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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第七章 ダンジョン都市アモーネ
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第87話 探索準備

『ダンジョン都市アモーネ』


 まるで巨大なクレーターのような窪みの中に、その都市はあった。半円状に綺麗に刳り抜かれているその街は、その全ての大通りがダンジョンへと続いており、街の端っこからでもその入口が巨大な口を開けて冒険者達を待っているのが見える。家々は坂に沿るように建てられおり、土台は全てレンガで作られているようだった。


「凄いね。都市を下に一望出来るなんて」

「これもまた壮観じゃのう。少々荒い感じの建物が多いが、風情を感じる」


 家の様式は古く、汚れも多い。道も土を踏み固めて作られているようで、あちこちに穴ぼこが見えていた。外側に馬車を止めている専門の駐車スペースに止められているところを見ると、とても此処からは馬車では入れなさそうだ。そういう対策なのかな?


「いらっしゃい。馬車1台につき金貨1枚だが、払えるかね?」

「おおぅ…高いね」

「それはしょうがない。此処に預けとけば盗まれる心配はねぇし、番号の板も渡すから見失うことも無いしな。それに此処が唯一の止め場所だ。嫌なら裸で止めな」

「んーちょっと考えるよ」

「そうかい、まぁ仕方ねえわな」


 実際は考える必要など無い。金額を聞いてみたかっただけだし。私達は見えないところまで移動すると、ゴーレムも馬車も背中に収納する。馬を生で持って来なくて正解だったね。


「宿屋もこうじゃなきゃ良いけど」

「覚悟はしといた方が良いかもですね……」


 と意気込んで中に入ってみたが、というか門とか無いんだよね。美香が言うには、ここら辺の魔物は全てダンジョンの中に居るから、外からの脅威はほぼ無いらしい。まぁ周り全部荒れ地だもんね。


 宿屋はどうかって思って見て回ってみたけど、思ったより高くなかった。何でだぁって思ったけど、宿屋の数が異常に多いんだね。そこら辺の人に聞いてみたら、この街の7割は宿屋らしい。しかもほとんどが簡易的で寝るだけの宿なのだとか。ほとんどの冒険者は皆ダンジョンに潜るし。この都市の冒険者人口は世界一だからしょうがないんだってさ。


 中心地まで続く長い下り坂を歩いていくこと30分という長い道を歩いていくと、開けた場所に出た。


「で、あれがギルド?っていうかなにアレ……暴走族の溜まり場?」


 何か全体的にヒャッハーしてるね。入口付近で座ってる冒険者達の顔が全員悪人のような形相だ。何かもう既に近寄りたくない。話し掛けた瞬間こっちの身包み剥いできそう。そして刺してきそう。


 ダンジョンってあれぐらい屈強なマッチョメンじゃないと生きていけないのかな?なんにしろ、


「あれはほっときましょう」

「だね」

「じゃな」

「怖いもんね」

「行こ~♪」


 満場一致で入らないことにした。フードを深く被って見つからないように、ダンジョンの方へと静かに向かった。やはりダンジョンからは近いようで、すぐに入口が見える。



「此処がアモーネのダンジョン……」

「そう、『グロリアの洞窟』だね」



 外から見ても広かったけど、近くで見ると更に広く感じる。穴は斜め下に向かってどこまでも伸びていっている。途中から何か膜のような結界があったが、そこに冒険者達は臆せず入っていく。


 入口近くはフェンスのような壁が設置されており、その近くに小屋があった。どうやらあそこで許可を貰って行くシステムらしい。もしかしてお金掛かるのかな?列に並ぶのは面倒だよ……



「ほれ、面倒そうな顔をするでない。アリーナ、行け」

「アイドリ~抱き~♪」

「ちょっと、そんな簡単に私を懐柔しようなんて片腹痛くなかったわ幸せだわ」



 アリーナにあすなろ抱きされながら列に並ぶこと30分、ようやく私達の番になった。今日は入らないけど説明だけは聞いておきたいからね。


「あん?なんだお前等。見ない顔だが冒険者か?」

「今日着いたばかりだよ。ダンジョンって全然知らないから、とりあえず説明だけお願い出来ない?」

「へぇ……ギルドには行ってないのか?」

「いや、怖そうな男達が入口に屯ってからまだかな」


 入る気無いけどね。ここで入ってないって言ったら説明拒否られる気がしたから濁す。


「ああ、あの馬鹿達か……まぁいい。ダンジョンは組合管理で、入る場合は1人に付き銀貨5枚頂くことになっている。ダンジョンに入る奴はそれなりに専用の装備と、後は『バッカ―』を連れて行くのが標準だ」

「バッカ―?」

「名の通りだ。魔物の素材を切り取って運ぶ奴等さ。トラップにも精通してるから、初心者には必要だぞ?ギルドに行けば人員の貸し出しが出来るようになるんだ。さっきの『ギルドに行ったか?』って質問はそういう意味だ嬢ちゃん方」

「あー……」


 なんだかんだ気を遣ってくれていたみたいだ。ごめんねおじさん。


「大方道中で誰かに聞いたんだろうが、この都市は表面上はいつも通りだ。ギルドには行かない方が良いが、『バッカ―』はこのダンジョンでは必須だ。ま、迷ったなら野良バッカ―でも付けるんだな。そっちもあまりお勧め出来ねぇけどよ…」

「今日は居ないの?」

「午前中はいつもそこらに居る。分かったならとっとと行け」


 そう言って手でシッシと振るおじさん。私はしばし考えて、

「わかったよ。おじさん名前は?」

「あん?……ジェスだ」

「ジェスさん。ありがとうね。私はアイドリーだよ、それじゃ」

「レーベルじゃ、またの」

「アリーナッ!バイバイッ!!」

「し、シエロです。また後日」

「えーと……桜田です。またねおじさん」


「お……おう」


 親切な人との出会いは大切しようということで名を教え合って私達は小屋を後にした。さーて、とりあえずの聞きたい事は聞けた。後は店とか回って適度に良い宿屋に一泊してダンジョンに行こう。


「妖精魔法があれば大体行けるだろうしね」

「主は空間魔法もあるしの」

「そ、そんな簡単に行くのかしら?」

「さぁ?」


 ノリでなんとかする気満々だし。



 店を回ってみて分かったことは、保存食料の多さが目立ったことかな。干し肉や固パン、後は魔道具の水筒なんてものも多種多様にあった。水を圧縮出来るらしく、500mlぐらいの大きさで10ℓぐらいいけるんだって。銀貨10枚だったけど、冒険者からしてみれば決して高くはないんだろうね。

 とりあえずその水筒と保存食料を人数分購入してそれぞれに持たせた。もしトラップで離ればなれになっても、これで数日は持つだろう。


「今回からは皆武器以外に、必要最低限の荷物も持っておこう。後これも」


 持っていた自家製転移石を人数分渡す。


「これで危険が迫ったらすぐに魔力を流してね。跳んで来るから」

「主よ。これは相当魔力を使って作れる物であろう?よくこんなに作れたの」

「何事もコツコツよレーベルさんや」


 これ1個作るのに1ヶ月掛かるからね。ガルアニアに居る間に1個。ラダリア建国からアモーネに着くまでに6個作った。とりあえずはこれで打ち止めだよ。


「よし、じゃあ宿屋に行こう。夜は危ないからご飯は部屋の中でということで」



 色々と歩いて探した結果、そこそこ良い宿屋を発見した。5人だと流石に部屋2つに別れた。ベッドもあるしお湯も出るから良いけどね。


「主よ、どういった感じに別れる?」

「私がアリーナから離れるとでも?」

「あ~い~ど~り~い~~♪」

「うわぁ、離れる気無いねアリーナちゃん…」


 私の頭に抱き着いてギューッとするアリーナ。美香、呆れた顔になって羨ましそうにしても譲らないよ。


「では残り1枠はジャンケンで決めるかの。3、2じゃからな」

「よし」

「負けませんッ!」


 レーベルはともかく何で2人もなん?君達仲が良いんだからそれで一緒になりなよ?


((絶対に2人の愛しい姿を目に収めるッ!!))


 ……?




「やりー♪」

「ふぬぅぅぅう~~~」

「残念です…」

 ジャンケンは美香の勝利に終わった。それじゃあさっきから不審者を見るかのような目でこちらを凝視している店主さんに部屋をお願いしようか。




「ごろごろ~♪」

「きゃわ~♪」

「……」

 美香は今、瞬きを忘れてベッドの上で正座し、その光景を目に焼き付けていた。ベッドにダイブした瞬間、人化を解いて妖精となったアイドリーとアリーナのじゃれついている様子を。


(何故……私は小さくなれないんだろう)

 

 人間に生まれたことを久々に後悔した美香だった。あんなに可愛い生物を、この身体では愛でるのが難しい…と。


「美香~」

「美香~♪」

「え、あ。どうしたの2人とも?」

「「手、広げて?」」


 美香が両手の平を見せると、2人はそこを椅子にして向かい合う形となった。2人は羽のように軽いのに、確かな柔らかさが手に伝わった。彼女は必死に冷静を装った。


「美香の元の世界教えてよ?」

「しりた~い♪」

(……異世界来て良かった)




 一方レーベル・シエロ組


「シエロよ、我の顔に何か付いとるのか?先程から何やらずっと見ておるが」

「あ、すいませんレーベルさん……あの、レーベルさんはどちらの出身なのですか?」

「ぬ?……我は、田舎の出じゃよ。丘のある村でな。偶々会った今の主に惚れ込んで一緒に旅をしておる」

「では、家族の方に勇者教の方は?お名前が…その…聖龍様と同じなので」


 レーベルのステータスは、現在付けている魔道具にアイドリーの『妖精魔法』により強化を受けている為、シエロの眼には種族とスキルの一部だけはどうにかこうにか隠せている。しかし、ステータス欄をただ塗りつぶしているような物なので、かなり怪しいのだ。

 だがシエロは、隠したいものがあるのだと無闇に聞くつもりはなかったので、遠回しに聞くだけに抑えている。


「ッ!!……いや、おらんよ。我の名は祖父より付けられたが、祖父は宗教事に関心は無かった…」



 それでも、レーベルは何とかシエロの質問を躱していた。バレたら信者になってしまうと思って……

(我も、主のように仲良くなれれば良いのじゃがな……)

「あー美香の胸もやらかいな~♪」

「ぽよ~」

「…ッ…ッ!」妖精2人に乗られて身悶え中

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