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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第七章 ダンジョン都市アモーネ
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第90話 集団レベル上げ② 地下3~7階層

 レベル上げをしながら階層を下っていく間に、私は子供達にピュアスライムの名前を考えて貰っていた。末永くやっていく新しい仲間だからね、勿論付けるよ。


 そして厳正な審査をしていった結果、名前が決まりました。



「よろしくね、『モーリス』」



 そう呼んであげると、嬉しそうにプルっと跳ね上がって私の頭の上に乗った。おーヒンヤリすんねぇ君。けど、頭から魔力を吸うのは止めなさい。後であげるから。



「まったく、我の次に契約するのがスライムとはのう…」


 レーベルには少しいじけられた。まさか自分と同等の地位にスライムが置かれるとは思っていなかったんだろね。ごめんねレーベル、数万倍ぐらい頼りにはしてるから機嫌直して?



 さて、話を戻そう。子供達とシエロのレベル上げも今のところは順調そのものだね。美香はもっと下の階に行かないとレベル上げにならないから今はただの護衛かな。魔物も10階層までは同じらしく、レベルだけが上がっていくんだってさ。つまりブレイドビードル、ゴブリン、アースクラブ、イエローエイプ、ピュアスライムの5種類だけか。まぁあんまり多くの種が居たら生態系的にアウトっぽいしね。


 後、ところどころで冒険者と会うけど、どの人もこちらを遠巻きに嘲笑しながら去っていくので無駄にストレスが溜まっていた。


「絡んで来てくれれば楽なんだけねぇ」

「どちらにしても手は出せまいよ。ダンジョン内では危険じゃしな」

 だねぇ。喧嘩して行動不能にでもなれば共倒れになってしまう恐れだってあるんだから、誰だってリスクは避けたいのだろう。どれだけ酷い人であっても。




 で、そんなことを話していたら、向こうから問題がやってきましたとさ。


「助けてくれぇッ!!」


 突然出て来た冒険者数名が、こちらに向かって走ってきたのだ。妖精魔法で見てみると、全員レベルは30~40程だ。7階層は20~25が平均レベルだから、苦戦する程じゃない筈なんだけど。しかしボロボロだね。助けるかどうかは別問題だけど。


「助けるから動かないでねー」

「え、あぐぉッ!?」


 私は光輪を出して手首と足首を拘束すると、冒険者達は走っていた勢いのまま顔面から地面に落ちる。申し訳ないけど得体がしれないから警戒はさせて貰うよ。


「来たぞ主よ。結構な数じゃ」

「レーベル、私が子供達を結界で守るからやってくれる?」

「任せい」


 そうして姿を現したのは、新しい種の魔物だった。しかも数が20匹近い。



名無し Lv.48


種族:フレアモンキー


HP 975/975

MP 404/404

AK  476

DF  308

MAK  472

MDF  294

INT  33

SPD 405


スキル:火属性獣魔法(C-)木登り(B)



・火属性獣魔法

 『獣系の魔物が使える魔法。その魔物の特性に合わせた魔法が使える』


 体中に炎を身に纏った猿の大群だった。尻尾を巧みに使って木を渡ってくるけど、その尻尾の先に大きな炎が灯ってるのが印象的だね。大きさはそうでもないが、レベルもステータスもこの階層辺りじゃない。接敵まで時間が無いけど、一応聞いておこうか。


「で、どうして逃げてたの?」

「良いからこれ外してくれよッ!!逃げなきゃ死ぬぞッ!!?」

「あーうん。分かった、落ち着いてから聞くよ。レーベル、残さなくて良いよ」

「うむ、わかった」


 レーベルの場所まで猿達が辿り着いた。手始めに1匹がレーベルに炎の玉を飛ばしてきた。尻尾が魔法の役割を果たしてるんだね。



「舐められたものじゃな」


 レーベルはハルバードを軽く振り、超高速で炎の玉を撃ち返した。


「キゲッ!?」

 返された炎の玉に反応出来ず、フレアモンキーは頭を撃ち焼かれて息絶えた。それに多くのフレアモンキー達が怒りを露にし、爪や魔法でレーベルを八つ裂きにしようとするが、


「無駄じゃ猿共。我に当たった不運を恨んで逝け」


 ハルバードが赤い光を放ち振るわれる度に猿達は自分達の発する熱すらも燃やし焦がす一撃に絶命していく。一斉に掛かったのが仇になったのか、その一度の炎舞で全ての猿は全滅してしまった。レーベルは顰めっ面でこちらに戻ってくる。不完全燃焼って顔に書いてあるね。


「終わったね。じゃあ話して貰おうかな?」


 私は改めて冒険者達に問うけど、茫然としているだけで反応が無い。気持ちは分かるけど自分達の置かれている状況が分かってないのかな?足でコンコンとすると、正気を取り戻した。


「すまない……」

「良いから、説明」

「あ、ああ」


 私に気圧されて追っ駆けられていた理由を聞くと、なんてことはなかった。単に自分達の身の丈に合わない階層まで行ってしまい、フレアモンキーの巣で気付かずに野営をした。結果次の日の朝、つまり今日ずっと追い駆けられてこの階層まで逃げて来たところ私達の一団を見つけたってことね。


「じゃあ擦り付けるつもりは無かったってこと?」

「そ、そりゃあ俺達の進行方向に居たから逃げろと言おうと思ってッ――ッひぃ!?」


 嘘だったので足元に剣を突き立てた。


「もう一度聞くね。次は当たっちゃうから気をつけて。本当は?」

「………」

 




「良いのか主よ?逃がしてしまって」

「まぁ、何事も無かったしね。性根が腐ってる冒険者が多そうだとは思ってたし」


 正直に吐いたので、冒険者達の拘束を解いて逃がした。アリーナは「偉いッ!」と褒めてくれたから良いのさ。あのまま拘束したままにしとけば死んでしまうし、見殺しにもしたくなかった。お人好しかもしれないけど、アリーナの前で人の死ぬ決断はなるべくならしたくないんだよね。


 あいつらはこちらの人数が多く、しかも野良バッカーだったから擦り付けて時間稼ぎの間に逃げるつもりだったらしい。私が人間だったら間違いなくそのまま放置してたよ。妖精さんに感謝することだね。



「アイドリー。貴方は凄いのですね……」」

「妖精は大体そんなもんだよ」


 シエロ、妖精は人間も獣人も本能で好きなんだよ。だからどうしても殺すという行為に人よりも嫌悪感を抱いてしまうんだ。いや、そもそも殺したくないんだけどね。だから見逃した。レーベルの戦闘力を見て腰を抜かしてたから、今後ちょっかいを掛けては来ないだろうしね。外に出れば他の連中にも言うと思うし



「それじゃあ、今日はここら辺で野営にしようか。皆、入れておいた魔物を出して。解体を始めよう」

「「「はーいッ!」」」



 今日は最後に大量のフレアモンキーが手に入ったからね。全員分の魔物が手に入ったよ。というか多い。まぁ練習台は多いにこしたことは無いよね。それぞれが魔物を出していくのを確認した後、一番解体の経験がある子供の周りに他の子供達を全員集める。


「さて、君の名前は?」

「えっと。リャタです」

「よし、今日から貴方は皆の先生だよ。解体指導をしてあげて?」


 私の言葉に驚き表情が硬くなるリャタ。うん、ごめんね。私達って皆解体がそこまで上手くないんだよね。出来れば私達も教えて欲しいんだよね。


「それじゃあお願いします、先生?」

「「「おねがいしまーす」」」

「わ、わかったよ~。それじゃあ、まずはイエローエイプから…」


 シエロと子供達のお願いにタジタジなりながらも、リャタは粛々と了承してくれた。



 それからはリャタの指示に従って私達は1人ずつ、子供達は2人ずつで解体をしていった。何組かは駄目にしてしまって泣きそうになってたけど、アリーナがその度に励ましていき、何とか終わらせていった。最後の一体を小さな女の子が終わると、レーベルが巨大な鍋を持って現れる。


「今日狩った魔物の肉と野菜を使ってシチューを作ったんじゃ。皆で食おうぞ」

「「「やったーッ!!」」」


 子供達が大はしゃぎで鍋の前に並んでいく。アシアだけこちらをチラチラ見るけど、良いからお並び。無くなっても知らないよ?

「レーベルさんって料理上手ですね……羨ましいです」

「シエロは料理駄目だもんね。この前も肉が炭になってたし…」

「シエロ、その内付きっきりで教えてあげるからファイト」

「うぅ、ありがとうございます……」


 そうだね。シエロは前世の私のようだったから思わず同情した。その内テスタニカさんがやってくれたみたいに教えてあげるから安心してね。


 というかレーベルの要領が良過ぎるんだよ。最初の頃は焼いて食べるだけしかしなかったのに、アグエラさんの料理食べてから嵌ったらしくて自分で作るようになったんだよね。

 美味しいからついつい任せちゃうけど、本人は満足そうだから良いか。レーベル、人間嫌いが子供限定で完全に消失してるし……


 子供達は口々に「美味しい」と言いながら涙目でご飯にがっついていく。その光景を見ながらレーベルが嬉しそうに見えない尻尾をぶん回しているのが分かった。


「今日も美味しいご飯をありがとうね」

「もう趣味の領域じゃよ。次も楽しみにせいッ!!」

「勿論だよ。ね?アリーナ」

「レーベルのご飯大好きッ!」


 うん、私が男だったら求婚してるわ確実に。どっちにもね。



 皆が食べ終わったので、私はある物を配った。


「アイドリーさん、これは?」

「アシア、これはオセロってゲームだよ。まぁ寝る前の頭の運動かな。簡単な奴だからやってみてよ?」

「な、なんでそんなのあるの?」


 おっと転移者の美香が噛み付いて来たね。そういえば逃げ口上を用意してなかったなぁ……いいや即席で。


「えっと、私の故郷にあるんだよ。昔勇者が広めに来たらしくて、もう何万年も前の話だからほとんどの国で廃れてるのかもね」

「へぇ…私達みたいな人が居たんだね、やっぱり」

 まぁそういうことにしておいて……何となく自分が転生者って事実は隠しておきたいからね。意味は無くても。



 最初に私とアリーナで実際にやって見せる。挟んだ列を裏返しにしていくだけだから、皆すぐに覚えてやり始めると、楽しそうにのめり込んでいった。そして私は負けました…


「数回やったら皆寝るんだよー?」

「「「はーい♪」」」


 

 皆が集中している間に、私は水の結界を張っておいた。これで夜も安心。テントを出して皆で入る。中が空間拡張してあるから、子供達も全員入れるようになってるよ。今日一日で結構な回数使ったから頭の痛みが少しあるけど、明日には響かない程度だろう。


「アリーナ、妖精になろっか」

「うん♪」


 私とアリーナは妖精になり、寝袋には妖精魔法を使って疑似体を入れておく。私はモーリスを呼び出して、2人でその上に寝転がった。



 そう、これがしたかったのだ。



「あぁ~駄目になる~~」

「きもちぃ~♪」

「うわ、良いなそれ」

「気持ち良さそうじゃのぉ~」


 やはり契約して正解だったね。スライムは絶妙な柔らかさで私とアリーナを包み、ベッドとしての役割を果たしてくれた。これはぐっすり寝れる。子供達には見つからないように、レーベルと美香の間に隠れるようにしてご就寝だ。


 今日はちょっと嫌なこと多かったけど、これでプラマイゼロかな。おやすみ~~…

翌日の朝


「ふお~~~~」

「これは……何があったんですか」

「魔力を吸われまくって身体が痺れたらしい。自業自得じゃな」

「モーリス、めッ!」


 プルッ……

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