第二話「異世界転移でよくある主人公に与えられるチートな能力」
そんなこんなで現在王都に向けて移動中。
「王都までどのくらいあるんだ?」
「そうですですねー、距離はわかりませんけど、このまま徒歩で移動した場合、あと一日はかかると思うのですですよー」
「一日って、なんか移動手段はないのか?」
「ある...と言いたいところですですけど、あいにくそんなものまで召喚はできないのですです」
「マジかよ...」
「まあいいじゃないですですか!この状況を少しでも楽しみましょう!」
「なんでお前はそんなに楽しそうなんだよ...」
「私は普段は神様のお側にお仕えをしているので、外の世界に出るのはこれが初めてなんですですよ」
そういやこいつ天使だったな。そういうもんなのか。
「そういえば、神が俺と戦ってた時に出した光の弾、あれは魔法か?」
「え?ああー、あれは魔法ではありませんですです。神様の持つ『神の加護』と呼ばれるもので、神様のみ持つことを持たされているものなのですです!」
「加護か...あんたも持ってるのか?」
「はい!私は『天使の加護』を所有しています。この加護は、天使にのみ持つことを許されている加護なのですです」
「他にも持ってないのか?」
「そうですねー、刀冶さんには一から説明しなきゃですですね!まず始めに...」
ミケの説明はこうだ。この世界で生活している人々(魔族含む)は、生まれながらに加護というものを持っているらしい。
しかし通常の場合、加護というのは五種類しかなく、更に一種類しか持つことができないのだという。一般的な加護は、火・水・風・土・回復なのだそうだ。
稀に雷・影という加護を持つ者も生まれるらしいが、人口の多い王都でも、この二つの加護を所有しているものは、まずいないらしい。
そして極極稀に、これらとも違う加護を持ったものが現れることもあるという。
その者たちは特別視され、国から重宝されるのだそうだ。
現在確認されている特殊な加護を持つものは三人。
魔族を統べる『魔率の加護』を持つ魔王。戦闘において圧倒的戦闘力とカリスマ性を有する『英雄の加護』を持つ王国軍の大将軍。そしてこの世界で唯一魔術師として認められている、傘魔術師とかいうやつの持つ『叡智の加護』だ。
後は神の持つ加護も...と言いたいところだが、神というのは任期があるらしく、千年間しか世界の統治者として君臨することができないらしい。その後は神の適性のある者に神という存在を受け継ぐのだそうだ。
その際、加護もそのまま受け継がれるため、神の加護は例外として見られるらしい。
「影ってのが気になるな、いまいちイメージができない」
「影というのは、そちらの世界で言うところの、忍者のようなことができると思っていただいて結構ですですよ?細かいことを言うも微妙に違うんですですけどね」
「そういうものなのか」
「そういうものなのですです♪あっ!」
「どうした?」
「トージさん!実はですですね、あなたにも加護が存在するのですですよ!」
「マジか!?おい、教えてくれ、どれだ?火か?水か?風か?土か?それとも稀な雷と影のどっちかか?」
「ご期待に添えないようで申し訳ないのですですが、その中に答えはありません!」
「てことは...」
「はい!刀冶さん、あなたには特殊な加護が備わっています!」
でたよ、こういう展開。薄々感じてはいたけど、まさかここまでよくできているとは...
「で、ちなみに何なんだ?その加護って」
「その加護の名は...『侍の加護』ですです!!!」
「侍の...加護」
「はい!詳しい説明をしましょうか?」
「お願いする」
「それではご説明いたしましょう!侍の加護とは、刀冶さんにしか備わっていない加護で、刀冶さんにこそふさわしいと言える加護なのですです!例えば、刀治さんは神様と戦った時、神様の放った光の弾をスパッ!っと斬っちゃいましたよね?あれは侍の加護の効果の一つですです!不屈の魂を持つ侍に斬れないものはないのですです!他にも、加護の効果で見えない鎧をまとうこともできますよ?もっとも、神様相手だとそれも意味がなかったようですですが...。とまあ、こんな感じですです!」
驚いて何も言えない。侍の加護...俺にふさわしいかどうかは分からないが、男心をくすぐるカッコいい加護じゃねーか。だがこいつはまだ隠していることがある...
「俺の体...身体能力についてなんだが、この世界に来てから心なしか上がってる気がする。これも侍の加護の効果か?」
「あ!!!それを最初に説明しなきゃいけないんだった~」
こいつ意外と抜けてるのか?いや、だいたい分かってたけど。
「トージさんの体は、この世界に来る際にこの世界仕様になったと考えて下さい!」
「異世界仕様ってことか?」
「はい!世界が違えば様々なことが違ってきます。その代表例が身体能力ですです!この世界はそちらの世界よりもより一層、自由な動きができるんですですよ?」
「例えば?」
「例えばですか...そうですですね~、あっ!とても高く跳べますよ?試しに跳んでみては?」
「高く跳べるか...よし、ふんっ!うおあ!」
地面を強く蹴った瞬間、俺の体は高く舞い上がった。おそらく十メートル以上はあるであろう期よりも高く。
「えっ?ちょ!やばいやばい!」
このままではマズイ!落ちたら死ぬんじゃ...いや、冷静に考えろ、ミケは身体能力が上がったと言っていた。着地できるはずだ。............多分。
「うわあああああああああああああああああああ」
「ドスーン!」
鈍い音が響く。よかった、無事着地はできたみたいだ。そんなに痛くないし、これで身体能力が高くなったと証明できたな。
「よし、チュートリアルはこんな感じでいいのか?」
「なんですですか?それ?まあこれで私が神様から仰せつかっていた説明は終わりですです。ようやく出発できますね」
「ああ、じゃあ行くか」
これから王都まで約一日、魔物とか出るのかな、そこら辺の説明は聞いていなかったが、まあ大丈夫だろう。
なんにせよ、ようやく始まるんだな。俺の冒険が...
「ん?なにか音が聞こえるのですですよ?」
「音?確かに、何の音だ?」
これは地面を何かが走る音だ。何かがこっちに近づいてくる。なんだ?早速敵か?
「そこの方々ああああああ!お助けを―!!!」
声のする方を見てみると、馬車に乗った老人が必死になってこちらに来ていた。
十騎程の追手を連れながら...




