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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第一章 妖精郷
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第1話 転生妖精 爆誕

改訂:妖精魔法の内容について修正いたしました。


 

 あれからどれくらい経ったのだろうか。廃棄されたビルの中で簀巻き放置なんてされていたから、明確な時間とか全然把握出来ていなかったし。母よ、貴方の代わりに残った借金は、私が耳を揃えて全部返して置いたよ…………内臓ほとんど抜かれた挙句、簀巻きでドラム缶にコンクリート風呂だけどさ。


 もっと美味しい御飯が食べたい。世界中を旅してみたい。色んな人と出会ってみたい。友達沢山作っても良い。沢山沢山、やりたいことが幾らでも溢れて止まらない。


 次もし生まれ変われるなら真っ先に友達を作ろう。自由になんでもやってやろう。私は私だって胸張って、どんなに辛くたって笑ってやろう。


 私は私。私は、私だ。


「あー……眠いなぁ……お腹空いたなぁ……」


 段々と視界がボヤけていく。決定的な何かが薄れていく気がする。多分次寝たら死ぬだろうけど、人間の三大欲求には叶わない。眠って死ねるなら苦しまないだけ楽だと思い、そっと目を閉じることにした…………


 ああ……何故だろう。何だかとっても……温かいなぁ…………









 爽やかな風の臭いが鼻孔を擽るのと、暖かな光の眩しさに気付いてゆっくりと意識が覚醒していく。まるで長く深い眠りを体験した様な気持ち。時間に左右されない、穏やかな寝心地からの起床。


 意識が、覚醒……してる?


「んぐ、んふぁあぁ~~~~っ、ん~~~……よぉーく、寝ふぁ~ぁ……」 


 これ以上無いぐらい爆睡安眠状態だった。なんと清々しいことだろうね。しかも何故かお腹もスカスカな感じがしないし、あれだけあった気怠さも綺麗さっぱりだ。


「……っは!」


 しかし辺りを見回してみれば、なるほど、辺り一帯が素晴らしい草原となって私を出迎えてくれているじゃないか。なにこれ? 夢? 幻? それとも誰かが見せてるソリッドビジョン?


「…………っはぁ!?」


 何故草原? どんなに見回してもなだらかな地面とどこまでも生い茂るくさっぱらに照り付ける太陽しか無い。というか空気をオカズにしてご飯が食べられそうなぐらい酸素が美味しい。うわぁ、空超綺麗なんだけど。


 私の知っている場所にこんな所は存在しない……筈だ。地形がところどころおかしいし。太陽の輝きが違う。うん、違うね。

 とりあえず自分の恰好を再確認してみようと思ったら、手に握っていた紙束に気付く。茶色っぽいんだけど、何時の時代の紙これ? えぇーっと……まぁ、読んでみようか。



「なになに?『貴方は寝ている間に海に沈められて死にました。神である私が貴方をこの世界に転生させたので、以後、紙に記した説明に従って自由に生きることをお勧めします。


 PS:何度声を掛けても起きなかったので、事後承諾で転生させました』って……………恐ろしいことする神様もいたもんだ。ていうか神様って居たんだなぁ……ぶん殴りたいなぁ……」


 前世、神様なんて存在は知識上でしか知らないし見たことも無ければイッツディストピアな世界だったからか、そういう存在にいざこういう事されるとムカつきしか無かった。勝手になにしてくれとんねん、私はあの世でお母さんと一緒に暮らす筈だったのにこん畜生め……まぁ、生きてるんだし、それは今は良しとしよう。


 話を戻すと……つまりあれだね。異世界転生ってやつ? 昔読んだ一冊の本にそんな設定あったなぁって程度だけど。けど私赤ちゃんじゃないし……と思ってよく自分の身体を確認してみると、1つの事実が判明する。


「……わお」


 それは、本来人間には無い鳥や虫にあるものだ。しかし身体は人の形をしている。顔は……今は確認出来ない。


「羽、だよね? それに……」


 次いでに言うと身体がとても小さくなっていた。小人のような感じ。草原の上に立つと、草が私の身長ぐらい高いんだもの。これは驚きだね。



 そう、私はこのような生物を知っている。本の中にしか居ないと思っていた幻想の生物。




「私、妖精に転生……したの?」




 紙束を捲り読み進めて行くと、この世界のことや自分の状態について色々と知ることが出来た。なんともサービスの良い神様が居たものだ。信じたことは無いけれど。


 この世界の名は『アルヴァーナ』……世界に名があるってのも可笑しな話だけれど。剣も魔法も天使も悪魔も、次いでにこの世界特有の神とか邪神とかも存在する、していたらしい。勇者と魔王も出て来て中々スパイシーだ。ステータス表も存在するから、気分はリアルRPGか。ただし死にますって感じの。



 そして、私は本当に『妖精』として転生したらしい。何で人間じゃないの? と思ったら、ちゃんと理由も書いてあったよ。



 曰く『人に転生させると碌なことにならない』から。他の異世界でも同様に私みたいな転生者が多く、その人達は人間として生まれたんだけど、世界にとってとことん害悪でしかなかったとのことだ。


 地元民に迷惑掛け捲ってたらそりゃあそうなるよね。少なくとも転生先が醜い系の奴じゃなくて私は安心だよ……で、肝心のこの世界で私はどうすれば良いか、だけど。特に無い。



 私だった理由も無いって………ん?


「え、理由も無いのに転生させられたの!? えぇ…………」


 更に読み進めると、各世界で魂の回り方は違うのだそうで。世界によっては輪廻せずに永遠にその世界で留まり続けてしまう、ということがあるんだとか。この世界もそうみたいで、偶に他の世界から魂を呼び寄せて循環をさせないと、世界が崩壊してしまうだってさ。神様も大変だねぇ。こっちはとばっちりだけどねッ!!


「まぁ私の場合、それで良かったんだけどさ……」


 ”親”……みたいな存在の……あの理不尽の塊みたいな存在のお遊びみたいな借金で最終的にあの様になったのだから。新しく人生をスタート出来るっていうなら万々歳なのかな? こういう世界に行ってみたいと逃避と妄想を繰り返し続けたことも多々あったし。

 

 それになんだろう、今は気分が良い。良く分からないワクワク感が私の身体の内から溢れている。


「……そうだよ、私、この世界で自由なんだ……っ」



 上機嫌。よし、次はステータスを表示させてみようか。紙には頭の中で『ステータスオープン』と念じれば良いらしいのでその通りにする。



名も無き妖精(0) Lv.1


固有種族:次元妖精


HP 30/30

MP 200/200

AK   3

DF   3

MAK  10

MDF  10

INT  7000

SPD  20


【固有スキル】妖精魔法 妖精の眼 空間魔法 顕現依存


スキル:無し


「お~……ほうほう」


 目の前に現れた薄いプレートのようなモニターに私のステータスが出たのだが、ありきたりな妖精のステータスなのかなぁと思っていたらまったく普通じゃなかった。主に種族とINTが。紙を見てもなんら特典とかのことについては書かれていないから、多分ランダムでこうなったんだろうと思いたい。


 特にINTがおそらく普通じゃないぐらい高いんだけどどうしてだろう? って紙の説明文を見てみたら、どうやら知識力に依存しているらしい。なるほど、異世界から来た私の知識がこの世界でこれだけ高いってことは、生活に関しての文化もそこまで発達していないってことかな? 主に科学方面で。私は科学知識使う気無いけれど。


 とりあえず一つ一つ固有スキル説明があるみたいなので確認してみた。


・妖精魔法

『自身を媒体として繰り出される魔法。想像力に依存するので無詠唱で繰り出せる。魔力が消費されない代わりに、明確なイメージが必要とされる。妖精種は必ず持っている固有スキルであり、又、固有スキル欄に記載されるスキルは、全てこの魔法の一部として扱われる。属性に偏った妖精の場合、使える魔法も偏る場合がある』



 丁寧な説明だなぁ。けど想像力か。ふむふむ、自然体で魔法が使えるってことなんだろうけど、これは練習しないとなぁ。ステータスは多分これ石投げつけられて当たったら死んじゃうくらい貧弱だろうし。


 ただ、魔力を消費しないってのは嬉しいな。練習し放題だ。発動する魔法に後付けで何かする時は消費するみたいだから、使い方を研究しないといけないかな?



・妖精の眼

『真実を見通すとされる眼。妖精の中でも限られた種、その中でも数万匹に一匹しか発現されないとされている。相手のステータスの開示が可能。又、虚言が通じなくなる。』



 人間でいう『鑑定』みたいなものかな。妖精の中でも珍しいならラッキーだね。これで自分より強そうな相手と相対してもなんとかなりそうだ。嘘も見抜けるし人間不信になる心配もないね。会えるか分からないけど。


 次からは、私の種族特有のスキルのようだ。



・空間魔法

『最も習得の難しいとされる魔法。空間の拡張、次元の断裂、アイテムボックス、短距離・長距離瞬間移動と様々な複合魔法を可能とする。通常はスキルとして記載されるが、次元妖精に限り顕現当初から固有スキルとして存在している』


「うへぇ、次元の断裂って……」


 キケンキケン、即で封印しないとヤバいのがあるね。スキルとしてだったら普通に魔力を消費したんだろうけど、私次元妖精だから魔力消費無しでこれ使えちゃう。ステータスの低さとか全部ひっくり返ったね。と思っていたら、



・顕現依存

『依存する自然媒体に応じてLvアップ時ステータス上昇に補正が加えられる』



 ちょっと想像付かないけど、もし私の想像通りだったとしたら、これが一番危ないかもしれない。私って次元を媒体にしているんでしょ?それってどういう範囲での依存度なんだろう?ということで、妖精の眼を使って自分の種族の説明を見たら、



・次元妖精

『この世界でただ一匹の固有種。他の自然と違い、内包している宇宙空間内そのものの化身』



「……よし、考えるのや~めた♪」


 自分がどれだけ化け物になってしまったのか良く分かる時間だったよまったく。紙には種族によって成長率も変わってくるとあったから怖いけど…………さて、次の問題にとりかかろうか。


 まずは、此処が何処だかを把握したい。もし魔物とかがうろつく場所だったら生まれたてで戦闘慣れしてない私なんてすぐに食べられてしまうだろうし。とにかくこの場から離れようと羽に集中してみると、


「お、おお?お~お~飛んだ飛んだッ!!」


 非常にフラフラしながら身体が浮き始めたので、上下左右反転など色々動いて感覚を掴む。十数分後には身体の一部として機能を習得していた。


 これは種族の特徴だからスキルとかにも反映はされないみたいだけど、昔憧れたあのファンタジー格闘漫画を思い出して思わず興奮してしまう。あんなに早くはまだ動けないけどね。いつかやってみたい事リストに追加しよう。




「さて、これからどうしようか?……旅はしたいよね、折角のファンタジーだもん。人の営みも体験してみたいし、文化にも触れたい。魔物の退治もしたい、大きな城も見たい。やりたいことてんこ盛りだ………その前に生き残るのが先か」


 さっきよりも、何だか気配が重苦しく感じてしまう。きっと所謂『魔物』ってのが居るんだろうと思うと、私は少しばかり身体が震えた。やだよ?生まれてすぐ餌になるなんて……




「い、今はとにかく、安全な場所を探して「だれー?」……えっ?」




 思考が一回転して考えるのを止めそうになったら、後ろから声を掛けられる。


 振り向けば、私と同じような姿をした『妖精』がフワフワと飛んでいた。空色ロングの髪に、藍色の眼、そしてシンプルな白いワンピースを身に纏っている。咄嗟に私は『妖精の眼』を発動してその妖精のステータスを見た。



アリーナ(0) Lv.3


種族:水妖精


HP 70/70

MP 150/150

AK   12

DF   12

MAK  22

MDF  30

INT  5

SPD  43


【固有スキル】妖精魔法(水) 顕現依存


スキル:無し



 見た目通りの妖精だ。最初に出会ったのが同種に近い妖精とは幸先が良い。というか、



(良かった……本当に良かったッ!!第一発見者が同種でッ!!これで魔物の餌にセルフでならなくて済むかもしれない…………とにかく仲良くなりたい可愛いからッ!!)



 今の私には、少女の姿は控えめに言って天使である。


「だれー?」


 同じ質問をするその子に、私は近付いて挨拶することにした。あーけど、私名前無いのか……とりあえず普通に言うか。


「初めまして、私、生まれたばかりだから何も分からなくて……」

「そうなの? 私アリーナッ!こっちきて~♪ んふふ~~~♪♪」


 そう言うと、アリーナは私の手を無邪気な笑顔で引っ張ってくる。もうこのまま魔物の餌場に放り込まれても私は後悔することは無いだろう。


「あの、どこに行くの?」

「住んでるところー♪」


 ……妖精の棲み処とか?だとしたらどんな暮らしをしているのか気になるし、他の妖精にこの世界のことを聞けるかもしれない。是非お供させて貰おう。



 しばらくの間二人で手を繋いで飛んでいると、目の前に壁のような大きな森が見えてきた。木々の高さが軽く見積もっても100m以上はありそうだ。森の中は光が届かないくらい暗そうだけど、その中にアリーナは躊躇せず飛び込み、私を連れていく。恐れを知らないリトルガールだ。


 そこからまたしばらく飛ぶと、突然アリーナが止まった。彼女の頭にぶつかって一瞬フローラルな臭いを嗅ぎ取った。私からも……するね。


「ここからがそう~♪」

「……何も無いよ?」


 そう、周りには密度の濃い森林がこれでもかと生い茂っているだけで、他には何も見当たらないのだ。しかしアリーナは自信満々な顔してるし、何かはあるんだろう。


「もしかして、結界みたいな……そういうもので隠してるの?隠れ里的な感じかな?」

「……?」


 いや、そんなコテっと首を傾げられても非常に可愛いだけだから。だからとりあえずその場で抱きしめておいた。アリーナも訳も分からず喜々として抱きしめ返してくれる。うん、尊い。



「ここー」

「ここ? ……おお!? 何かある怖っ!!」


 アリーナが指定した場所に手を伸ばしてみると、腕が何かの中に入り始めた。境界線が波紋になっていてちょっと怖かったけど、アリーナが一緒に入るよう手を繋いでくれた。


 よ、よし。行ってやる、私はアリーナを信じるッ!!




「い、行くよ?」

「うんッ!」

「「せーのッ!」」


 そして、意を決して飛び込んだ先には、私の想像の何百倍も凄い光景が飛び込んできた。



 「ようこそ~♪」


 ……うん、そうだね。可愛いね。

 

「ところでアリーナ、どうしてあんなところに居たの?」

「おさんぽ!」

(……魔物に襲われないか心配だ)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 妖精アイドリーの物語、検索の仕方が理解らなく見失っていました。 次の生でこのようなハッピーエンドをと祈りつつ当時読ませていただいていました。 ありがとうございました。 [気になる点] 再…
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