アーデルヘイトの受難
「頑張ってね(ハート)」と言わんばかりに手を振る枢機卿たちを尻目に、アーデルヘイトは、現生徒会役員に引き摺られて生徒会室に来ていた。
「では、自己紹介させてもらうね。俺はクンラート・ベルト・デ・ブリュネ。二年で生徒会長をしている」
「僕はロビン・ファース・デ・ベール・ヴィッテリック。同じく二年で生徒会副会長。生徒会のなかではお茶いれもさせてもらってる」
「わたくしはクラウディア・ボー・ヴェータ・ビュルシンク。生徒会書記をさせていただいております」
「私はエトウィン・ラウ・ヴェータ・ビュルシンク。ボーとは双子で生徒会会計をしている」
「アーデルヘイトです」
「……自己紹介それだけ?」
「それ以外に何が?」
得意なものもあるわけではなく、この人たちのように高い位の貴族というわけでもない。そして、この国では平民に姓はないのだ。
だからそれ以外言いようがない。
「確かフェーレン家のご息女だよね?」
ロビンが確かめてきたが、アーデルヘイトはどう答えていいか分からない。
「ロビン。彼女の立ち位置は特殊だ。だからあまり突っ込まないこと」
そう言ってきたのはドミニクスである。
「先輩、よろしいんですか?」
「大人たちの話しに混ざりたいと思わないよ。それに、どう頑張ったって、学院長がある程度の責任取らせられるのは確実だし」
「ちょっ……」
「事実だよ。私が確認を取ったら、ほとんどが学院長の指示でアーデルヘイトさんへの嫌がらせを黙認していたみたいだし。陛下はそういったことがお嫌いだし」
その言葉に、全員が驚いていた。
あまりにもの驚愕に、しばらく沈黙が流れた。
「学院長は才能溢れる方だと両親から聞いていたのですが」
そう言ってきたのは、エトウィンだ。
「才能はあるだろうね。何せ四属性持ちだし」
奥歯にものが挟まったような言い方をしてきた。
ドミニクスの言わんとしていることは、アーデルヘイトには分かる。
学院長は一番に家柄を、二番目に才能を見る。それを嫌というほどにアーデルヘイトは感じている。
そう、最初に感じたのは、あの契約書の時だ。馬鹿にしたような態度でアーデルヘイトを見下ろしていた。それを咎めたのは誰だっただろうか。理事だったことは覚えている。
そして二度目はヤンも一緒に学院長のところに行った時だ。
だからこそ、「平民とのあいの子」と平気で思えるのだ。
ヤンも口に出さないが、学院長の対応に不満を持っているのは分かる。
「それはそうと、アーデルヘイトさん。明日から生徒会役員としての仕事がありますの。きちんと来てくださいね」
クラウディアが有無を言わさぬ勢いで言って来た。