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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第七章 ダンジョン都市アモーネ
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第92話 決死のトラップロード 20階層

 次の日、私のお腹の音が鳴ると同時に全員起床。今日も私の腹時計が冴え渡るね。


「レーベル~朝だよ~お~き~て~」

「むわ~……おはようアリーナ。主もおはよう」

「はいおはよう。朝ごはんにしよ?」


 寝袋でミノムシとなったレーベルをアリーナがゴロゴロ転がして起こすと、頭を振って尻と腹をガリガリ掻き欠伸をしながら起きてきた。はしたない美女か、いけるな。所々で眼を擦っている子供達を掻き分けて、私はアシアを連れて来る。


「アシア、今日からトラップだらけっていう20階層に行くけど、絶対に急がなくて良いからね。皆で知恵を出し合って確実に一歩ずつ進もう」

「うん、絶対の安心が確認出来たら進むようにする」


 この階層では私達の戦闘力は役に立たない。妖精魔法は負担があるからダンジョン内ではあまり使いたくないしね。まだダンジョンに入って1週間も経ってないからね。ここら辺でじっくり行くのも悪くない。


 ここまでの道のり、何回か罠の張ってある場所を通ったけど、それは全て地形を利用した物だったので、直ぐに見破ることも出来た。けれど、どこを見ても規則正しい石の配置がしてある此処では、そういったこともかなりわかり難い。私達は完全に子供達に頼るしか無いのだ。




 ということで20階層に入ると、石造りには変わらないが、通路は狭まり幾つかの別れ道になっているようだった。迷路にうえにトラップか。転移したようで、後ろの戻る用の扉?も閉まってるね。いきなり鬼畜過ぎない?



そして、

「「「ギチギチギチギチギチギチッッ!!」」」



名無し Lv.101


種族:タイラントスコーピオン


HP 4986/4986

MP 1044/1044

AK   1120

DF   2641

MAK  1655

MDF  2473

INT  70

SPD  500


スキル:甲殻(B+)毒針(B)



左右の道から腰ぐらいまでの大きさになる黒いサソリ共が大挙して押し寄せて来た。殺しに来てんだけどこのダンジョン。色と速さで相まって目を背けたくなるね。あの尻尾も毒持ちか。当たらないようにしないと。


「背中がゾワゾワするんだけど」

「こう狭いと火を使っての一掃も出来んな」

「何でそんなに落ち着いていられるんですかッ!?」

「どうするのアイドリーッ!?」

「こうしようか。壁よ…って魔法が使えない?あ、ヤバい」


 一本道だけど罠だらけで左右から魔物の群れに常時襲われるってヤバいな。私達は真ん中の道に子供達を集めた。妖精魔法は……こっちも駄目か。この階層は魔法は使えないようになってるんだね。あーしゃあないなぁもう。


「私は右を全部担当するから、レーベル達は左をお願い出来る?」

「主よ、我が通路で変身すれば塞げるぞ。奴等の攻撃は通じんしな」

「良いの?シエロにバレるよ?」

「え?」

「しょうがあるまい。緊急事態じゃ」


 レーベルはアイドリーの妖精魔法でガッチガチの『認識阻害』を掛けたイヤリングを外し通路に飛び込む。


 シエロの眼に、レーベルのステータスが映った。


「そんな……レッドドラゴンの古龍…?」



『むんっ』

 そしてレーベルは本来の姿に戻り、身体一つ左の通路を完全封鎖する。タイラントスコーピオン達の攻撃は全てレーベルの龍鱗に弾かれ、前の方に居た者達は後から突っ込んで来た者達に圧迫され絶命していく。


 子供達が突然現れたレッドドラゴンに恐怖するが、


『子供達よッ!!我等に任せて進むのだッ!!!』


 レーベルの一括により、子供達は頷き合ってトラップの解除に入り始めた。よし、こっちは大丈夫だね。


「アリーナ、私が前衛引き受けるから、今から『S.A.Tモード』で全体の把握、サポートをお願い。美香、取り残しは頼んだよ。聖剣は発動して良いからね」

「がってんッ!………こっちは任せて」

「分かったよ。無理しないでねアイドリー?」

「うん、それでシエロ……ほいっ」

「あぅッ」


 シエロは呆けた顔でレーベルを見ていたので軽くチョップでこちらに振り向かせる。


「聞きたいことが出来ただろうけど、此処を切り抜けてからね。美香が怪我をしたら回復してあげて?お願い」

「……はい、大丈夫です。ちゃんとやれますッ!」



「よし。じゃ、いっちょ防衛戦といこうか」



 私は久々に自分の剣を抜いて通路の入り口を陣取った。サソリ共は私を押し潰そうとしてくるけど、先頭のサソリに私は野球打法の勢いそのままに、


「あらよっとッ!!」


 ガッキィィィィィィイインッ!!!


 バットの要領でフルスイングした。顔に芯で当て、魔剣の重量そのままにタイラントスコーピオンがすっ飛び大群を蹴散らしていく。おー飛んだね、けどその後ろからまたカサカサと通路を埋め尽くしこちらに迫って来るのが見えた。今回はステータスが素の状態だから、まともに戦うことになるけど……


「偶にはちゃんと苦労しておかないとねっとッ!」

「ギィッ!!」


 剣による斬撃だけが私の攻撃手段だ。1匹目、尻尾の一撃を蹴り上げて兜割り。2匹目、横薙ぎで一閃。その死体を蹴って3匹目にぶち当て刺突。4体目の体当たりを飛んで回避し空中で縦回転し剣で真っ二つにした。っと、2匹抜けたッ!!


「アリーナッ!!美香ッ!!」

「ほいほいッ!」


 壁を伝って抜けた2匹にアリーナと美香が対処する。アリーナは短剣で尻尾を正確に斬り裂き、身体の関節部に突き刺した。麻痺が発動しその場で痙攣する。


「任せて、聖剣開放ッ!!」


 美香も聖剣を開放してステータスを10倍に引き上げた。即座にサソリが頭を斬られて絶命する。美香がいれば子供達の最後の盾は完璧だね。





「このブロックは足元のスイッチがランダムに発動してるんだ。だから今発動する石だけを抜き取ろう。魔力はどれから出てる?」

「えっと……あれだよ。他の石よりも魔力が集中してる」

「私が削り取るよ」

「待って、横にも矢のトラップがある。魔法陣が小さく疎らにあるから、削って消していこう」

「次は……大玉だね。道全体が坂道になるような大掛かりな物だ。…これは一定量の体重で作動するみたい」

「ナイフでそこだけバッテンしておこう。通る時は1人ずつにすれば大丈夫」


 子供達は総動員でトラップを解除していく。細心の注意を払って、各自の知っている知識と感性を持ち合わせて。後ろでは壮絶な戦いの音が聞こえて来るが、自分達がやらなければ永遠に続くのだ。


 美味しいご飯をくれた。たったの数日間だけどとても楽しかった。面白い話も沢山してくれた。見ず知らずの同情だけでここまでしてくれる人達など1人として居なかったのだ。勇者ですら自分達を煙たがった。恩返しには十分過ぎる理由だ。


 絶対に道は作り上げてみせると、決意を固めて子供達は迅速に行動していった。




(そろそろ……疲れて来たかな。剣が丈夫なのが救いだけど)


 そろそろ戦闘は3時間目に突入した。最初は1週間ぐらいを見てだけど、早くも心が折れそうである。これ通常の冒険者だったら数分で諦めるよ絶対。なるべく通さないようにはしてるから、後ろはまだ余裕があるけど。


「アイドリーッ!!代わるよッ!!」

「うん、ちょっとお願いッ!!」


 美香とタッチして後ろに下がらせてもらった。あーこんなに長く戦い続けたの久しぶりだなぁ。


「アイドリー、大丈夫?」

「大丈夫だよ。アリーナも疲れてない?」

「私はまだまだ余裕だよ。ほら、ちょこっとおいで」


 抱擁を受けてしまった。うわぁ~癒されるわー……戦闘中だけど頭がとろけるね。


「ちょっとッ!!後ろで百合百合しないでよッ!?」

「ああごめんごめん。さぁ、交代しよう」


 まだ連続戦闘に慣れてない美香ではそこまで持たないからね。私達は即座に交代してまたサソリを倒していく。死体は常時収納してるけど、もう4桁近く倒してるかな。仕舞わないと死体で埋まるからほっとけないし。

(けどそろそろ動きが欲しいな……ん?)


 通路の奥に、地面が見えた。それはつまり、敵の数が打ち止めになった?残りのサソリを倒すと、久方ぶりの静寂が訪れる。


「……終わった?」

「どうかな……アリーナ、レベルは上がってる音はした?」

「……ううん、してないよ」

「じゃあまだ戦闘続行中か」


 経験値は戦闘が終わった後にいつも反映されている。あれだけの敵を倒してアリーナや美香のレベルが上がってないなんてことはありえない。


「まだ、居るんでしょうか?」


 シエロが美香の腕を掴んで顔を顰めた。疲労困憊って様子でフラフラしている。ずっと気を張り詰めていたんだね。っと、


「来たみたいだね……また多いなぁ」



名無し Lv.167


固有種族:メタルスコーピオン


HP 9251/9251

MP 3875/3785

AK   2400

DF   8530

MAK  1853

MDF  8479

INT  110

SPD  1500


スキル:甲殻(S)毒針(A+)



 鋼色のサソリ…しかも強過ぎじゃない?私のAKじゃ攻撃がほぼ通らないな。数も先程と変わらないぐらいの勢いだし。


「う、嘘でしょ……」

「そんな……」

「こらこら、2人供絶望するんじゃない。美香はまだ自分の方がステータス遥かに高いでしょうが」

「そ、そうだけど、あれは無理でしょッ!?」

「どうかな」



 今まで気になってたけど、私の剣ならいける……んじゃないかな?試してみようか。まだ子供達は開通してないし。

「諦めるにはまだまだ早いからね。全滅ではなく遅延でいこうか。死体は積み重ねておけば敵も動きづらいでしょ」


 その代わりこっちもそうなるけどね。

『主よ』


 そこにレーベルの同調による声が聞こえて来た。


『どったの?限界?』

『違う。先程から見ておったが、主の持っている剣が何かおかしいのじゃ』

『おかしい?……おん?』


 何か……殻みたいに脱皮してきてないこれ?剣全体が土血色の変な剣だったけど、それが皮のように中に薄っすら違う色が浮かんでいる。鼓動している……感じもするね。言われるまで気付かなかったよ。


『ちょっと剥がしてみようか。戦闘中だけど』

『肝が据わり過ぎじゃぞ……』


 知らん。気になったからするだけのことよ。


「そいっ!!」


 思いっきり剣を地面に叩き付けると、皮が割れた。中から鈍い白さを纏った刀身が出て来る。


「アイドリー、それは?」

 アリーナが横に来て指さしてくる。私にもわがんね。美香に鑑定して貰いたいけど、もうすぐそこまでサソリが来てるから、後にしよう。



「ギシャァアアッ!!」


 さっきの奴等よりも勢いがあるね。ステータスも高いから心して掛かるとしよう、

「かなッ!!おおッ!?」


 振った剣は、滑らかに、豆腐を斬るかのようにメタルスコーピオンを抵抗無く斬り裂いた。脱皮したから切れ味上がった?なら好都合だ。これで戦闘に支障は無くなった。

 遠くから見ていた美香が鑑定スキルを使って何か驚愕しているみたいだけど、魔物の泣き声が五月蝿すぎて聞こえない。



「それじゃあ、第2ラウンドいってみようか」

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