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平穏が一番

「―――新入生代表挨拶、アンドリース・レクス・エーヴェ・フェルフーフ」

「はい」

 何の問題もなく、入学式は進んでいく。確か入学式でイベントがあったはず。内容まで覚えていないアーデルヘイトは、どうしていいものか悩んでいた。

 結論として生徒会役員や目立ちそうな人物に関わらないこと、そう決めた。

「続いて生徒代表挨拶、生徒会長クンラート・ベルト・デ・ブリュネ」

 ほうほう、生徒会長はブリュネ伯爵家の人間か。アーデルヘイトはそう記憶するに留まり、とりあえず(、、、、、)顔を覚えるべく前を見た。


 ……妹がこの世界にいたら狂喜乱舞するくらいの美形である。勿論、今まであったヤンも侯爵家の二人も、あのマナー講師もいい男ばかりだ。

 さすが乙女ゲーの世界。変に感心したあと、他の生徒会役員の顔も覚えるべく視線を移した。



 余談ではあるが。

 入学式には新入生とその保護者のみの参加だ。在校生で参加しているのは、生徒会役員や風紀委員の面子、それから各種同好会の会長に委員会の委員長・副委員長のみ。

 そして、特別クラスは新入生の中でも最前列に陣取っている。

 つまり視線を外せば目立つわけで。


 クンラートは己から視線を外したアーデルヘイトを見つめていた。



 大まかにではあるが、アーデルヘイトは何とか生徒会役員の顔を覚えた。


 よし、近づかない。それが平穏に学院生活を送るために最初にすべきことだと。



 それが間違いだと気付くのは、翌日のことになる。



 一年の特別クラスが、騒がしかった。寮と違い、小屋と校舎が遠いため、他の生徒より遅くなりやすい。

「やっといらっしゃいましたね。アーデルヘイトさん」

 そう言って笑っていたのは制服を持ってきてくれた女性。

「……はぁ。遠いので」

「分かっておりますわ。遅刻ではありませんから問題ありませんわ」

 何がしたくてここに居るのか分からない。

 がしっとアーデルヘイトを掴んだのは、屈強な男。

「……あの?」

「ついてきてくださいな」

 そのままずるずると生徒会室まで引き摺られた。



 そこで告げられたのは、「生徒会役員にならないか」というものだった。


 当然のごとく、アーデルヘイトは丁重に断りを入れた。表立った理由は「マナーの特別授業も受けますし、そのような大役はつとまりません」というもの。本当の理由としては「誰が好き好んで目立ちたいと思うか」である。



 その思惑にとある男が気付き、囲い込もうとしていたなど、知るよしもなかった。


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