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第八話「異世界転移でよくある大物の失脚」


 「うむ、ブラン!お主を指名のようだぞ」

 「私...ですか。刀冶殿、でしたかな?私がそのブランドン・ポルティージョですが」

 

 あの人か。国王よりも少し若そうだな。長髪で落ち着いた雰囲気だ。策士って感じだな。


 「あなたがポルティージョ様ですか。実は今回の謁見、あなたに会うのが目的の一つだったのです」

 「ほう...。いったいどんな目的で?」


 ポルティージョは眉を顰め、こちらを窺うように見ている。

 まあ警戒はするわな。神の遣いとかいうやつがいきなり自分に会うのが目的とか言って来たら。

 単刀直入に行くか。あんまり策を巡らすのは得意じゃないからな。今回の作戦だってうまくいかなかった時の事は何にも考えていないわけだし。なるようになれ、だ。


 「ええ、あなたがリッティア王国にとって不利益な行動をしているという情報を掴みまして」

 「私が?ハッハッハ!面白いことを申しますな刀冶殿。宰相としてこの国のために常に働いている私に、そのような疑いがあるなど...。冗談としては笑えませんな」


 ポルティージョは威圧するように畳みかけようとする。だがあいにくそんな程度で引き下がるような良くできた人間じゃないんでね。


 「冗談ではありませんよ。信頼に足る証拠を掴んだのでこうして参ったのです。国王陛下、この男は第一王女を襲うよう刺客を仕向け、暗殺しようとしたのです」

 「何と...。王女が襲われたのはアストルフから聞いておった。それを刀冶殿が助けられたのも...。

しかし、それをブランが命じたなど...。本当なのか!ブラン!」


 国王はかなり焦っているな。余程の信頼が窺えるが、俺が神の遣いだと聞いたからか、疑わざるを得ないというところかな。


 「フフフ、ハッハッハッハッハ!!!」


 なんだ?急に高笑いしやがって...。観念したのか?


 「そこまで言われれば、もはや正直に打ち明けるほかありますまい。そうですよ、私が王女を暗殺するよう仕向けたのです」

 「ど、どういうことだブラン!お主はエナを娘のように可愛がっておったではないか!!!」


 国王の怒号が飛ぶ。


 「確かに、私はエナを娘のように思っています。ですが、それとこれとは別なのですよ。

 お前みたいに頭のいい奴ならわかんだろ?ガルフ」


 ポルティージョの口調が変わる。本性を現したか。


 「何だと?何がわかるというのだ!」

 「単純な話さ、俺はエナを殺したくて殺そうとしたんじゃない。殺すのが有益だから殺そうとしたのさ。

まあ、この国のためじゃあないがな」


 は?この国のためじゃない?俺はてっきり王女を殺すのがこの国のためだ!とか言い出すのかと思ってた。


 「じゃあ一体...」


 国王が聞く。

 ポルティージョは恐ろしい返答をした。


 「...............魔族の勝利のため」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「まさかポルティージョが魔族側に堕ちていたとは...。気付けなかった」

 

 国王が悔しそうにつぶやく。

 あの後ポルティージョは抵抗することなく衛兵に捕まり、地下牢へと送られた。

 何だろう。凄い違和感を覚えるのは俺だけか?


 「何はともあれ、これでこの件は終わりましたな」

 「アストルフか。迷惑をかけたな。お主には恩があり過ぎる。どう返してよいものやら」

 

 国王はひどく疲れた声でアストルフさんと話している。今は俺が出る空気じゃないな。

 

 「では一つ、お願いがあるのですが」

 「申してみい。でき得る限り叶えよう」

 「はっ。願わくば、刀冶殿のお願いを叶えて頂きたいのでございます。国として、最大のサポートをして頂きたいのです」

 「え?」


 急展開来たよ。

 ありがたいけど。


 「おおっ!そうだな、刀冶殿。お主には感謝をしなければなるまい。何が望みだ?申されよ」

 「ありがたきお言葉で御座います」


 いい流れだ。本当にうまくいくとはな。ここは思い切って見るか。


 「では...」

 「「ゴクッ」」


 国王とアストルフさんに緊張がはしる。


 「まずは質問からでよろしいでしょうか?」

 

 やっぱり最初は情報を整理しなきゃな。あれ?なんでみんなずっこけてるんだ?


 「お、おおっ。確かにそうだな!何を知りたいのだ?」

 「まず、この国に冒険者ギルドはありますか?」

 「アストルフが詳しい。説明を頼むぞ」

 「はっ!この国は勿論、冒険者ギルドは大陸中にあります」

 「大陸中?てことは世界中ではないと」

 「いえ、この世界は4つの大陸で出来ております。しかし、人として呼べるものが住んでいるのはこの大陸のみであるため、冒険者ギルドはこの大陸のみとなっております」


 なるほど。人はこの大陸にしか住んでいないのか。


 「他の大陸にはいったい何が?」

 「他の大陸は、この大陸、ユペス大陸の右上にはスカドリア大陸があり、そこにはおびただしい数のドラゴンが生息しております。左上のウィンダウ大陸にはキングウルフが、そして上のデムバグドラ大陸には魔族が住んでおります」


 あれ?魔族は違う大陸なのか?なら船で攻めて来るとか?どういうことなんだ?


 「魔族は別の大陸なのですね」

 「ええ、しかしユペス大陸とデムバグドラ大陸は繋がっておりまして、そこから近年魔族の侵入が増え、ユペスの一番上に位置しているエドワルド王国が危機に陥っております」


 なるほどね。それなら納得できるか。大陸については大体分かったな。ギルドの方へ話を戻そう。


 「話を戻しますが、ギルドではどのような事が可能ですか?」

 「ギルドではクエストの受注ができます。その他は、飲食と、身分証の発行くらいで御座います」


 キタっ!身分証。


 「身分証は、私でも発行してもらえますか?」

 「当然に御座います。その際刀冶殿のステータスも表示されますので、ぜひ参られてはと」


 ようし、これで俺の能力が分かる訳か。


 「分かりました。ありがとうございます。では、望みの方なんですが...。」

 「うむ」


 俺は最初から決めていたことがある。これをしなきゃ始まらない。この願い、なんとしても聞き入れてもらはねばならない。

 俺はゆっくりと深呼吸をし、国王に言った。


 「......私設の部隊を作りたいのですが」

 「私設の...」

 「部隊ですとな?」


 案の定、驚いてるな。まあここら辺は想定の範囲内だ。後はどう納得させるかなんだけど...。

 流石にこんなデカい規模の軍隊持ってて、これ以上部隊を作る、しかも私設となりゃ強い反対が予想できる。

 国王とアストルフさんは目を見合わせた後...。


 「面白いっ!」

 「名案に御座いますな」


 えっ?


 「いいんですか?」

 「無論だよ刀冶殿。お主には国から部隊を与えようをも思っていたくらいだ。私設に変わることぐらい、問題はないだろう」

 「そうですな、刀冶殿は既に魔族と戦うと公言して御座います。その部隊も魔族に対抗するための策なのでしょう?」

 

 んー。策と言われるとよく分からんな。俺が魔族との戦いの時に出来るだけ自由に動かしたいってのが本音だからな。ぶっちゃけ部隊を使って今後どうするとか具体的なことは何にも決めてないわけだし。

 ここはそう言う事にしておこう。


 「ええまあ、もしかしたら多少解釈の違いはあるとは思いますが、要はそう言う事です。俺は部隊を魔族との戦いの為に作りたいんです」

 「そうかそうか、よかろう。武田刀冶が私設部隊の発足、リッティア王国国王ガルフォン・リッティアが認めよう!!!これは大陸中に発信する!」

 「ありがとうございます!!!」


 よっしゃー!これで部隊が作れる。長いようでまだ全然経ってないんだよな。

 これからはどんどん忙しくなるな。えーと、冒険者ギルドに言って身分証登録するだろ?その後は部隊発足の為に資金集めるだろ?その後は隊員募集して運営して...。うわっ!すっげー大変だな。国王協力してくれるかな?してくれたら助かるんだが。


 「ついては刀冶殿。我が王国からも少ないながら資金の援助を致そう。おいっ!」


 国王が呼ぶと、傍からバカでかい袋が運ばれてきた。


 「これを使うと良い」

 「いいんですか?」

 「勿論」


 い、いくらくらい入ってるんだろ?そういえばお金の単位とか全然聞いてなかった。


 「ありがたく受け取らせて頂きます」

 「うむ、では刀冶殿の幸運を祈っているぞ」


 

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