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恐ろしい昭和の通販の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/10/24

 私はヤングサラリーマンの禿山太郎です。


 ある日、会社で新しい社員証を作る事になりました。


『皆、これから国際社会になる。世界に通用する社員証を作るから人事に協力すること』


『はい』


 人事の綺麗崎さんがやってきた。皆の憧れのマドンナだ。


『皆さんの髪の色を順番に確認します。黒、薄い茶色、白髪、お答え下さい』


 綺麗崎さんが私のデスクまで来た・・・が素通りした。


『あの、私は・・・』

『禿山さんは結構です。髪の色の欄は空白にします』


『ええ、生えていますよ!薄い茶色ですよ!』

『それは眉毛では?』

『もみあげはありますよ』

『頭頂部の髪の色を聞いていますのよ』



『ア~ハハハハハ!』

『落ち武者じゃ仕方ない』



 皆に笑われました。私のあだ名は落ち武者・・・

 そんなとき、ハンサムで有名な一式君が小声で話しかけて来ました。


『先輩、ちょっと、この写真を見て下さい』

『何?一式君はハゲだったのか?』


 一式君の昔の写真を見せられました。若ハゲだったのだ。

 今はフサフサなのに・・・


『先輩、ハゲナオールでハゲが治りました。定価9980円で中国の大学が効果あると認定をしました。証明書もついていますよ』


『本当か?』


『ええ、少しお高いですが返金保証付です。有名大学のお墨付きです』


 半信半疑で買ったら・・・すぐに効果が現われました。


『キャー!禿山さんよ!』

『また、大きな契約を取ったのですって』


 自信も付き。ビジネスガール達から黄色い声が飛んでくるようになりました。

 今では・・・


『禿山さん。証明書を作りますわ。喫茶店でお話をしませんか?』

『はい、綺麗崎さん』


 ハゲナオールに出会えて本当に良かった。






 ・・・・・・・・・・・・




 これが某毛生え薬の商品案内書に載っていた体験談よ。


 そうね。私の学生時代、通販の案内書を集めるのが趣味だったわ。

 葉書1枚で請求出来るの。


 きっかけは、


 小学生の頃ね。睡眠学習の枕が通販で売られていたのよ。


「母さん。これ欲しいわ!これがあれば夜も勉強できるわ」


 母にねだったけど。

 当然に・・・


「ダメよ。大人になって自分でお金稼げるようになってから買いなさい」


 って言われたのよね。

 どうしても欲しかった私は案内書を請求したの。

 高くて買えなくても気分を味わえてワクワクする感じがよかったのよ。



 そして、ハゲの治療薬の案内書まで請求したわ。お父さんの週刊誌に載っていた広告ね。

 禿山さんの写真が載っていて、使用前、使用後の写真が載っていてフサフサだったわ。



 だけどね。


 他の案内書を請求したら・・・



 ・・・私は茂内(もてない)太郎、さえないサラリーマンだ。


「禿山さんだ・・わ」


 ってね。同じ写真で別の商品の体験談が別名で載っていたのよ。



 だからね。お父さんに注意したわ。


「お父さん。このハゲナオールはインチキだよ。買わないで!」

「買わんわ!って、どこかハゲているのか?」


 結局。



「案内書を請求するな!」


 って怒られたけども、お母さんが庇ってくれたわ。


「お父さん。何でも学習ですよ」

「そうか・・・」


 それから高校になっても集めていたけども。

 買った物は一つもないわ。



 分かったのはジャンルごとに写真と体験談が使い回されていたことね。

 もう、インチキだわ。


 恐ろしいのは有名な雑誌や新聞に広告が出ていたのよ。


 そしてね。高校の時にある広告を試してみたのよ。


 最短三分で電話番号から住所を探しあてます。住所が判明したら金三万円頂きます。

 〇〇興信所



 自分の家の電話番号で試すことにしたわ。


「あの気になる先輩の電話番号を入手しました。住所を知りたいです」


 と自宅の電話番号を言ったら・・・


「住所はお金と引き換えに郵送でお送りします。送り先の住所は広告に載っています」

「はい、それで結構です」


 業者の住所は私書箱ね。

 怪しいと思ったら、すぐに電話がかかってきた。



「はい、どちら様ですか?」

「NTTの者ですが、電話の解約の申し込みがされています。住所の確認をいたします」



 とね。業者からかかって来たわ。

 そうやって住所を探っていたのね。


「なら、折り返し電話をします」

 と回答したら、すぐに電話が切れたわ。



 お金は送らなかったけど何も起きなかったわ。

 それからヤバいと思って、広告を確かめることはしなくなったけど、


 特徴としては。


『中国の有名大学が認めた健康食品です』


 中国の大学の名前が出ていたわね。


 ネットが普及してから調べたら、その大学の寄付名簿に日本の企業や宗教団体のトップとか寄付していたわ。



 その体験談を雑誌に送ったら。


「お母さん。二万円もらったわ。どこか食べに行きましょう」

「まあ、ライターになったのかしらね」


 記事代として二万円もらえたのが唯一の成果だわ。





 ・・・・・・・・・・・



 ズズーとお茶を啜りながら義母は言った。


「義母さん。昭和の時代はインチキばかりだっんだね」

「そうね。有名な新聞の広告でも信用できないと思ったわね」



 そうだ。今はネットがある。インチキはすぐにバレるだろうと思ったが。


 ‘’皆さん。助けて下さい。創業500年の老舗の職人工房が破产の危機に瀕しています。このままでは従業員の給料も払えません!’’



 こんな動画が合間に流れて来た。これは中国の簡体文字が混じっている。


 どうやら、現代も変わらないらしい。




最後までお読み頂き有難うございました。

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