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第4話 ギルド

また一人女の子が出てきます!

区切り良くしたいので気持ち短めにしてみました

 ユーリさんが確保した盗賊の身柄を軍人と思しき鎧を纏った人物に受け渡し、僕は本格的にユーリさんに王都を案内してもらいながら上京してきた田舎者よろしくキョロキョロと忙しなく色々なものに眼を向けていた。


 「今歩いているのは大通り。余程のことがない限り、ほとんどの用はこの通り沿いにある店で事足りる」

「へぇ……。凄い活気ですね……」


 僕は嘆息し、周囲のものに目を引かれながら歩いていると、周囲の人々も僕達、というより僕に中止しているのに気付いた。やはり、見慣れない格好をしているから、浮いているのだろう。僕は視線から逃げるように、顔を赤くして縮こまるように俯いた。


 「はは、そうだな。ファズグランは別名『冒険者の街』とも言われていてね。冒険者がよく流れたり、去ったりする事からも開放的な国で、外部からの人の流れも盛んなんだ」

「そうなんですか……。でも、どうして冒険者の街なんて言われるんですか?」

「ふむ、いい質問だね。そうだな、歴史的に言えば、ここが『冒険者』という職種の始まりだからであり、ここに冒険者が冒険者であるために必要な施設、『ギルド』の本部があるから、とも言えるな。さて、ここまではいいかな?」

「? は、はい」

「よし、では行くぞ」

「はい? い、行くって何処へ……」


 当惑する僕に、ユーリさんは僕の方を向いて、力強く笑いかけた。更にはぎゅっと、僕の肩に腕を回される。白く、細い腕だが、何処にそんな力があるのか、僕が動こうとしてもびくともしなかった。


 「勿論、そのギルドがある場所だ。キミだって、『英雄候補』として召喚された以上、冒険者になるつもりなんだろう?」

「え、い、いや待ってくださいよ。今までの流れで僕が冒険者になりたいなんて流れになりましたっけ……?」

「ははは。恥ずかしがる必要はない。誰にだって初めてはあるんだ」

「なんか誤解されそうなこと言わないでください!! そうじゃなくて急すぎ……あっ、待って……心の準備がぁぁぁ!!!!」


 僕の叫びも虚しく、僕はユーリさんに連行されていった。ずるずると、それはもうみっともないことこの上なく。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 引きずられていき、噴水のある広場にたどり着いた僕らは、ようやくユーリさんに解放してもらい、観念して彼女の後ろをひたすらついていくことにした。


 正直なところ、冒険者と言われても実感がわかないし、僕なんかがなれるのだろうかと、不安もある。けれど、確かにそれが良手だろうとは僕も思っていた。ゼニアグラスからは特に何かしろと言われてはいない。逆を言えば、僕はまず何からすればいいのかわからないということだ。


 ならば、常道としてはこういった冒険者のような職業の人間になり、色々なものに触れる機会を少しでも増やすべきだ。僕はそれが最善だからと、若干自棄になりながらそう考えていた。


 僕は噴水広場の中の細道をユーリさんに連れられて歩いて行く。まだ太陽は高いところにあるが、道の狭さから陽光があまり入らず、薄暗い通りは若干の恐怖さえ感じる。


 やがて歩いて行くと、細道の先が開け、T字路のような空間が出来、その先に大きな建物があることに気づく。建物は二階建てのようだが、ウェスタン風な木造で、まるでその通りだと言わんばかりに扉はスイングドアとなっている。


 そして、そのドアの右上方向に目をやると、まず目に止まったのが交差された旗と、それに被さるようにして描かれている翼の意匠。そしてそのすぐ近くにある看板に、見慣れない文字が掘られている事がわかる。


 この世界の言葉だからわからない、と思っていた矢先、僕の視界に再びポップアップウィンドウのような窓が出現し、その文字が『ギルド:はじまりの酒場』と書かれているということを知らせてくれた。


 これがゼニアグラスのくれたアビリティとはこれのことだろうか。つまり、彼女がくれたアビリティは、まだまだ分からないがこの世界の文字やアイテムの効果と使い方がわかるようになる、そういう代物なのだろうか。


 だとしたら、かなり有用なアビリティを貰ったことになる。僕は先程地味なアビリティと言ってしまったことをゼニアグラスに詫びると同時に、深く感謝していた。


 ユーリさんは迷わず酒場に続く階段に足を掛け、僕も離れないように付いて行く。


 「邪魔をするぞ」

「お、おじゃましま~……」

「おっっねぇさまぁ~~!!!!」


 ユーリさんが扉を開けると、僕の声を遮るように、甲高い女性の声が鳴り響き、ユーリさんに抱きついている一人の女性の姿が目に映った。


 ユーリさんに半ばぶら下がるような形で抱きついているから、身長は僕よりも更に少し低いくらいだろうか。清涼感のある明るい緑色のショートヘアと、赤を基調としたメイド服を連想させるエプロン付きのドレスを身にまとい、その頭にはフリルが着けられていた。


 メイドさんだろうか? 生メイドさんかぁ……。うん、やっぱりいいよなメイドさん。


 そんなくだらないことを考えながら、僕は事の成り行きを見守ることにした。女の子二人が仲睦まじく抱き合っている。男としてこれを邪魔するわけには行かないのだ。断じてだ。


 「お姉さま、お帰りなさいませ!! どこかお怪我はありませんか!? お疲れでしたらお飲み物の一つでもすぐにご用意いたしますが!?」

「あぁ、ただいまメリゼ。大丈夫、どこも怪我はしていないし、今のところ喉も乾いていないが、折角なので何か適当な飲み物を二つ貰おうか。それより、少し頼みたくてな」

「はぁい♪ お姉様の言葉とあらばこのメリゼ、何でもいたしま……あ?」


 不意に、主人の帰りを待ち侘びていた犬のような反応を示す少女と目があった。途端に、それまで愛玩対象の犬の眼をしていた少女は、獲物を噛み殺さんとする狼のそれに変貌した。


 「ひっ……!?」

「……お姉様、このトンチキな格好をした見窄らしい男は誰ですか? あ、今日のお仕事の盗賊に捕らえられていた奴隷被害の方ですか? んもうお姉様ったら、そういうのは『ギルド』の、しかも支部ではなく軍の方に通して頂けなければ困りますよぉ。 仕方ありませんからこちらで手続きを済ませておきますね」

「こーら。あまり失礼なことを言うな。彼は今日のお前の『客』だぞ?」

「客って……まさか……」

「そうだ。ゼニアグラス様に選ばれた『英雄候補』だ」


 ユーリさんにそう言われて、メリゼ、と呼ばれた少女は、今度は明確な敵意を込めた視線を、僕を噛み殺さんと向けてきた。再度短く悲鳴を上げる僕を他所に、メリゼさんは訴えかけるようにユーリさんを見上げる。


 「お姉様!! 私は……!!」

「お前の言いたいことも、気持ちもわかるが、だがゼニアグラス様がお連れになった少年だ。それに、冒険者になりたいという意志を無下にすることは、ギルドに属するお前には特にできない。違うか?」

「それは……ですが……」

「とりあえず今は『視る』だけ頼む。メリゼ。それから先は、暫く私が面倒を見るから」

「~~~~!! お姉様のわからず屋……」

「はは、すまないな」


 落ち込む少女の肩に手を乗せ、申し訳無さそうに微笑みかけるユーリさん。やがて僕にはあずかり知らない何かを割り切ったのか、落ち込んでいた女性、メリゼさんは僕を睨みつけると声を荒げた。


 「ちょっと!! そこの童貞顔!!」

「はいぃっ!! って、えぇ!? 童貞顔!?」

「必要なこと以外話さないで下さい!! ほら、とっとと付いてきて下さい!!」


 吐き捨てるようにそれだけ言うと、肩を怒らせてカウンターの奥へと入っていってしまった。


 僕は不安になり、ユーリさんの方を見やる。ユーリさんは僅かに苦笑しながら小さく手を振った。


 「悪いようにはならないだろうさ」


 僕はこの日、捨てられた犬がどういう心境になるのか、初めて知ることになった。


読んでいただきましてありがとうございます!!

もうちょっと間の取り方というか過程を工夫したほうが良さそうですね……。

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