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第三話「異世界転移でよくある人助け」

 「あれは何だ?」

 「追われてますよ!助けなきゃですです!」

 「どっちを?」

 「そ、そんなのあのお爺さんの方に決まってるじゃないですですかー!」

 「だろうな」

 

 追ってる奴らは何者だ?装備が整ってるあたり山賊じゃあねえな。

 この国の兵士か、もしくは傭兵かベタに騎士団か...

 まあなんにせよ多勢に無勢であの爺さんがヤバいってのは事実だ。

 ここは奴らを倒して爺さんから事情を聞くか。


 「よし、あの爺さん助けるぞ」

 「そうしてくれると信じていたですです!で、どう救うんですです?」

 「周りの奴ら全員殺さない程度にブッ潰す」

 「かしこまりましたですです!援護しましょうか?」

 「いや、俺一人で十分だ。あんたはあの爺さんの安全を確保してくれ」

 「了解ですです!」


 それにしても敵が多いな。脇構えじゃ厳しいか...。

 よし、ここは対多数の「八双の構え」でいこう。


 「さあ、かかって来い!」

 

 爺さんの馬車が俺の横を通り過ぎる。

 後ろに乗っているのは誰だ?王都の方向から来てるってことは身分が高い可能性もあるな。  


 「そのまま馬車について行け!」

 「はいですです!」

 

 ミケは飛んで馬車についていく。あの翼、やっぱり飾りじゃなかったか。

 

 「だれだ貴様はァ!邪魔だそこをどけえええい!」

  

 追手の一人が俺に槍を向ける。俺はそれを剣で往なし、柄で首を突く。


 「ぐわああああ!」

 「すまねえな、あいにく簡単にどくほど素晴らしい器量は持ち合わせてねえんでな」

 「止まれ!」

 

 追手の中心にいた人物が号令をかける。

 それに応じ他の奴らが全員止まった。


 「あんたが親玉か?」

 「そうだ...と言いたいところだが違う。我々は雇われの身だ。故あってあの馬車を襲撃した。貴様に知る権利はないが直ちに逃げるのだったら殺すはしない。さあ、そこをどけ」

 「無理だと言ったら?」

 「容赦はしない。殺す」

 「そうかそうか。じゃ、殺しに来いよ」

 「今ならまだ冗談で済まされるぞ?」

 「マジマジ大マジ」

 「そうか、残念だ...。全員こいつを殺せえええええええ!!!」

 「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」

 

 追手が全員馬から降りて俺を囲む。これは幸運だ。馬に乗ってる状態だと倒しづらかったからな。


 「貴様ァ囲まれていてなぜそんなに余裕でいられる」

 「ふっ、ビビッて固まってるだけだろ」

 「こんなガキ一人に時間をかけてる暇ァねえぜ。さっさと殺っちまおう」


あ、こいつら明らかに小物だな。


 「死ねー!」

 「ヒャッハー!」

 「キヒヒヒヒ!」

 

 俺は1人目は横に払い、二人目は面を取り、三人目はのど元を突いた。

 

 「「「グハァ!」」」


 えっ弱っ。

 

 「な、私の部下の中でもトップ3の三人を一撃で仕留めるとは...。油断できんな」


 これでトップ3何ですか...

 

 「ふん!まあいい。こうなった以上は私が直々に相手してやろう。言っておくが、なめるような真似はしない方が良い。今貴様が足したこの三人は元盗賊だが、私は元王国軍部隊長だ。そこら辺の奴とは訳が違う」

 「ほう、あんたは王国軍に所属してたのか。しかも部隊長...これは楽しい展開になって来たな」

 「ふん、軽口を叩けるのも今のうちだ。数秒後、貴様は私の前に跪くことになるだろう」

 「そうか、じゃあさっさとやろうぜ」

 

 お、なかなか強いな。確かに大口を叩くだけのことはある。得物は大剣か。ならまともに剣を受けるのはまずいな。間合いに入らないように一撃で決めるか。

 

 「では...行くぞ!!!」

 

          ――――――武田刀冶 V.S 追手のボス――――――


 「ぬおおおおおおおお!」

 

 ボスが大剣を振る。俺は間合いの少し後ろにズレて避ける。こいつ...見かけによらず速いな。

 伊達に部隊長やってたわけじゃないってことか...。

 

 「ほっ!」

 「グッ!」

 

 ボスの横に入って放った脇腹への蹴りがヒットする。が、そんなにダメージは入ってないだろう。

 ここはもう少し追撃する必要があるか。


 「てやあああ!」

 「なめるなああああああああ!!!」

 「うおっ!」

  

 俺は続けざまに突きを入れる。しかしボスの大剣が間一髪追いつきそれを弾く。

 やはり戦い慣れしてるな。場数で言えば俺の方が不利か...。

 ちなみにここで言う場数に試合は入らない。あれは殺し合いじゃないからな。一本を取るのに殺す剣はいらない。


 「死ねええええええええ!」

  

 ボスが連撃を仕掛ける。面倒だな、攻めづらい状況だ。だが...勝った!


 「そこだあああああああああああああ!」

 「うッ!」

 

 連撃の三太刀目が外れた瞬間、俺は横にスライドしそのまま脇を斬った。そいて...


 「おらァ!」

 「っ!!!クソッ!」


 左手で脇腹を抑え、大剣を片手で持ったボスにとどめだ。剣を落として首に剣を突きつける。

 俺の勝ちだ。

 

           ――――――勝者、武田刀冶―――――― 


 「あんたの負けだ、諦めな」

 「くっ!」

 「俺の質問に答えてもらうぜ。どうして馬車を襲ったんだ。言え!」

 「...依頼主から、馬車を襲い中にいる人物を誘拐しろと言われた......」

 「依頼主の名は?」

 「そ...それは言えない」

 「ああ!?」

 「か、勘弁してくれ。彼の名を言えば、今生きて帰ったとしてもバレたときに殺される...。だから言えない」

 「彼ってことは男か。他には?」

 「っ!もう止めてくれ、本当に。君が素直にあの馬車にいる人物を渡してくれたら、私は死なずに済むんだ」

 「失敗したって言やあいいじゃねえか」

 「それではダメだ。殺される」

 「じゃあどうして依頼を受けた」

 「断れないからだ...。断れば私はもう王都にはいられなくなる」

 「なるほど、王都に強い影響力を持った人物ってことか」

 「も、もう本当に許してくれ。これ以上喋れば確実に私は殺される」

 「じゃあ助けてやるからそいつの名前を言え」

 「助けるだと?無理に決まっている。彼に逆らえるものなどいない」

 「俺なら逆らえる、あんたを助けることができる。だから言え」

 「す、少し考えさせてくれ...。」


 それにしても王都にいて逆らえない人物か...。てことは貴族か...もしくはそれ以上の存在。つまり王族か...。いずれにしても厄介だな。あの馬車の中の人物の素性が知れればいいんだが。

 

 「本当に、我々を救うことができるのか?」

 

 ボスが疲れた声を発した。きっとこの短い時間、かなり本人の心で葛藤があったのだろう。


 「できる」


 ここはあえて清々しいまでの断言で答えてやろう。これで気が楽になるわけではないだろう。

 だがあえて断言する意味はある。


 「必ず救う、だから依頼主の名前を教えてくれ」

 「...その男の名は............。ブランドン・ポルティージョ」

 「ブランドン・ポルティージョ...。何者だ?」

 「し、知らないのか?彼はこの国の王族だ。国王の従兄弟で、国王の次に権力を持っている人物だ」

 「だから誰も逆らえないのか」

 「ああ、国王は温厚で知られているが、彼は真逆だ。自分には向かうものは次々と粛清する。彼はそうして勢力を広げた」

 「なるほどな...。で、馬車の中にいるのは誰だ?」

 「それは我々には教えてくれなかった。こ、これは本当だ」

 「そうか、分かった」


 だいたい予想できる。馬車の中にいるのはポルティージョに敵対している、もしくは邪魔な存在だ。

 それならば身分は高いはず。ここでの、最善の策は...そうだな、思いついた。これでいこう。


 「よし、さっきの馬車を追うぞ」 

 「な、何故?」

 「もともとあの馬車を救うためにあんたらを止めたんだ。当然だろう?」

 「た、確かに...。」


 こいつ、剣の腕は立つが頭は悪いな。部隊長で留まったわけだ。

 俺だったらこれぐらいの実力なら将として側におけるだろう。

 

 「トージさ~ん!」

 「ん?」

 「連れて来ちゃいましたですです~」

 

 声のする方を向くと、ミケの後ろを付くように、先程の老人が馬車を走らせていた。

 


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