョンに潜っていた冒険者だな?」


「そうだね」っととりあえず肯定してみると、そいつは顔をニヤけさせた。


「ならギルドまで来て貰おうか。野良バッカーの姿が無いのにお前達だけ居るという事態の説明をして貰わねばならん」

「邪魔だと思ってたんじゃないの?」

「あんなゴミ共でも正規のバッカー達が居ない時には使える消耗品だ。つまりギルドの備品なんだよ。それを勝手に大量に消費されちゃあ敵わねぇのさ。だから、お前達にはガキ共の居場所を吐いて貰う必要がある。さぁ、分かったならとっと立てや?」


 男は机を蹴り上げて私達のご飯を……いや、机だけを倒した。皆さん手が早いね……レーベルみたいだ。


「何律儀に飯の皿だけ取ってんだおいッ!!」

「うっさいわ。後で行ってやるから消えよ。飯に臭いが付くじゃろうが」

「ご飯ぐらい静かに食べたいよね」

「皆さんも食べてったら良いのでは?」

「もしゃもしゃ」

「ほらアリーナ、口に付いてるよ」

「もがー」

「ふざけてんのかコラッ!!舐めた真似してっと……―――ヒッ!!?」


 そこで男の言葉が止まった。レーベルがガチの殺気を男達にぶつけたのだ。まぁ武器構えようとしてたもんね。それを止める意味と、最後通牒だろう。このままだと終わらないから口を出そうか。



「悪いんだけど、食べるのが好きな子多いからさ。1人を残してギルドで待っててよ。食べ終わったらその人に付いて行くから……それで良いでしょう?」

「……おい、俺は戻るから、お前等の中で1人残れ」


 その男は震えながらも納得したのか、私の言葉に頷いて冒険者を1人残し逃げ帰ってしまった。残った1人は、青い顔をしながら部屋の隅で縮こまってしまう。



 

「アリドリー、ご飯あげて良い?」


 そこに大天使アリーナが慈悲の提案を私にしてきた。どうやら雰囲気が悪くなったのが嫌みたいなので、あの冒険者を和ませる気らしい。是非も無いね。

「良いよ。ほら、持ってってあげな?」

「うんッ!」


 アリーナは食事を渡されると、その縮こまっていた冒険者に差し出してそのまま一緒に食べ始めてしまった。レーベルが怪訝な顔をするが、私は気にせず自分のを食べ始める。


「優しい子じゃな……」

「それがアリーナだからね」


 その言葉だけで、愛しい親友のことは説明出来るのさ。





「来たか……」


 食べ終わって来てみれば、ギルドの前に冒険者達が凄い数で待っていた。大半の冒険者が集まっているんじゃないだろうか。働きなよ…


「その人数は何?いつも屯ってる数十倍は居るね」

「お前達は要注意人物だってギルド長も言ってるからな。この中でも特に強い奴等がお前達の監視だ。さぁ、入れ」

「はいはい」


 ガランとしているギルド内に入ると、床に転がっているボロボロの男が居た。その男の顔を見た瞬間、私達の感情は一瞬で泡立つ。


「「ジェスさんッ!!」」

 シエロとアリーナが飛び出してジェスさんを起こし回復を始めた。私は男達を睨む。


「もしかして証言者ってジェスさんのこと?」

「ああ、あいつの事はずっと張ってたからな。動きを見せれば必ずお前等が戻って来るって分かっていた。だからこうして吐かせてやったのさ。犯罪者を庇い立てすると危ねぇぞってなッ!」

「……そう」


『レーベル』

『わかっとる。我慢はする』

『いや、やって良いよ。死ななければ私が全て治すから。そしたら逃げよう』

『良いのか?』

『殺さなければ』

 ちょっと堪忍袋の尾が切れちゃったんでね。ジェスさんには聞きたい事もあるけど、こっちとしては落とし前を付けなくちゃならなくなった。人としてね。


 私はモーリスを呼び出してその上にジェスさんを乗せた。冒険者達は驚くけど、私はそれを殺気で黙らせる。

「それじゃあ、ギルド長室行こうか。アリーナ、大丈夫?」

「……うん」

 私はアリーナの手を握って、一緒にギルド長室まで行った。



 そして、この街の中心に位置しているであろう男と対峙した。瞬間、レーベルが椅子に座っているその男の横に移動し、




「ここで会ったが千年目じゃ、このクソ野郎ッッ!!!!」


「えっちょ待げぼぁッ!!??」


「「「ギ、ギルド長ーーーーーーッ!!???」




 全力全開で殴り飛ばした。衝撃破で建物が揺れる程の攻撃が、男の腹に炸裂しそのまま倒れ伏す。うわぁ……衝撃を全部身体に伝えてるよ。


 冒険者達が叫びを上げる中、レーベルギルド長の『青色の髪』を掴み私の前に放り捨てると、胸に足を乗せてメキメキと押し潰そうとしながら詰問した。


「さてさてこんなところで何をやっているのか話を聞こうではないか。のう、『ルクレツェ』よ……?」

「待って待って何でこんなとこに居るんだレーベル本当に待って潰さないでごめんさい謝るからジイジの元には連れて行かないで下さい本当にお願いします!!」


必死に何かを弁解しているギルド長。何、どしたの?というか、


「レーベル、その人、人じゃないの?というか知り合い?」

「うむ、顔見た瞬間分かったわ……こいつは我が探しておったゴミじゃよ。ご丁寧に隠蔽の魔道具をこれでもか言うぐらい身体中に身に着けよってなぁ貴様ぁあ~~~」

「ご、ゴミは酷くないかな?メインの話から外れてるしそれは今置いとイタタタタタッ!!」

「ゴミは喋る物ではないぞ?」

「理不尽ッ!?」


 レーベルがかなり鬼畜入ってるね。えーっと……とりあえず見てみようか。



ルクレツェ(1125)♂ Lv.773


固有種族:ブルードラゴン(古龍):人化状態


HP 1万0541/2万6907

MP 1万5551/1万5551

AK   3万4688

DF   5万1121

MAK  9万8922

MDF  10万1993

INT  1600

SPD  20万7350


【固有スキル】龍鱗 水獄


スキル:龍魔法(A+)水属性魔法(S)体格差補正(A+)


称号:古龍の子孫



 やったね私。2匹目の古龍と遭遇だッ!!………私も殴っておこうかな。

「どけ主よ。そいつ殺せん」

「話聞いたら1回殺っても良いから待ってね」

「待ったはいっか~い?」

「アリーナ相手だと3回かな」

「我は5回じゃ」


アリーナは物騒な話の茶を濁しました。

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