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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第七章 ダンジョン都市アモーネ
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第94話 再出発と久しぶりの大誤算

「「「……」」」


 子供達は同じぐらいの時間で皆起きた。規則正しくご飯を食べていた所為か、お腹の空き具合も同じである。空腹の大合唱が静かに鳴り響いていた。


 起きて最初に気付いたのは、自分達が巨大な赤い龍に包まれていたということ。


 普通なら命の危険を感じるところだが、子供達はその龍が何者か知っていた為に、何人かはむしろその暖かい身体に身を寄せて二度寝すらしていた。


 次に気付いたのは、スライムの上でスヤスヤと寝ている見覚えのある小人が2人居るということ。こっちは一緒に起きたシエロがジェスチャーで静かにするように促し、皆で見守るように見ているだけになった。


 そして思う。



((僕達(私達)を助けてくれたのは、人じゃなかったんだ……))



 愛らしい寝顔を見せるアイドリーとアリーナの頭を人差し指で撫でる美香。すると2人は気持ち良さそうに朗らかな笑みを浮かべる。小さな恩人を、起こそうと思う子供は1人も居なかった。





「……ん?……ああ、もう起きてたのね」


 目覚めると、私達を囲うようにして見ている子供達の顔があった。どう反応すれば良いのか分からないみたいで、ただ静かにこちらを見てるね。とりあえず人化すると、驚きの声を上げて後退る。


「えっと……アイドリーさん、だよね?」

「そうだよ、皆おはよう。突然だけど、このことは内緒にしてくれるかな?」


 高速で頷く子供達。良かった、言い触らすとは微塵も思わないけど一応ね。アリーナをフードの中に入れて、モーリスを頭の上に乗せる。


「モーリスもありがとう。少し吸って良いよ」

 そう言うと、プルプルして魔力の1割を吸われた。少しの基準大きいね君。そうだ、シエロに事情を離さないと。

「えーと、シエロ?レーベルのことについてなんだけど」

「その前に、ご飯にしない?」


 シエロに止められて周囲を見渡すと、あらあらお腹が大合唱してるね皆。かく言う私も鳴らしてるけど。まぁこんな状態じゃまともに話しも出来ないか。


「じゃ、皆で準備しよっか?」

「「「はーい……」」」


 レーベルとアリーナを起こさないように返事をする子供達。もう連れて帰ろうかな、ラダリアに。



『……む?良い匂いがするのお~』

「起きたレーベル?ご飯出来てるよ~~」

『ぬ、おはよう主。おはよう皆の者……おっとそういえばこの状態じゃったな。すまぬ今人になる故ま「「「おはようレーベルッ!!」」」おととととッ!?』


 起き上がったレーベルに、皿を置いて駆け寄って来る子供達。この状態で人間に好かれるとは思ってなかったのか、微妙に狼狽えるが、変に動いて怪我をさせたくなかったのか、成すがままになってるね。あ、ちょっと泣いてる。


『……この姿で人間に懐かれるとはのう』

「それぐらい皆感謝してるってことさ。さぁ、貴方も人化してご飯にしよ?」

『……うむ』





 レーベルが人化してご飯を食べ始めると、シエロがレーベルの横に座ってきた。レーベルは気まずそうにしながら手を進めていくが、早速本題に入って来る。


「……貴方が、聖龍様だったのですね」

「うぐっ………まぁ、そう…呼ばれておったよ」


 どう言うべきが迷っていた。まぁ、あれだけ妄信されたり裏切られたりでシエロも救いを求める相手を探してた。それで自分達が崇拝する存在が目の前に現れたんだから、居ても立ってもいられない筈だ。


「分かってるんです。貴方が昔、勝手に祀られていたのは。私も過去の文献でどういった経緯があったのかは知ってました。けど、あの当時私達には縋るべき対象が他に無かった。古龍とも呼べる伝説の存在を目の当たりにして、どうにかそれを『支え』としていたかったんです……貴方には、要らぬしがらみを与えてしまったこと、深く謝罪いたします」


 頭を下げたシエロに、レーベルは驚いていた。迷わず妄信して救いを求めて来ると思っていたのだから。少なくとも今までのレーベルの言動を聞いていれば、そう思うのは必然だった。しかし予想外の返しに、レーベルは困った。



「……あの頃、お主達が魔王に対して劣勢だったことは我も知っておった。我とてあの頃は自分が一番じゃったからな。お主達が縋り付いてでも生きたいという執念を理解出来ておらんかった。その果てにああいう所業に走ったのであれば、今ならまだ納得も出来る。逃げたのは、祀られるような、高尚な存在では無い我自身が恥ずかしく思ったからじゃ。お主が謝る必要は無い」


 2人を顔を見合わせてた。お互い、擦れ違っていた部分もあると分かったのだ。気持ちを隠し合う必要も無くなった。


「我はただのレーベルじゃ。お主が今、ただのシエロであるようにな。我はレーベルラッドの聖龍である気は未来永劫無い。だが、お前達人間が何を信じようと、それが救いであるならば我は我なりの矜持を持ってそれを見届けるのみじゃ」

「……はい」

「だが、もし目の前で困っている者達がおって、我の主がそれを助けようとするならば、我も喜んで助けよう。ノリでな」


 にかっと笑い、シエロの頭を撫でるレーベル。顔をアイドリーに向けると、アイドリーもにかっと笑って親指を立てた。


「シエロにはレーベルラッドを救った後にラダリアと同盟して貰いたいからね。全力で助けるつもりだよ~」

「じゃとさ」

「……はいっ……ありがとう、ございます。本当に……」


 美香がシエロを抱き締める。親友の心が救われたことを感じ取ったのか、美香も泣き笑いしていた。




 なんてことなく誤解は解けた。これでもうオープンに行けるな。ってまだ私達のこと子供達に言ってなかったね。

「皆~出発前にアイドリー先生の『妖精講座始めるよ~』集まれ~」

「「「はーい」」」



 諸々を終わると、子供達は驚きと感動の連続だった。いや、普通に妖精のことを話しただけだよ?けど何か、フォルナにも言われたけどお伽話のような存在なみたいで感動されるようだね。私にとってはこの世界がお伽話そのものなんだけどなぁ……


「まぁ、つまり私達は人間じゃなかった訳だけど。付いて来てくれる?嫌なら入り口まで引き返すけどさ」

「「「行くッ!!」」」


 予想は容易に出来たけど声の揃った返事で大変よろしいよまったく。嬉しくて涙が出て来るね。私は笑顔で賛同してくれた子供達の頭を撫で、改めて出発の声を発した。




 で、久々にレベルが上がったからステータスを見てみたんだけど。もう駄目だこりゃ。


 

アイドリー(3) Lv.1065


固有種族:次元妖精(覚醒+)


HP 1055万0350/1055万0350

MP 4263万9989/4263万9989

AK   1億0003万5472

DF   1億0004万6981

MAK  3750億5100万0911

MDF  3670億7866万5400

INT  7100

SPD  997億0029万1000


【固有スキル】妖精魔法 妖精の眼 空間魔法 顕現依存 概念耐性 

       聖剣(第1段階)


スキル:歌(S)剣術(SS+)人化(S+)四属性魔法(EX)手加減(S+)

    隠蔽(S+)従魔契約(―)複数思考(B-)

    

称号:ドラゴンキラー 古龍の主 反逆者 バトルマスター



 覚醒の『+』部分を舐めていたよ……


 いや、逆に考えよう。今回は魔法が使えなくて死ぬ危険もあったんだから、これからは物理だけでも皆を楽に守れるようになったんだと考えよう。そして、なるべくならもうレベルは上げたくない。


 次、なして『聖剣』のスキルが私にあるの?第1段階ってなに?いや、多分私が使ってた剣がそれに類似する物だったのかもしれないけどさ。そんなの要らないんだけどさ……


・聖剣(第1段階)

『―――――――――――――――――聖属性魔法の行使を可能とする。――――――――――――――――――――』


 説明は1つだけ表示されていた。『聖属性魔法』は高坂が使ってた勇者が共通して使えた物だよね。ってことはやっぱり勇者達と同じスキル?第1段階だから順々に効果が開放されていくんかね?


 ということで美香に聞いてみた。



「私達はこの世界に来た頃から聖剣の効果は全部使えたよ?」

「段階とか無かったの?」

「そういう勇者は居なかったね。というかアイドリーの持ってた剣って聖剣だったんだね」

「いや……レーベルが買って来た剣だったんだけどさ」

「それが聖剣だと知ってればその場で圧し折ったぞ我は」



 どんだけ嫌いなのよ貴方は。けど、私に勇者の称号が付かなくて本当に良かったよ。というか聖剣のスキルが付いたのに何で勇者の称号付かなかったの?ちょっと美香の称号を見てみよう。


・勇者

『女神によって与えらた使命を果たす為に顕現した、世界の英雄に与えられる称号』


 ああ、私付かないわ。超安心したわ。神によって転生させられた私は根本的に違うからね。使命とか知らん。自由最高だぜ~~♪


「とりあえずこの剣要らないから捨てとく?」

「その方が良いかもしれんな」

「捨てちゃうのッ!?」

「あそ~っれッ!!」


 地平線の向こう側に向かって全力投擲してみた。唯一の得物だけど、タダ同然で買ったものだし、問題は無いよね。もっと普通の剣を新調しようそうしよう。


 遠くの方で剣の着弾した音が聞こえた。美香はあわあわしてるけど知ったことではないね。さぁ、気を取り直しt「ヒュッ」……



私:遠い目をして「そんなこったろうと思ったよ糞が……」

美香:目を輝かせて「何その機能、羨ましいッ!!」

レーベル:諦めた苦笑いで「良かったの主よ。無限砲台の完成じゃな」

シエロ:慌てたように「神の天罰があったらどうするのですかッ!?」



 あーあ。多分私のスキルをビーコンに見立てて自分で戻って来てんだろうなぁ。『聖剣』も『妖精魔法』で消せないかな。けど消そうとしたら今度こそ頭割れそうだね。ド畜生め。



「アイドリ~おはよう~♪」

「まぁ良いか。アリーナが居るし」

「およ?」

「そのままの君が好きだよって話」

「私も大好き~♪」

 フードから顔を出して耳元に幸せを運んでくれる私の親友に今日も癒しと日々の糧を得たよ。剣は……まぁ頑丈だから使うよ。



 それじゃあ今日もキリキリ無理せず迅速に行こうか。

「この聖剣私が本気で殴っても折れないなぁ…」←ステータスAKに全振り

「前でさえ勇者の聖鎧を砕き割った拳でもか……本当にこの世の武器なのかそれは?」

「えっと、2人供。聖剣って所有者の力量によって威力とか強度も増すんだよ?」

「「……」」


 また直ぐにぶん投げたが、聖剣は戻って来た。


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