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転生ヒロイン、今日もフラグを折るために奮闘する  作者: 神無 乃愛
魔法学院編――一年――

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20/29

孤児院の食糧事情


「ここが……」

「はい。私が幼少時過ごした孤児院です」

 外出許可を取ったアーデルヘイトとロビン……だけではなく、何故かドミニクスとアンドリース、それからクラウディアも一緒に孤児院へ来ていた。


 ずだだだだ! とアーデルヘイトに向かって走ってくるのは、孤児院内でも一、二位を争う問題児二人だ。

「今日、筍採りに行くんだろ!? 俺らも一緒行っていい……って、後ろの人たち誰?」

 すぐさまアーデルヘイトは二人に拳骨を落とす。

「いってぇぇ」

「挨拶!」

「えぇぇぇ? 何で貴族様にしなきゃいけねぇの? 自分たちばっかり偉ぶって、不条理なことばっかり言って……」

「それとこれは別! 挨拶は人の基本!!」

「相変わらずアーデは厳しいね。……それから初めまして。私がこの孤児院の責任者、ヤンだ」

「僕はファースといいます」

 何を思ったか、ロビンがセカンドネームで自己紹介していた。

「ファース君……と呼ばせてもらうよ。ヴィッテリック宰相閣下の嫡男か」

「構いません。それよりも、ここで筍が採れると聞いてきたんですが」

「ロビン! そっちが優先なの!?」

「クラウディア、当たり前じゃないか。僕はそのために来たんだ。孤児院の慰問は母上の仕事だ」

 冷たくロビンが言う。

「ははは。ヴィッテリック公爵夫人の慈善活動は有名ですからな。そちらより筍を優先されるとは」

「はい。アーデルヘイトさんに、こちらで筍をよく食べていると聞いたので」

「アレね。アーデが孤児院にいた頃からだからねぇ」

 ヤンがしみじみと言う。

「というか、アーデが見つけてきたんだよ。そして調理法もアーデが試行錯誤で考えた。それと一緒で少し遠出をして山中から芋を掘ってきたときは、さすがの私も驚いたよ」

「山の中に芋があるんですか?」

「あったよ。今は畑で植えているけど。……ネバネバして好みが分かれる。調理すると大半の子供が食べるけどね。

 おかげでうちの孤児院内では飢えは他のところに比べて少ない」

 ヤンの告白に興味本位でついてきたメンバーが絶句していた。

「で、アーデ。この人たちに筍を教えてどうするつもりだい?」

「少量の取引で金に替えます」

「……言うと思ったよ」

 アーデルヘイトの答えに、ヤンが呆れていた。



 その場にいたメンバー全員がもう一つのことで驚いていた。


 羊皮紙でない用紙を使い、子供たちが書き物をしているのだ。

「これは?」

「これ? 紙」

 子供はぶっきらぼうにそれだけ答えると、すぐにいなくなった。


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