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第九話「異世界転移でよくあるお金の説明」

年内ラスト投稿となります。

良いお年を


「結構入ってるな...」


 金貨って初めて見たけど、こんなものが昔は通貨として使われてたとは、驚きだな。

 庶民の感覚だからかもしれないけど、金以外が混じっているとはいえ、金が入っていることには変わりはないんだもんなあ。

 王都での謁見後、俺はアストルフさんの馬車に乗って屋敷に戻っている。

 ちなみにアストルフさんは王城にて仕事があるらしく、馬車には乗っていない。

 なんというか、さっきまでのやり取りがいまだに信じられん。


 「おいミケ!」

 「何ですです?」


 俺の呼びかけに空気と化していたミケが答える。

 てか想像以上に空気だったな。もっとも、謁見の時は終始口をパクパクさせてたから、それも仕方がないと言えば仕方がない。


 「この世界での金について教えてくれ」

 「はいですです。この世界の通貨は七種類に分かれています。大金貨(≒一万円)、金貨(≒五千円)、大銀貨(≒千円)、銀貨(≒五百円)、大銅貨(≒百円)、銅貨(≒十円)、鉄貨(≒一円)ですね」

 「国によって違うのか?」

 「いえ、貨幣においては各国が協力して発行しているので、大陸で統一されています。しかし、一部の小国の中でも辺境の地ではいまだに物々交換のところもあるみたいですです」

 

 大陸で統一か...。そりゃまた随分なご都合主義なこって。これでミケが恐らく神にでも貰ってのであろう本を読まずに言えていたら俺の中でのこいつの株は上がっていたんだがな。

 ちなみに俺の貰った金は大金貨百枚だ。貰った時は「え?ちょいと少なすぎやしませんかねえ」と国王の懐を疑ったものだが、これは最初の支度金であって、足りなくなったら後々くれるらしい。

 

 「何を買うべきだと思う?」

 「そうですですねー。トージさんは武器は既に持っていますからねー。あっ!衣服を買われてはいかがでしょう?今はとりあえずアストルフさんに借りていますが、この後トージさんは宿をとられるのではないですですか?」

 「ん?ああ、そういえばそうだな」


 確かにいつまでもアストルフさんのところに居るわけにはいかないからな。いずれ安いけど良い宿を探そうと思ってたし、それが今日になっても別段問題はないか。


 「今日まではアストルフさんのところにお邪魔しよう。宿をとるのは明日からだ。衣服やら何やらも明日からでいいや。今日はもう疲れた。平気にしてたつもりだったけど、重圧が凄かったからな」

 「了解ですです!」

 「あっ...。今日は襲うなよ?」

 「分かってますよ」


 本当かな、安心できん。まあ誘惑は凄まじかったがただ横で寝てるだけだったし、俺が先に寝てしまえば問題無い...はず。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「え!トージさん、明日にはここを出て行かれてしますのですか?」

 「ええ、お世話になりました」

 

 サーシャはかなり残念がっているが、これは仕方のないことだ。うん、本当に。

 あとミケ、勝ち誇った顔をするな。宿をとってもお前と俺は別部屋だ。相容れることなどありえん。


 「帰ったぞ」


 お、アストルフさんだ。ちゃんとお礼を言っておかなきゃな。


 「アストルフさん」

 「どうしました?トージ殿」

 「明日からは宿を探してそこを拠点にして活動をしようと思いまして」

 「おや、よろしいのですか?我々はまだまだここに居てもらっても構わないのですが」

 「ありがたいですが、これ以上甘えるわけにはいきませんので。まあ国から資金援助してもらってる身で何を言ってるんだと言われても仕方がありませんが」

 「いやいや、構わないのですよ。魔族に勝つため、我々としてはでき得る限りの協力をすると決めました。トージ殿が宿をとると決めたならばこちらとしては何も言う事は御座いません。今日はもう休まれて下さい。明日から本格的な活動を始めるのでしょう?」

 

 本当に人格者だなこの人は。魔族との戦いで恩に報いなければな。


 「はい。今日一日、色々とありがとうございました。それでは」

 

 俺は二階の用意された寝室に向かう。ミケ、お前は隣の部屋だ。何度も言うがついてくるなよ。

 俺はミケを強引に隣の部屋に入れた後、寝室に入る。この屋敷にはほとんどいなかったな。

 だがこの二日で色々とあった。まずは宿探しだな。その後に服やら何やらを買って、後武器も欲しいな。

 日本刀はあるにはあるが、戦の時は槍の方が有用だ。あと弓もあった方が良いな。

 そう考えるといろいろ買うものがあるな。まあ国王もそういったことを見越しているだろうし、恐らく大金貨百枚で足りるのだろう。

 深いため息の後、ベットに横になる。俺はゆっくりと瞼を閉じ、深い眠りについた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 翌朝目が覚める。


 「フワアア」


 大きくあくびをした後、あたりを見渡す。

 二人はいないな、よし。


 階段を下りて一階に向かう。眠い。まだ疲れが取れてないのか。まあ仕方がないか。

 でも今日は昨日よりも忙しいからな。子の疲れはしばらくは取れそうにないな。


 「あ、トージさん、おはようございますですです」

 「ああ、おはようミケ」


 ミケが階段の下から現れる。起きたばかりなのか髪がボサボサだな。

 

 「準備ができたら出るぞ」

 「え?まだ朝早いですよ?朝ご飯を食べてから行きませんか?」

 「いや、もう行く。やることがたくさんあるからな」


 俺は最初に冒険者ギルドに行こうと思ってる。早朝ならまだ人は少ないだろうと見越しての事だ。

 その方がテンプレの確立も減るしな。まあ起きる可能性が0%ではないが。 

 そんなことの心配よりも俺としては自分のステータスの方が気になるんだが。

 

 「そういえばミケは身分証の発行はできるのか?」

 「え?わたしですですか?」

 「ああ、ぶっちゃけ天使とかステータスとしてはかなりヤバそうだし、気になるな」

 「んー」


 そういってミケは本を取り出す。


 「天使は登録できないみたいですです。というか、表示されないみたいですです」

 「表示されない?」

 「はい。天使は人間とは別の存在なので、身分証の発行の際、魔法の効果が表れないそうですです」


 やっぱり天使は俺らからしたらイレギュラーな存在なのか。

 知りたかったな、ミケのステータス。


 「仕方ないか。さあ、さっさと準備をして行こう」

 「はい!」


 ミケと話した後、居間へ向かう。お、サーシャさんがいた。


 「サーシャさん」

 「あら、トージさん。おはようございます。お早いのですね」

 「ああ、準備が出来次第ここを出ようと思って」

 「もう少しいられてもよいのですよ?せめて朝食を召し上がられてはいかがですか?」

 「いや、今日はやることがたくさんあるので、早めに出ようと思います」

 「そうですか」


 あからさまに残念な顔をされてもな。もう決定したことだし、今更変えようという気分ではない。

 

 「では、次会った時は更にカッコよくなって帰ってきてくださいね?」


 うん、今すぐここを出よう。


 「じゃあアストルフさんにお世話になりましたと、ちゃんとお礼を申せずに申し訳ありませんでした。と、伝えて下さい」

 「分かりました。頑張って下さいね?」

 「はい」


 頑張って下さい、か。月並みな言葉だけど、俺はこの言葉がとても好きだ。やってやろうという気持ちになる。

 サーシャさんと別れ、寝室に戻り支度を整える。まあ支度と言ったって、荷物は刀だけなんだけど。

 服は自分の物に着替える。今日中に服屋に行くつもりだけど、やっぱりこの服だと浮いてるな。

 まあ会うまでの辛抱だ。


 「トージさん!準備終わりました!」


 ドアの向こうからミケの声が聞こえてくる。もう終わったのか。予想してたよりも早いな。

 まあこっちも準備は終わっているしな。


 「じゃあ行こうか」


 まずは冒険者ギルド。どうか、テンプレが起きませんよーに。



 

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