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エピローグ 青とレオンハルト

俺は苛立っていた。




『青』の事件から3年。

世の中が大きく変わったわけではない。

だが風向きが変わったのも事実だ。

青の魔法使いの再来は、魔法使いにとって大きな追い風となった。


魔法の時代の再来、誰しもがそれを期待した。

特に我々魔法使いの担い手を自負するローゼンブルクにとっても

大いに意義があることだった。




当時俺がその話を聞いた時の感想は

『ついに成ったか』という思いだった。


カノン・ローラン。

ひと目見てわかった。奴はこっち側だと。

残念ながら魔術の才能には乏しい、だがそんな物は乗り越えればいい。

あいつは間違いなく魔法のために『狂える』人間だ。

奴の纏っていたマナは間違いなく俺と同等、いやそれ以上だった。


ただ俺は同時に不安を覚えた。

あの落伍者とゴミクズに囲まれた環境。


俺は「恵まれた側」だった。

魔法に打ち込める環境、それ以外に雑音はない。


だが奴は違う。

あまりにノイズが多すぎる。






案の定、俺の不安感は半分的中した。

青のカノン。

その言葉は今、魔法の絶対性を示す言葉と正反対に位置している。


こともあろうに青のカノンといえば『人と魔法の架け橋』という意味合いが強い。

その言葉を聞いた時、俺は怒りのあまり

その場にあった机をスクラップにした。


だが、周囲の反応は違った。




当時、俺の周りには自然と人が集まっていた。

魔法を担う、次代の絶対王者として称える者たち。


正直、魔法と向き合う時間が減るが、

魔法を正しく理解する者たちには導くものが必要だと考えた。

だが今、俺の周りに付き従うものはいなかった。


全てはあの女、青のカノンが何もかもを破壊してしまった。




だが俺は納得するしかなかった。

俺の矜持が、哲学が、拒絶を許さなかった。

何故なら、奴こそが正しく魔法に狂った者。

その人間が導く世界こそが正しいからだ。


それでも苛立ちは消えない。

しかし俺は奴に論を交わすだけの言葉を持ち合わせなかった。


俺同様に納得しない者たちもいる。

直接的に、間接的に、足を引っ張る者、喧嘩を吹っ掛けるもの。

色んな奴があの女に関わった。


そして、この点に関しては俺の予感が的中した。

奴は飛躍するように魔法使いとしての才能を開花させたのだ。


だが奴は聞くに、魔法で戦うことはしなかった……らしい。

「らしい」というのは俺が奴と距離を取り続けているからだ。

伝聞では、奴は決して魔法を誇示することなく。

おおよそ人と関わる時に魔法を殆ど使わないのだという。

その態度こそがまさしく「青の魔法使い、エリアス」を彷彿とするといい

世間は熱狂した。




俺は許せなかった。

魔法を汚されているとすら感じている。

だが自分の心に課した法律がそれを許さなかった。




そうこうしているうちに3年の月日が経っていたのだ。




俺は陳腐な言い方をすれば好奇心が抑えられなかった。

魔法学園高等部に奴は入学してきた。

だが奴を直視することを俺はできるだろうか。

ずっと葛藤してきた。


だが俺は奴を超えなければならない。


青のカノンが時代を作る。

それは構わない。

ならば俺は俺の世界を作る。

魔法こそが至高、この後も未来永劫、人類を牽引する者こそが

魔法使いであることを証明する。


そのためには奴と会わねばならない。

俺の直感がそう囁いていた。





ある日、俺は奴の教室に向かった。

その日を選んだ理由はない。

自然と足が向かった、故にその日がいいのだと直感が言っていると感じた。




奴の教室に入ると、少しだけ俺の近くにいた生徒どもが

距離を取った。


あからさまな警戒、そうそれでいい。

それこそが魔法使いの正しい姿。


そして俺は躊躇せず一直線にあの女のところに向かっていった。


女の周りには男女問わず色んな奴がいた。

俺はそいつらを蹴散らすように割って入った。



さあ、お前はどんな反応を見せる。

以前と変わらぬままか?

それともお偉く止まって、くだらん高説を垂れ流すか?


俺は短く、一言だけ告げた。




「青のカノン、お前は一体何を得た」


すると本当に一息の間だけがあったが奴は答えた。


「何も……変わらなかったよ」



俺はその時気がついた。奴のマナの量は減ってはいないが

あの狂気的なまでの成長が、今は見られないということを。

今では、俺と大差ない量しか持っていない。


しかし怒りはなかった。

この感情は何だ……失望が近いかもしれない。




もはや青のカノンは俺にとって意義のないものに成り下がっていた。


黙って俺はその場を立ち去ることにした。


何を思ったのかはわからない。

だが俺が、教室を去るときに、最後に奴をもう一度だけ一瞥した。




奴は多くの人に囲まれていた。



それがお前の答えというわけか。

奴はもう、魔法を必要としていないように見えた。

少なくとも、この世界が求める形においては。



俺はそのまま教室を後にした。


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