表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

赤ずきんは笑わない

作者: 佐藤トモヒロウ

いつもの通学路を猫が歩く。

首輪をしていないし、多分野良なのだろう。

正直触りたい。

モフりたい。肉球をフニフニして、顔埋めたい。

きっとお日様の香りとかするのだろう。

ピンと立った尻尾の凛々しさは、今ここにある私以外にわかるまい。

ああ、でもそれすら今は叶わない。

遅刻しそうなのだ。今の私は。

この小さくいとおしいナマモノの、すぐ横を、

マッハ通り過ぎなければならないことは、

死ねというのか。この私に。

しかもここは商店街。顔なじみの店主とかもそこそこ居る。

もし、その人たちに猫の前で悦に浸ってる姿を見られたのならば。

うん、私死ねる。私グッバイ。アイキャンフライ。

魔女が出された毒リンゴを食って、小人たちを余裕で悲しませる自信があるね。

狼に食われた後、狼ごと猟師に鉄砲で撃たれても、GJって思わず叫びたくなるね。

そんなこんなで商店街過ぎた。時間とは早いものだ。

あとはこの角曲がって、桜並木抜ければゴール。

しかしあれだ。桜の木多いな。

そりゃあ入学したころは、綺麗だなって思ったよ。

でも、散った後を想像するとぞっとする。

そこにはドロドロになった花びらが、そこかしこに散乱しているのだ。

雨でも降ればぐちゃぐちゃだ。

そこに車が走ればどうなるか。

怖い怖い。

そんな危険な道を、私たちは通らなければならないのだ。

ガードレールもない狭い道。正直、通りたくもない。

通学している生徒の列に、車が突っ込む事故なんて、

テレビで聞いたりするじゃないか。

その時はなんて生々しいんだって思ったね。

あの道で一斉清掃とかされない限り、これからも変わらないんだろうな。

まあ多分、やらされるのは私たちなんだろうけどね!

生徒会の動議とかで「これはいい案だ!」とか誰かが言い出して、

なし崩しに承認されて、ジャージ着せられて、

ちょっと暑い5月の晴れた日なんかに汗だくで労働させられるんだろう。

だるいことこの上パないわ。「パ」ないわ。

内申点かリンゴジュースがつくならやってやらんでもないけどさ。

オレンジジュースはだめ。あれ、やたら酸っぱいし。

っちゅうか、安いなあ、私。

校門見えた!私かつる!

そんなことを考えた矢先。

私は派手にすっ転んだ。

「ふぎゃあああ!」

痛い。泣ける。

しかも雨上がりの路上でヘッドスライディングしちゃったよ。

顔は擦りむいてひりひりするし、手なんかも庇ったせいで擦りむいて血でドロドロだ。

他にも服とかドロドロだし、胸とかお腹とかひりひりする。

今日は全くなんて日だ。

教室にとぼとぼと歩いて着いた私。

走れないもん。足痛いし。

「おー、赤城。お前遅刻か。」

HRなんかとっくにはじまってた。

どちくしょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ