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成金親父な父親と醒めた娘

 アーデルヘイトにとって、人生最大の岐路が近づいていた。母親を早くに亡くし、物心つく前にはこの孤児院にお世話になっていた。

 前世の記憶があったため何かと重宝されていたアーデルヘイトだが、その孤児院に父親が迎えに来たのだ。

 名前はルーベルト・ファン・フェーレン。どっからどう見ても成金趣味の親父にしか見えない。


 院長のそばで色々と聞いていると、この男子爵の位を持つお貴族様らしい。どっかで聞き覚えがある苗字だと思ったが、貴族なら時々寄付に来るから、その時に聞いたのだろうとアーデルヘイトは思った。

「こんなおんぼろの教会にいるよりも、私の家のほうが娘にとってもいいだろう」

 子供だと思って言いたい放題である。


 男の話を要約するとこうなる。


 この成金趣味の男がアーデルヘイトの父親で(母が最期まで言わなかったのも納得できる男だ)、どうやら引き取りに来たらしい。で、院長は父親にアーデルヘイトを渡したくない。そんな院長に子爵という位で脅しているという状況だ。


「聖職者でもないのに、院長とはいいご身分だな。そこまでして徳を積みたいとは、一体どんな罪を犯したのか。この孤児院を潰せるだけの権力が私にあるということを忘れては困る」

 その言葉に院長が黙ってしまった。

「院長先生、いいよ。あたしが行く」

「アーデルヘイト!」

「ここにいる皆を路頭に迷わせるのは嫌だ」

「さすが私の娘。分かってるではないか」

 そして、父親に引き取られることになった。


 その孤児院から成金親父の家に行く道すがら、色んな話を聞いた。

 母親は平民出身で、成金親父の家で使用人をしていたこと。

 そんな母親に成金親父が手を出したこと。そしてアーデルヘイトを身篭り、認知を強要したため、家を追い出されたこと(これに関して、アーデルヘイトは疑問を持ってるが)。

 成金親父の本妻さんには息子と娘がおり、娘の身体が弱いので駒となりうる存在が欲しかったこと。


 それにしても……とアーデルヘイトは思う。ファン・フェーレンという名前に聞き覚えがある。それも、母親関係からではない。それ以前の記憶でだ。


 己を客観的に見ると中二病(頭のおかしい人)に思えてくる。

 まぁ、この世界自体が前世から見ればファンタジーの世界だ。

 何せ魔法がある。この世界で魔法を使えない人を捜す方が不思議だ。


「我がフェーレン家はゼルニケ王国建国時からの貴族だ。それを努々忘れるな。

 ……コーデリアがああでなければお前など引き取らずに済んだものを」

 成金親父の言葉に思わずアーデルヘイトは固まった。

 聞き覚えがあるわけだ。ゼルニケ王国、フェーレン家、魔法、成金親父にコーデリアという名前。

 やっとのことで思い出したのは、「愛とファンタジーの世界へ『チューリップが咲くまでに~魔法学院編~』」という名前の乙女ゲー。

 前世の妹がはまっていた乙女ゲーだ。


 その場でアーデルヘイトは突っ伏した。



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