第17話 クエスト再び
微戦闘シーン、といいますかちょっとだけグロ描写入りました。
といっても、そこまでえげつない感じではないので、一応気に留める程度でお願いします。
翌朝、僕とユーリさん、そしてこの街にいる全ての冒険者が再びギルドに一堂に会していた。理由は単純。昨日に引き続き、今日もまた多数の魔種の群れがファズグランを目指しているという報告が軍から出されたからだった。
軍の仕事は、あくまで国家間に対してか、あるいは治安を維持するために存在している組織だ。必要とあれば彼らも魔種の討伐に赴きもするが、原則として王城のあるこの街を離れる訳にはいかない、という体裁を取っている。その為、有事の際の『協力者』として、この国は冒険者に対して非常に協力的なのだと、確かユーリさんが言っていた。
そんなわけで、今日も僕達は前線に駆り出されることになるわけである。ただ、流石に二度までも魔種の群れが出現したとあって、冒険者達の顔にも少なからず動揺の色が見て取れた。
「皆さん、疑問や不安は分かりますが、しかし現実に起こってしまったことは起こってしまったことなんです。まずはこの件を片付けることだけに集中して下さい」
メリゼさんの一言に、冒険者達の表情が引き締まる。なるほど、伊達にこの若さでギルドの総本山のお膝元を任されているわけではないようだ。僕は改めて、メリゼさんがこの街の直接的なギルド職員を任されているのかを理解した。
「と言っても、出現した魔種の殆どは先日と同じ種類です。昨日も大した損害もなく撃退できたみなさんであれば今回も難なく退けられるでしょう。ですが、二つ問題が発生していることが判明しました」
メリゼさんはカウンターテーブルの上に地図を広げた。僕とユーリさんは少し離れたところでメリゼさんの声を聞いているので、何が行われているかは分からないが、ユーリさんがいるのでそこは問題無いだろう。
「まず一つは、先日と同じく南部から大量の魔種の群れが王都へ向けて進行しているとのことでしたが、今現在判明しているだけでも魔種の総数が先日の四割から五割増し、という報告がされています。質に関して言えば先日と同等程度なので、問題ないとは思いますが、かなりの人手を要すること、危険性も昨日より高いことは自明です。ですがここで二つ目。更に悪いことに、ファズグラン北東に流れるバローレ川。この川沿いを、ミノタウロスの群れが南下中との報告がありました。平均推定レベルは三百前後との報告もされています」
その一言に、冒険者達は色めき立つ。僕の隣に佇むユーリさんでさえ、僅かにその眉を動じさせた。
「三百前後だと?」
「ってか何でこの辺りでミノタウロスが?」
そんな声が上がってくる。僕がユーリさんを見上げると、僕の疑問を察したようにユーリさんが口を開いた。
「原則として、人類が魔種に『安全に勝利』できるレベル差はどれほどだったか覚えているか?」
「はい……確か、最低でも百って……」
「そうだ。魔種は人類に比べて知性や技術を持たない傾向にある代わりに、ステータス値が人類に比べて高いからな。そして当然、数が増えれば増えるほど、必要となるレベル差は大きくなるし、個体によっても必要なレベル差は変わってくる」
「まさか……」
「そう。そのまさかだ。この街にいる冒険者の殆どがレベル二百から三百程度。彼らをミノタウロスにぶつければ、よくて八割の損害、最悪の場合は全滅さえありうる」
ユーリさんの言葉に、背筋が寒くなる。死人が出る。その一言に、僕は今になって、僕が不安定な足場の上で立っている事に気付かされる。今まで気付かなかっただけで、死の恐怖はすぐ側にいることを認識してしまった恐怖に、身体が震える。
けれど、震える肩に触れた温かさと、ユーリさんの柔和だが、同時に力強い微笑みに、少しだけ恐怖が和らぐ。
「大丈夫さ。キミは私が守るから」
心強い言葉。そうだ。ユーリさんが居てくれるならば、きっと大丈夫だ。死ぬのは怖い。だから魔種と対峙するのも怖い。けれど、大切な誰かが死ぬのは『死ぬより怖い』。怖くてもいいから、せめて足は動くように、震えを抑えろ真月介斗。ユーリさんの側に立てるように、彼女の役に立てるように、最善を尽くす為に。
「つまりよ、メリゼちゃん。南には人手を、北には実力者を割かなきゃならんってことだな?」
カウンター席付近に陣取る、バルザさんが言った。メリゼさんは小さく頷き、そしてユーリさんの方に視線を向ける。
「お姉様。お願いできませんか?」
「無論だ。私が行くのが適任だろう。だが、数はどうなっている?」
「報告では、五体程度と……」
「ふむ。少し厳しいな」
厳しい、というのは、恐らく僕を守りながら戦うことを勘定に入れているからだろう。それなら、いっそこの場に僕が残ればいいのではないか? それが最適解であることは僕自身が一番良くわかっている。わかっているが、ユーリさん一人をそんなところへ行かせられるわけがない。
ユーリさんならまず負けはしない。だがもし、万が一があれば? 自惚れもいいところだが、僕はユーリさんが心配だった。そんなことを考えていた矢先、見覚えのある大男が今になってギルドに姿を表した。
「んなら、俺らのパーティーと一時的に組めばいい」
「……また随分と遅い登場ですね。一体何をしてらしたんですかディムシーさん?」
ディムシーさんはわざとらしく大あくびを掻きながら、興味が無さそうにメリゼさんの視線を流す。
「寝坊だよ寝坊。昨夜はかなり張り切っちまってなぁ? 聞きてぇんなら詳しく話してやるぜぇ? お嬢ちゃん」
「お断りします。それで、先程の話はどういうことですか?」
メリゼさんはあからさまに懐疑的な視線を向け、ディムシーさんに探りをかけようとする。しかし当のディムシーさんはヘラヘラと笑いながら、小馬鹿にしたようにメリゼさんの問いかけに答えた。
「んな難しい話をした覚えは無いがな。なぁに、人手が足りんなら、俺も出向いてやるって言ってるだけよ。この街のツートップが組むんだ。戦力的にゃあ問題ねぇだろ?」
「貴方がそんな殊勝な選択ができる方とは思いませんでしたよ」
「もちろんタダで、ってんじゃねぇぜ? 報酬は歩合制だろ? なら、一つはミノタウロス一体毎の報酬を倍額に引き上げること。もう一つはユーリ、テメェとの分前を七対三にするこった。あぁ、もちろん七は俺らだぜぇ? ガハハハハ!!」
品のない大笑が酒場に響く。その空気を読まない傍若無人っぷりに、メリゼさんも、冒険者達も顔を顰めた。そこで、ディムシーさんはわざとらしく、思い出したように指を一本立ててユーリさんの方を見た。
「あぁ、昨日の宝珠、譲ってくれるってんなら、前の条件はチャラでいいぜ? 釣りが来るぐらいだしなぁ?」
ニヤニヤと、仲間と共に嫌な薄笑いを浮かべるディムシー。しかしユーリさん下らない、と一蹴するように目を伏せ、口を開いた。
「いいだろう。ただし、飲む場合は前者での条件になるがな。報酬の方は私は通常分でいいとして、メリゼ。報酬は大丈夫か?」
「は、はい……そちらに関してはなんとかしてみせます……けれど……」
「くははは!! 無欲なこったなぁ『青狼』? 流石は『英雄候補」に選ばれるだけの事はあるってか。いや、今は選ばれた、って言ったほうがいいかぁ? 『味方殺し』ぃ?」
「え……?」
その言葉に釣られて、僕は思わずユーリさんの顔を見てしまう。何の感情もない表情。喜怒哀楽も、全てを押し殺した完全な無表情。そこに触れるなと言わんばかりに、渦巻く感情全てに蓋をした。そんな表情を、ユーリさんは浮かべていた。
「その辺りにしておいてくれよディムシー。私とて聖人ではない。守銭奴のお前が、金にありつく前に首を落とされるなど、想像したくもないだろう? 私も、本当に『味方殺し』などしたくはない」
「お~こえぇこえぇ。わかったよ悪かった。一先ずの協力体制だ。お互い仲良くやんねぇとな? んじゃ、半刻後に北門で落ち合おうぜ。俺達にもちょいと準備があるんでな」
言いたいだけ言って、ディムシーさんは仲間を引き連れて外へ出て行った。酒場に静けさが戻り、パン、というメリゼさんの乾いた拍手に、呆気にとられていた冒険者達も、それで我に返った。
「そういうことです皆さん。ミノタウロスに関してはお姉様とディムシーさんが対処してくれます。皆さんは全力で南部の対処に当たって下さい」
必要なことは聞くだけ聞いたと、冒険者達は言葉少なに続々と酒場を後にする。
後に残されたのは、僕とユーリさんと、メリゼさんだけ。見れば、無表情ではあるものの、ユーリさんの手は強く強く握られており、完全に閉じきって尚その手に力が込められ、手がブルブルと震えていた。僕はその手を咄嗟に包み込むように握り、ユーリさんに声を掛けた。
「あの、ユーリさん、大丈夫ですか……?」
「……!! あっ、あぁ……大丈夫だ。すまない」
心なしかその顔色を青くしながら、ユーリさんはそう答えた。やがて、ユーリさんは寂しげな微笑と共に、僕の手をそっと握り返してくる。細くなめらかで、柔らかな感触が手を通して伝わってくる。
「キミの手は、温かいな」
僕にもよく聞き取れない声で囁くと、ユーリさんは離れていってしまった。
「すまないな。少しだけ歩いてくるよ。すぐに戻る」
そう言って、ユーリさんも酒場を後にしてしまった。僕は気まずそうな顔をしているメリゼさんに近付き、彼女に尋ねた。
「あの、ユーリさんが『英雄候補』って……」
「……えぇ。かつてはお姉様も、ゼニアグラス様に選ばれた候補者だったんです……。私がここに来る前の事だったので、詳しくは知りませんが、昔は現在と違ってパーティーも組んでいたそうです」
「組んでいた? そういえば、今は、どうなんです?」
メリゼさんの言葉の意味が気になり、思わず尋ねてしまった僕。そういえば、色々な冒険者達と親しくしてはいたが、特定の冒険者と仲睦まじげに話していたことなど、バルザさんくらいしか思い当たらなかった。
そして、メリゼさんの答えを聞いて、訊かなければよかったと、後になって後悔した。そこで待っていたのは、最悪の答えだったから。
「全員……、死亡したと聞いています」
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その後、ユーリさんと合流してからディムシーさん達と合流し、門を出て北上、ミノタウロスの群れの目撃情報があった川、その崖沿いを僕達は進んでいた。最前列にユーリさんと僕、中間にディムシー、最後尾をその仲間たちが堅め、その内の一人がミノタウロスの群れを探すため、常に崖の淵に沿って並行していた。
全員で確認したほうがいい、とのユーリさんの提案は却下された。崖沿いは思いの外足場が悪く、下手をすれば崩れかねない。加えてミノタウロスの視力は取り立てて優れているわけではないにせよ、中々に侮れないということも学んでいる。従ってこちらが発見され、不意を打てなくなるというリスクを極力避けるために、身軽かつ隠密系のスキルに特化したディムシーさんの仲間のシーフがミノタウロス発見のための偵察の役割を担っていた。
街を出てからもう一時間は進んだだろうか。僕達即席パーティーの間には会話はほぼ無く、言葉で言い表せない妙な沈黙が場を支配していた。しかし、それとは別に僕自身もユーリさんに対して話しかけることが出来ずにいた。『元英雄候補』、『以前組んでいたパーティーが全員死亡』、『味方殺し』、今まで聞いたこともなかった、僕の知らなかったユーリさんの顔。
もちろん、ユーリさんが仲間を殺すような真似をするはずがない。その点に関しては一点の曇りなく信じている。けれど、先ほど聞いたユーリさんに関わる言葉の数々に、何故か引っかかりを覚えてしまう。上手く言葉で表現できない感情が渦を巻き、胸の奥がざわついて落ち着かない。
不信感や猜疑心、そうしたものとはまた別種の、モヤのような感覚。その中心であるユーリさんに声を掛けられないものだから、それらは一層影を増し、完全に悪循環に陥っていた。
「カイトくん、どうした? 顔色が優れないが…」
そんな事を考えていると、絶妙なタイミングでユーリさんが僕に尋ねてくる。ずい、と顔を無防備に近付けて来るもので、僕は慌てて首を振った。
「い、いえ!! 何でもないです!! 大丈夫ですはい!!」
「む。しかし顔色が優れないようだが……。少し休憩を挟もうか?」
「ほ、ホントに大丈夫なんです!! それに、休んでもいられないですし、ね!?」
「むむ」
キミの意見ももっともだな、と言わんばかりに僅かに顔をしかめるユーリさん。やっぱりユーリさんは優しい人だ。こんな人が誰かを、まして仲間を殺すなんて――――。
「ハッ。お優しいなぁ『青狼』さんよ?」
そんなユーリさんの優しさを、茶番だと鼻で笑うディムシー。しかしユーリさんは大して気分を害した風でもなく、しれっとした態度でそれに応じる。
「何、カイト君はまだ冒険者としても日が浅いし、最近は睡眠時間を削ってさえいるしな。どこかの見かけや口だけは達者な男とは違って繊細なんだよ。彼は」
「んなもん貧弱なテメェの自己責任だろうが。それによぉ、聞いたぜ? その小僧、もうレベル上限に達してんだろ? なんだっけ? レベル、十だっけか?」
明らかに悪意の篭った最後の一言に、後ろの手下達も噴き出している。僕自身は事実として受け止めているからいいとしても、やはりそんな僕の面倒を見てくれているユーリさんまで馬鹿にされているようで申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「何が言いたい?」
僅かではあるが、明らかに怒気を含んだユーリさんの声を、しかしディムシーさんは不遜な態度を崩さず尚も続ける。
「いやぁ、ただ、いつものテメェにしちゃあ入り込み過ぎじゃあねぇか? テメェ、よく他の『英雄候補』が連れてこられるとそいつらの面倒見てるよなぁ? だがンなこたどうだっていいんだ。頼まれてもねぇ事を買って出て、レベル上げまで手伝ってやったってんなら、もうテメェの役目は終わりだろ? いつまでそいつを抱えてるつもりだ?」
「冒険者として必要なことがレベルだけと考えている当り、やはり脳味噌まで筋肉で出来ているとしか思えんな。代わりにミノタウロスのワタでも詰めてみたらどうだ?」
「……気付いてねぇにせよ、言いたくねぇにせよ、そんなに嫌だってんなら俺が言ってやろうか?」
ディムシーさんはニタリと下卑た含み笑いを浮かべると、わざと視線を明後日の方へ向けて言い放った。
「そのガキ、似てるよなぁ……? テメェんとこのおっ死んだ剣士の小僧によぉ?」
「――――」
ディムシーの放ったそれは間違いなく『地雷』だった。その証拠にユーリさんから表情が消え、その手はだらんと下げられる。しかし、そんなことは大した問題にはない。たった二メートル前後の距離で、加えて障害物は何もない。ユーリさんの剣の腕とスピードならば、尚も芝居がかった語りを止めようとしないディムシーの首を落とすのに一秒も掛からないという事実があるだけだ。
「まさかとは思うけどよ。お前そのガキをあの死んだガキに重ねて、罪滅ぼしでもしようってんじゃねぇよな? バァーカ。テメェがやったことは絶対に消えやしねぇよ。連中も、剣士のガキも、あの世でお前の事恨んでるだろうなぁ?」
――――ざわり。
首筋に何か冷たい、得体のしれない物が這いずったような感覚。その横顔から窺い知れるユーリさんの表情は、氷柱のように冷たいままだというのに、噴火寸前の火山を想起させる程の『敵意』という熱を孕んでいる。僕には窺い知れないが、ディムシーさんはともかく、その後ろの手下二人は明らかに怯えている。一応は『仕掛けてしまった側』であるにも関わらず、だ。
一触即発? それどころの話ではない。吐息を吹きかけた程度であっても、余計な刺激を与えようものならば、即座にこの場が滅茶苦茶になる。そう確信させるに足るだけの実力がユーリさんにはあることも、ここがすぐにでも爆心地に早変わりしうるという事を、その場の全員が理解していた。
だがそれでも、不敵な笑みを絶やさず浮かべるディムシーに、僕は若干の違和感を覚える。一体何故、ユーリさんを前にしてここまで余裕でいられるのかと。戦いになれば、この二人の間でユーリさんに負けはない。そんなことは、僕のような素人目からしても歴然だというのに――――。
「アニキ」
だが、僕の違和感と、その張り詰めた空気は、その場に居あわせていなかった第三者の、シーフの彼の声によって一瞬にして切り替えられる事となる。
「見つかったか?」
「おうよ。前方百メートルってトコだ。ちょうどいい感じの反りもある。奇襲には持って来いだと思うぜ」
斥候に向かっていた仲間のシーフが淡々と状況を説明する。それを聞いたディムシーさんは相変わらず口端を釣り上げたまま首だけ傾けてユーリさんに告げた。
「つーわけだ。お互いガキじゃねぇ。仕事が終わるまではこの話はとっとくことにしようや」
それだけ言うと、ずかずかとその巨体を愉快げに揺らして仲間のシーフの後を追うディムシー。その背中をしばらく見つめた後、僕はやや放心気味のユーリさんに呼び掛けた。
「ユーリさん……? ユーリさん!」
「……っ!! あ、あぁ、すまないカイトくん。どうかしたかな?」
それはこっちのセリフです、と言いたくもあったが、ユーリさんほどの人が、取り乱している。それだけで、ただ事ではない何かがある事は発覚した。
けれど、何があったのか、などという言葉は口に出せなかった。口に出したからって、僕に何か出来るのだろうか。そう考えると、言葉が詰まり、ただただこの人を見つめることしか出来ずにいる僕がいる。全くもって、情けない。
「ぁー…はは。心配を掛けてしまったな。うん、すまない。大丈夫だよ。さぁ行こう」
誤魔化すように僕の頭をくしゃりと撫でるユーリさんの手。僕はなんだかその手に込められている力が弱々しく、前を歩くユーリさんの背中が、いつもより一回りは小さく見えてしまっていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
僕らはシーフの彼に案内されて、下方からの目線に対して身を隠すには適しているといえる、やや土のめくれ上がった崖に案内され、身を伏せて迫ってくるミノタウロスを目視で確認した。前方約五十メートル程度まで迫っていたそれらの数は五体。数の上でこちらと互角であるとはいえ、ミノタウロスはこの近辺では一体一体の個体レベルが平均的に高めで、実質まともに戦えるのはユーリさんとディムシーさんの二人だけだ。
戦力比二対五、ディムシーさんの実力は未だ不明だが、ユーリさんから『ナンバー2』と呼ばれるほどだ。相当な実力者なのだろう。だがいくら二人が強いとはいえ、正面切って戦う事は賢い選択とはいえない戦力比だ。幸いなのは、こちらはまだ気付かれていないということ。これを活かさない手は無いだろう。しかし――――。
「ユーリさん……」
「ん……?」
僕はユーリさんだけに聞こえるように、小さく耳打ちをする。
「彼らは……殺さないとダメですか……?」
「……キミは……」
ユーリさんは呆れと怒りが僅かに混じった声を上げる。わかっている。自分がどれだけ馬鹿で自分勝手なことを言っているかなんて。でも、できれば殺さずに解決したい。その考えを変えることはどうしても僕には出来ない。僕が付いて来たのは、その為でもあるのだ。全ての魔種を、とは言わない。けれど、せめて可能性がある魔種に関しては、できれば諦めたくはない、と。
「……また何か聞こえのか?」
それでもユーリさんは最大限僕の考えを尊重してくれようと言うのか、わざわざそんなことを訊ねてくれた。しかし、ミノタウロスたちからは何の声も聞こえない。距離が遠いからなのか、単に話していないだけなのか、それともミノタウロスの声は聞こえないアビリティだったのか。ともかく、そう口走っておきながら僕はユーリさんの好意を活かす事ができず、沈んだ声を漏らす事しか出来なかった。
「……いえ」
「……ならばよく聞けカイトくん。キミのアビリティがどういうものなのかはまだ判明していない。となれば賭けとなる要素が必然大きくなる。そうなれば、私達だけでなく奴らにも危険が及ぶことになる。私個人としては別に構わんが、あれでもファズグランには欠かせない存在だ。そうでなくとも、我々冒険者は生きて帰れてようやく一人前なんだ。可能性はいついかなる時も捨ててはいけないが、その可能性で誰かを死なせたり、それ自体に殺されるようなことは避けるべきなんだ。いいね?」
「……はい」
「よろしい」
それだけ言って、ユーリさんは再びミノタウロス達に目を向けた。弱ければ何も出来はしない。けれど、出来ることが無くなるわけではない。自分にできる最善が変わるだけのことだ。ミノタウロスを退治するという目的である以上、僕の尽くすべき最善は皆が生きて帰れるようにサポートをすることだ。
それに、ユーリさんの言っていることは何もかも正しい。そもそも意志の疎通ができるかどうかもわからず、出来たとしても説得できるかどうかもわからない、不確定要素ばかりの助けられるかもしれない赤の他人と、同じ人類で、お世話にもなった恩人。どちらの命を取るかなど、納得はできかねても答えは明白だ。
僕は気を引き締め直す。これから先起こることを、可能な限り見逃すまいと、目を見張る。その隣で、ユーリさんとディムシーが小声で何やら段取りを決めていた。
「それで、どう行くんだ?」
「まず数を減らす。少なくとも2、3体。上手くいきゃ全滅する。残りを俺とテメェで狩り尽くす。そんだけだ」
「私はその手段について聞いているのだが?」
ユーリさんが尋ねると、ディムシーはまたもニタリ、と不吉な笑みを浮かべる。何事かを企んでいるような、昏い笑みを。
「まぁ見てろって」
言いながらディムシーはポーチを弄りだし、そして何かを取り出した。
それは球状の『何か』。一見して水晶に見えるが、何より異彩を放っているのはその内部で蠢く青とも黒とも言い難い色の暗雲のような靄。ミノタウロス達を注視していた僕は『それ』を確認するのが一歩遅れ――――。
それを見た瞬間に、全身の汗腺がこじ開けられるような、今まで感じたことのない凄絶な悪寒が波濤となって僕を飲み込んだ。
ちょっと待て、何だ『アレ』は? 知らない、知らない知らない知らない。あんなもの、僕も『全統神の知慧』も誰も知らない。『知ってちゃいけない』。
それは完全な『無』。水晶の中に閉じ込められた出口のない『孔』。『全統神の知慧』がオーバーヒートを起こしているのか、それらを『知ろう』と、脳が過剰に働き始める。視界がパチパチとスパークを起こし始める。
そんなものをミノタウロス達にぶつけようと言うのか、ディムシーさんはそれを振りかぶり、ミノタウロス達が自分たちの直下に来るその瞬間を今か今かと待ちわびている。
だが、それを見た僕は、言葉より先に、眩む視界の中体が動いてしまっていた。
「なっ!? カイトくん!?」
「……あぁ?」
振りかぶられたディムシーさんの腕に僕がぶら下がるように捕まり、不快そうに歪んだディムシーさんの目がこちらへ向けられる。だが、殺されると思う恐怖より、それを投げられてしまうことのほうが、余程『恐ろしいことになる』と感じてしまった。僕は彼の腕にぶら下がったまま、必死に説得を試みる。
「ま、待ってくださいディムシーさん!! それはダメです!! なんだかわからないけど、それだけは絶対にダメです!!」
「――――」
その時だった。ディムシーさんと僕の目が遭った瞬間、ディムシーさんからあらゆる感情が窺い知れないほどの完璧な無表情が形成され、またも先程のように背筋に冷たい何かが走ったのを感じる。そう、先ほどと同じように――――。
――――『死ぬかもしれない』という予感と共に。
「ディムシー、さん……?」
「……あぁ、そうかい。こいつは投げ落としちまっちゃあ不味いってか」
「そ、そうです!! だから」
「――――あぁ、だったら」
ディムシーさんはゆっくりと振りかぶった腕をおろし始め、僕が安堵の息を漏らそうとした、瞬間――――。
「好都合だわな」
僕の体は断崖から先を舞っていた。
「っ!! カイトくん!!」
その様を見て、間髪入れずユーリさんが僕目掛けて跳躍する。助走無しで、弾丸さながらの初速とともに真っ直ぐに僕目掛けて飛んで来る様は、もはや跳躍ではなく砲撃と言い換えてしまってもいいだろう。
事も無げに僕の体を捉えると、ユーリさんは間髪入れず風の補助魔法、『エアリアル』を展開し、僕らの落下スピードを大幅に下げた。
「平気か!?」
「は、はい。ありがとうございます……! って、それどころじゃないんです!!」
しかしそう喚き散らすも後の祭り。次に僕の耳朶を揺らしたのは疑惑に揺れるユーリさんの声ではなくガラスが割れた時のような甲高い音だった。
――――下を見やれば、そこに広がっていたのは異様と言う他無い地獄絵図だった。
まず割れた水晶からは内部でとぐろを撒いていた青黒い靄が溢れだし、怪しげに蠢きながらその体積を徐々に増していく。それが僕の目に映った瞬間、この世の『絶望』という物が可視化されたらきっとあんな外見をしているのだろうと無慈悲なほど生々しい想像を掻き立てられた。
やがて靄の膨張が止まったかと思ったのもつかの間、その靄は、次は目と鼻の先で狼狽えるように後退るミノタウロスを標的として、その体内へ『侵入』していった。
ヴモォォォォォン、と苦悶の絶叫を上げるミノタウロスにはお構いなしに、口はもちろん、目、耳、鼻、頭部に存在するあらゆる侵入口から、対象の限界など知ったことではないと、侵入していく靄。
そして全ての靄が侵入すると、力が抜けたように項垂れるミノタウロス。やはり同族であるためか、一体のミノタウロスが恐る恐る項垂れるミノタウロスに近付く。一歩、また一歩と。
「……えっ?」
そして、僕は聞いてしまった。『聞こえてしまった』。黒い靄を飲み込んだ、いや、『飲み込まれてしまった』ミノタウロスの声を。
『殺す』――――と。
「ダメだ……、逃げてぇっ!!!!!!!!」
だから、そう叫んでしまったのはほとんど反射的だった。そしてその言葉は、傍らにいるユーリさんに対してでも、その様子を恍惚としてさえいる表情で観察しているディムシーさんに対してでもなく、『彼ら』に向けたものだった。
だが、もう遅かった。僕の声はミノタウロス達には届かず、仮に届いていたとしても、『それ』を躱すことなど、彼らには不可能だっただろうから。
ブォン、という音。それが靄に飲まれたミノタウロスの手に持った石斧が振りぬかれた音であると気付くまでに、さして時間は必要なかった。
停止する、歩み寄ろうとしていたミノタウロス達。その上半身と下半身が、まるでスローモーションのように遅れてゆっくりとスライドしていく。決して生半可な武器では傷一つ付きそうにもなさそうな頑健そうな筋肉質の肉体が、一つ、また一つと二分割にされていく。たった一度、斧を振りぬいたというだけで。
――――ブゥゥォオオオオオオオオオオオオオ!!!!
一撃の元、本来ならば共にファズグランへ向かう筈だったであろうミノタウロスの仲間たちは、無残なその骸を晒している。だというのに、まだ足りない。もっと殺らせろ壊させろと、靄に飲まれたミノタウロスは手当たり次第に石斧を叩きつけていく。
地面、仲間だったもの、崖、ただ壊したいという願望を体現したかのように、その瞳を真っ赤な狂気に染め上げた牛人の鬼はひたすらに暴れまわる。
「ちっ……!! 一旦退くぞカイトくん!! 奴は危険だ!!」
そう叫ぶや否や、ユーリさんは補助魔法を駆使して向かい側の崖へ飛び移ろうと、風の足場を再度形成する。
「ッ!! ユーリさん!! 後ろ!!」
それを感知したのか、それとも単に力加減を誤って手が滑ったのかは分からないが、ミノタウロスが振り向きざまに振り抜いたかと思われた石斧はその手を離れ、恐るべき速度で一直線に僕らの元へ向かってくる。
「っちぃ!!」
ユーリさんはそれだけで大凡の状況を理解したのか、後ろを振り向くのも手間だと僅かに補助魔法による風ののベクトルを逸らす。それにより僕らは間一髪飛来する斧の一撃を免れ、その代わり、元来魔法が得意ではないユーリさんにほんの一瞬だけ隙を生じる事となった。
そう、ほんの一瞬。何もなければ暴走するミノタウロスが次の行動に移るにせよ、ユーリさんが体勢を立て直し、対岸へ飛び移るには十分な時間が得られるであろう、ほんの僅かな、刹那とも言える時間。
ヒュンッ!!
その刹那の間隙を縫うように、軽やかな風切り音が耳に届く。そして、ドッ、という音がすぐ側で聞こえたと知覚した瞬間、ユーリさんの呻き声とともに補助魔法が切れ、僕らの体は重力に従い、真っ逆さまに落下を始める。
「ぁぐっ……!!」
「ゆ、ユーリさん!?」
見れば、ユーリさんのふくらはぎの辺りを一本の矢が貫いている。それは、決してミノタウロスのものではない。ミノタウロスには、遠距離用の武器が必要となる程、肉体的に脆弱でなく、その為に武器の技術も、石斧や石剣などの原始的なままでさしたる進化もしていない。ならば、一体誰が。その答えは、実に明快で、疑いようも無かった。
崖から誇るように身を乗り出すディムシーさん。狂気的な嘲笑を湛えながら、その手には一丁のボウガンが握られていた。
「ぐっ……!! 来たれ旋風……、我が身を支える柱となれ……!! 『エア』、『リアル』ッ!!」
僕がその光景に呆気にとられていると、ユーリさんが激痛を噛み殺して再び補助魔法を展開し、一瞬だけ落下速度が緩まった。しかし、詠唱のために完全な減速は間に合わず、僕らの体は叩きつけられるようにして地面に落下することとなった。
「あっづぁ……!!」
鈍い衝撃。全身に激痛が駆けずり回り、動くことを全力で拒絶する。だが、悠長に寝転んでいられるだけの時間なんて無い。地面に落下する寸前、ユーリさんが僕を庇うように抱え込んでくれた。ならば、今は僕よりもユーリさんのほうが大怪我をしている可能性が高い。一刻も早くユーリさんを見つけなければならないんだ。だから動け、動けよ僕の身体!! まだ動けるだろ起きろ立て!! 肝心な時に寝てるんじゃない!!
あまりの激痛に平衡感覚さえ失いつつも、なんとか体を起こすことに成功した僕は、歪む視界の端に横たわるユーリさんの姿を確認する。声を上げることもままならず、数度蹌踉めきながらも、どうにか僕はユーリさんの元へ辿り着くことが出来た。
「っ…リさん!!」
必死に絞り上げた声で呼びかけるが、返事はない。僕を庇ったせいで強く打ったのか、頭から血が出ている。腕も、右腕があらぬ方向へひしゃげてしまっており、気を失っていたのは不幸中の幸いとも言うべきかもしれない。なにより幸いだったのは頭部の出血は思ったより傷が浅かったらしく、それほどの量は出ていないこと。足の傷も、腕の骨折それ自体も、命に関わるようなものではない。
ユーリさんのスパルタ教育の賜物で、この程度の傷であれば止血などの応急処置を施すことが出来るだろうし、それで命に関わるような事態に陥る事は避けられる筈だ。もっとも、『そんなことをしている時間があれば』の話ではあるが。
ぬるり、と。ミノタウロスがこちらを見やる。
――――なんだ、まだ壊せる物があるじゃないか。
そんな狂喜を錯覚させるその瞳には、正気などという生易しいものは一片たりとも残ってはいなかった。あらゆる暴力的、破壊的衝動が渦を巻き、目に映る全てを破壊し尽くさんと燃えたぎる凶瞳が煌々と輝く。
「ガッハハハハハハハハハハハ!!!! いい気味だなぁ青狼!! ザマァ見やがれ!!!!」
そして、恐らくは正気を失っているのはミノタウロスだけではなかった。壊れた音響装置のように、自分でもどうやって出しているのかわからないのではないかと疑わせるような狂った哄笑を吐き散らしながら、ディムシーさんが僕らを見下ろす。
「そして気の毒になぁガキ!! そいつと関わったってぇ事でテメェも死ぬんだからよォ!? ま、英雄の旅路ってか? あの世でそいつとでも歩んでくれや!! なぁに心配すんなよ!! お前が持ってきたお宝は無駄にならねぇようオレ様がちゃあんと預かってやっからよ!! んじゃあな? くはははははははは!!!!」
言いたいだけ言い捨てて、ディムシーさんは悠々とその場から立ち去っていった。次第に薄れていく濁った笑声がその開いていく距離を無慈悲なまでに伝え、僕らが真に孤立したことを告げる。この絶望的な状況の中で。
ミノタウロスがゆっくりと歩を進める。一歩、また一歩と、確実に僕らに死を与えるために近づいてくる。
どうする?どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする?
僕は、真月介斗はあまりに非力だ。人間という括りの中で、『冒険者』という枠に嵌めれば尚の事。ディムシーさんのような怪力も無ければ、ユーリさんのような俊足もない。僕にあるのは多少の知識と、雀の涙と言っても過言ではないほど僅かなステータス値。考えろ。考えろ考えろ考えろ!! 力がないなら知恵を振り絞れ!! あるもの全てをここで吐き出せ!! でないと――――。
――――でないと、ユーリさんが死ぬ。
その事実だけが、恐怖で今にも崩折れそうな程に笑っている膝を今一歩のところで押しとどめていた。
心臓はかつて無い早さで鼓動を刻み、恐怖を超えて興奮状態に入った脳はアドレナリン全開。必死になってこの場を乗り切る情報を脳の引き出しから手当たり次第に探り出す。
ミノタウロスに関する、ユーリさんに詰め込まれた知識。ユーリさんのサポートをする目的で、用意していたアイテムの数々。この世界にきて、実際に見聞きしたこと。今僕らが立っている場所。
この世界には冒険者になる上での『辞書』のような物はあっても、有事の際に対応するための『マニュアル』と呼べるものはない。
けれど、『この世界ない世界』では――――?
それはほぼ日常的に僕の世界でファンタジーの世界に浸かっていた僕にとってはごく当たり前のことで、気付いてしまえば何のことは無い発想だった。
僕はミノタウロスの特性を知っている。ユーリさんの教育があったから。
僕は戦闘が回避するほかなく、且つ俊敏性や体力で勝る相手から逃げおおせる手段を知っている。それは今この場に立っている初心者冒険者が『この世界の人間ではなかった』から。
その考えに至った瞬間、僕の体はまるで僕のものではないかのように、ぎこちないながらも素早く行動に移っていた。ユーリさんを抱えたまま、素早く腰のポーチに手を伸ばし、僅かに手こずりながらも煙玉を取り出す。それを正しく煙玉と理解したのか、それとも自分に対する脅威の一種と取ったのか、ミノタウロスはそのまま一気に僕らの元へと距離を詰めようと駆け出す。
僕はすぐさま煙玉を投げるも、ミノタウロスのスピードと距離を鑑みると、どう考えても僕は一度は回避に成功しなければならない。僕の肩にはユーリさんの重み。いつもの僕自身の身体のガラクタ度合いに加え、今の僕は不慣れな物を担いでいる。分不相応なほどの『重み』を担いでいる。
けれど、失敗することは許されない。失敗は即ち僕のみならずユーリさんの死さえも意味する。覚悟を決めろ。必ず成功させる、死んだって成功させるんだ!!
目を見開く。今この瞬間は瞬きさえ許さないと、自分に言い聞かせる。
煙玉が落ちる。未だだ、ミノタウロスはまだ構えていない。
残り約7メートル。
煙玉が落ちていく。ミノタウロスが攻撃態勢に入り始めた。だがまだ、まだだ。
残り約5メートル。
煙玉がもう地面に触れる。どこだ――――、どの方向に攻撃をしてくる!?
そして、煙玉が破裂した、まさにその瞬間――――。
「…………横ッ!!」
ミノタウロスが振り上げていた石斧を振り上げきらずに攻撃に走ったのを間一髪見抜くや否や、全霊を込めてしゃがみ込み、そして背中を撫でるように非情な殺意を纏った斬撃が突風となって駆け抜けていく。
本来ならば気と腰が抜け、その場に尻餅をつく羽目になっていたのだろうが、未だだ。もう一仕事、無能なりの根性を見せろ真月介斗!!
心のなかで自分自身に喝を入れ、川の方へと駆け出し様、ミノタウロスに向けて僕は『ある物』を投げる。そして――――。
本来僕らを追いかけるはずだったミノタウロスの第二撃は。
「ヴヴォォッ!?」
突如として巻き上がった煙幕によって奪われた視界と、その足元からのカンッ、という硬質な金属音に吸い込まれ――――。
ミノタウロスが目の前の足場を粉砕するのと僕らが川へ飛び込んだのはほぼ同時だった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!!
いやー、まともな戦闘がないですねーホント。
戦闘シーン書きたいんですけど、どうにも運びが下手で申し訳ございません……。
あ、それとボウガンには因果逆転の呪いが掛かった上、ディムシーはオリンピック強化選手なので、ものっそいピンポイントで当てられました!(大嘘)