プロローグ
私、斎藤エリは困惑していた。
「おめでとう!あなたは女神見習いに選ばれました!いえ〜い!」
目前で繰り返される見目だけは麗しい女性による祝福。トラックに轢かれ、意識が飛び、気づいたらここにいたのだから、何が何だかわからない。
「え、えーと。女神見習いとは何なのでしょうか。」
混濁する頭で考えはまとまらないが、兎にも角にも彼女に質問をしてみることにした。
「女神見習いはね、前世で良い行いをした、選ばれた魂しかなることのできない、素晴らしい役職なんだよ!」
「前世ってことは私死んじゃったんですか?」
「うん!死んだよ!」
トラックに突き飛ばされた光景が鮮明に映し出されていたので、何となく察してはいたが、こうもあっさり告げられると悲しみも湧いてこない。
「じゃあここはどこなんですか?」
「ここはね、天界って言ってあなたたち魂を私たち女神が導くために存在してるんだよ!」
どうやら彼女は女神でここは天界らしい。空想上の存在だと思っていたが、こんな状況に置かれているのでもう、本当なのだろう。
「えっと、それで何で私を女神見習いに?私良い行いをしたと言っても、おばあちゃんに席を譲ったくらいなんですけど。」
「多分前前世とかで沢山してたんじゃないかな!魂の良い行いポイントが一定の値に達したから、ここに呼ばれたんだと思うよ!」
「は、はあ」
常にニコニコの笑みでこちらに話しかけてくるのでどうも調子が狂う。
「質問はもうない?じゃあ女神見習いとして初めてのお仕事を伝えます!」
どうやら私が女神見習いになるのは確定してしまったらしい。
「まず初めに、あなたには三つの魂を導いてもらいます!その魂をどう導くかはあなた次第!」
「魂を導くって言われても、やり方何もわかってないんですけど.....」
「言うは易しやるも易しだよ!それじゃあ頑張ってね!」
そう訳のわからないことを言って彼女が腕を一振りすると、私は簡単に意識を失った。