表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/49

第8話 決意を胸に

矛盾なしでポンポン更新していく人ってホント凄いと思います……。尊敬してます……。

文法ダメで、文章構成のセンスもへったくれもない自分ですが、文章量だけは一丁前で、今一章4分の1くらいです……。お付き合いいただけますとこれに勝る幸せはないです!

 あれから大体三十分程度は歩いただろうか。クルスに言われた通り、月に向かってまっすぐ歩いて行くと森から出られ、すぐ目の前に街道らしき整備された道を発見した。


 どうにか遭難せずに済んだ事に安堵しつつ、僕はすっかり人通りのなくなった街道を道なりに歩き始めた。


 ふと思い立って、ポケットから携帯端末を取り出した。どうやらゼニアグラスに連れて来られるので着替えた時、いつものクセでポケットに入れてきてしまっていたらしい。今は充電は八割程だが、充電器を持ってきていない以上、使えるのはこの充電一回きりだろう。とはいえ、電波通らないこの世界でこの端末が役に立つ光景を想像できないわけだが。何か使い道は時計以外にないかと考えていたら、ふとあることを思いついた。


 「そうだ。今度クルスにこれを見せてあげよう」


 まだ会って間もないが、しかしそれでもクルスについてわかったことがある。見かけによらず、と言ってはちょっと失礼だが、好奇心が旺盛だという事だ。だから人とのコミュニケーションが取れないと分かった以上、時折盗賊らしき人間などが通ると、本を持っていたりする場合くすねてしまう事があるらしい。


 ただ、本人としては盗んでいるつもりは無く、借りている感覚らしいので、再び探しに来るほど大切な本であればこっそり返していたのだそうだ。その点に関しては好感が持てるが、やはり人の物をどのような形であれ勝手に持っていくのは色々と不味いので、そうならないよう、何か別の興味を引くものになればと、そういう意図もある。


 「って……僕、クルスの事ばっかり考えてるな」


 クルスに恋でもしたか? と自問をしてみたが、僕はノーマルだ。同性愛の趣味はない、と首を何度も振って否定する。そもそもクルスに性別なんてあるのだろうかと、そう言った疑問は全カットだ。

 

 だが、彼の事ばかり考えてしまうのは確かだ。僕に親身に接してくれる友達としてのクルス。僕の命を救ってくれた、恩人としてのクルス。二つの意味で、クルスは僕にとって既に大きな存在となっていた。だからだろうか。何か恩返しをしたい。そう自然に考えてしまっていたのは。


 恐らく彼は嫌がるか、拒否するかもしれない。けれど、それでは僕の気が収まらないし、何より、僕自身が『そう』したい――――。


 「それじゃあ、クルスに何をしてあげられるか、だけど……」


 僕に出来る事って、なんだろうか?僕には力がない。知識だって無いも同然だし、財力も権力も当然の如く持っていない。そんな僕が、クルスに一体どんなことをしてあげられるというのか。


 『オレ様、自分のこと何も覚えてねーぞ?』


 ふと、そんなクルスの言葉が再生される。

 クルス本人は気にしていないと言っていた。記憶が無いのは、元々持っていないのと同義だとも。だけど――――。


 「だけど、それでいいのかな……」


 そんなの、あんまりだ。もし親が居たとして、会えたとしても、親の顔を覚えていない。居たかもしれない大切な誰かを覚えていないなんて、辛すぎるじゃないか。


 だったら、僕のすべきこと……僕が彼にできることは――――。

 「カイトくん!!!!」

「えっ……あっ、はいっ!!??」


 集中しすぎていた頭を現実に引き戻してくれた、聞き覚えのある女性の声が鼓膜を盛大に震えさせると、僕の体がふわりと浮き上がり、物凄い勢いで周囲の景色が駆けて行った。


 「ゆ、ユーリさん!?」

「喋るな!! 出血が酷すぎる!! すまない、こんなことになるなんて……!!」

「お、落ち着いて下さい!! ほら、よく見て下さい!! 傷なんてありませんよ!!」

「な、何……!?」


 その超高速を出していた体を急停止させようと、靴を地面に密着させてブレーキを掛ける。凄まじい砂煙を上げながら、十メートル程行った先でようやく彼女の体は止まった。


 「失礼するよ!!」

「ふぇっ!? あっ……ちょっ……ひんっ!!」


 ユーリさんは素早く、しかし僕の体に一切の痛みが走らないようにそっと地面に置くと、ちょうど血まみれの服に銃で開けられた穴が開いている箇所を、服を捲り上げて手のひらを滑らせて確認する。


 女性特有のやわらかく、すべすべとした肌の感触が腹部を走りぬけ、僕はなんとも言えないむず痒さを覚えて紅潮してしまう。


 「ほ、本当だ……。しかし、何故……?」

「あー、いやえっと……。そ、そう!! ちょうど通りかかった冒険者の人が助けてくれたんですよ!!」

「…………そう、か。カイトくん」

「は、はい!!」


 急に今まで聞いたこともないような厳かさを帯びた低めの声を放つユーリさんに、一瞬で気を引き締められた僕は咄嗟に強張った返事をしてしまう。やはり、怒られるのだろうか。そんな事を覚悟していたが、しかし次にやってきたのは僕を叱責する声等ではなく柔らかな感触だった。


 「え!? あああのあのユーリさん!!??」


 たった今気づいたが、ユーリさんは今現在昨日装備していた胸当てを装備していない。そんな状態で僕を抱きしめてくれるものだから、僕の胸に母なる感触が押し当てられる。その温かさと柔らかさに、僕は安心感を得るどころか正気を失いそうになっていた。けれど、そんな僕の下衆な感情は、ユーリさんに耳打ちされた一言で霧消することとなった。


 「よかった。無事で。本当に……よかった」


 きゅう、と腕に込める力を強めるユーリさん。その声は、心なしか震えており、真に僕を心配してくれていた事を伺わせた。その事実に僕は申し訳無さで胸がいっぱいになり、ただ謝ることしか出来なかった。


 「ごめんなさいユーリさん……。ご心配をお掛けしました……」

「謝ることなど何もないさ……。キミが無事で、本当に良かった……」


 その優しさを、僕は嬉しく思いながらも、心の片隅でふと疑問に思っていた。


 ――何故この人はこんなに心配してくれたのだろう?


 会って間もないこの僕を心配してくれる、その理由が気になって仕方がない。だって僕には、今のこの人は盗賊達を一掃した強者ではなく、今にも崩れてしまいそうな危うさを秘めた女の人にしか見えなかったから。


 「けれど、メリゼをあまり責めないでやってほしい。彼女にも、少し事情があるんだ」

「あ、あはは。気にしてませんよ。間違ったことなんて言ってませんでしたし」


 そう、間違ったことはメリゼさんは何一つ言っていない。実際、僕は他の誰より劣る人間の劣等生だ。そんな僕がゼニアグラスが選んだって理由だけで英雄としての素質があるなどと、笑い話もいいところだ。


 「ユーリさん」


 だけど、それでも僕は決めたんだ――――。


 「うん? 何だい?」

「お願いしたいことがあります」


 僕の友だちになってくれた、彼に報いるために、僕にできる精一杯をしようって。



 「僕に、冒険者を教えて下さい」




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!!

とりあえず、主人公が冒険者になるための動機ができました。

今日はこのくらいにして、残りは明日中に、一章までは上げてしまいたいと思います!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ