13 見せ場
「……ったく、なんなのよ!!びっくりしたぁ!」
突然の後方からゴブリンの奇襲。それを檜室は既のところで回避。20匹の群れを【氷結創造】の鎖で縛り上げ姫霧の炎魔法で吹き飛ばし、逃れた数匹を檜室が氷の剣で始末した。
(……ライブ配信の見どころは作っとかないとな)
チャット欄のコメント、背後のゴブリンの気配に檜室は気づいていた。しかし、あえて気がついてないふりをする檜室。
配信の『切抜き』所、つまり数字の取れるポイントを作ったのだ。
(命は惜しい……が、数字も大切だ。そのためになら多少の接近戦はする。勿論、確実に勝てる状況でだがな)
「……なんだか変じゃないですか」
峰藤が思い詰めた表情でいう。
「何がだ?」
檜室は理由を聞きながら、『あ、杏樹この表情エロくていいな』と頭の中がピンク色だった。
「今のもそうなんですが、これまで私たちが遭遇したゴブリンの群れ、かなり弱ってませんでしたか?どの個体も魔力が殆ど残ってなかったような……」
「……そうか?姫霧、どう思う?」
「んー、気のせいじゃない?ってかぁ、別にそんなの気にする必要なくなぁーい?」
「そうですか」
「あらあ、もしかして今の奇襲でビビっちゃったの?『戦場の女神様』ともあろうお方が……ぷぷぷっ」
峰藤の眉がピクリと動く。それをいち早く察知する檜室。
「……おい、姫霧やめろ!杏樹はそう呼ばれるのが嫌だって前にも言ってただろう!」
「はーいはい、ごめんなさーい」
「悪い、杏樹。後でちゃんと言って聞かせるから」
「……いえ、大丈夫です」
にこりと微笑む峰藤。しかし長い付き合いの檜室はその表情に真逆の感情が秘められているのを感じとっていた。
(ちっ、姫霧……あのバカ、なんなんだ本当に!?くそ、雷豪の代わりを探さなければと思っていたが、ついでに遠距離アタッカーも変えるか!?このままだと峰藤が抜けてしまう可能性がある。……が、しかし……姫霧は姫霧で数字を持ってるんだよなぁ。JKで現場で活躍するシーカーなんて貴重だし、あいつはその年代の代表的なインフルエンサー……そういった意味では峰藤よりもある意味貴重な存在だ。くそ、どうすれば……)
「氷河くん、私大丈夫ですよ」
「あ、ああ……」
「もうすぐ中層です。そこまで到達すれば、一旦今日の捜索は終了ですよね」
「そうだな。中層の35層は魔物の出現しない平原地域、そこで一晩休んで魔力と体力の回復をはかろう」
「集中して回復に努めなければ……必要以上に魔力を消費してしまいました」
「ああ……やっぱり雷豪がいないとキツイか。マジックキャスターのみだと魔力消費がな」
「そうですね。それと冥くんがいないのが」
「……冥?」
あの無能が?と口にしそうになり既で止まる。
「はい。冥くんはパーティ全体をみてバランスをとってくれてました。例えば、姫霧さんでいうと、魔力を使いがちなのを冥くんは知っていたので、魔力消費を軽減+回復効果のあるドリンクを作ってきてあげたりしてました」
「へえ、そうなのか」
「あとは魔力を極力使わせないように、魔物のヘイトを冥くんが引き受けタンクの雷豪くんに寄せていったり」
「ん?冥はスキルが使えないだろ……もしかして、ヘイトを誘導する魔法かなにかを覚えていたのか?」
「違いますよ。ほら、魔物って弱い者から狙うじゃないですか。冥くんは自分が弱くて狙われやすいのをわかっていたから、それを利用して魔物を誘導していたんですよね」
「そうか、あいつも頑張っていたんだな」
「はい。彼以上に戦況を読めた人はいないんじゃないでしょうか……まあ、だからこそスキル無しでも生き残ってこれたのだと思いますが」
カチンとくると共に檜室は意味を理解した。峰藤が、戦況を読む能力で遠回しに俺よりも椎名の方が上だと言っている事に。なわけねーだろ、と思いつつも峰藤の怒り度合いを察する。ああ、これはかなりキレているな、と。
(……さっきの『戦場の女神』呼びがそうとうムカついたんだろうな……いや、まあ一度じゃなく姫霧のやつ事あるごとに何度もやってるからそりゃそうなんだが)
「あ、あと魔力が少なくてあれでしたけど魔力操作とバトルセンスもピカイチでした。回避能力が特に凄くって、まるで予知「まあまあ、わかった!わかったよ峰藤!」
これが峰藤のでまかせであり、ストレス解消のあてつけだとわかっていてもムカつくものはムカつく。と、イライラが限界に達しそうになった檜室は言葉を遮った。
「あ、すみません。私ったらつい……」
「それだけ大切に思っていたんだな、冥のこと」
「はい、とっても大切でしたよ。仲良しでしたし」
にこりと微笑む峰藤。なら、なぜ冥を見殺しにしたのか、奴を追放する事に賛成したんだ……と、疑問に思った檜室。しかし、そこでふとその理由に思いたった彼は背筋が冷たくなった。
『――私はそんな大切なものを壊すことに快感を覚えるんです。自分が丹精込めてお世話した、大切な生き物を苦しめいたぶり、壊す……これが最高に興奮するし気持ちいい♡』
あの時、冥を追放したときの峰藤の言葉。
(……あれは煽りとかじゃなく、本当に)
「あれ、え……なに、これ」
先を歩く姫霧が、次の階層へ通じる大階段の前で立ち止まっていた。いつもならそのまま上がっていき、いの一番に休憩し始める彼女だったが、そこに立ち尽くしていた。
「どうした姫霧?」
「……これは」
大階段に大きな岩が積まれていた。まるでバリケードのように通れなくされていたのだ。
そして、ふたたび――
「……後方から魔物の気配です」
振り返ると200匹以上のゴブリンの群れがそこにはいた。
(……う、嘘だろ)
疲弊した仲間、残り少ない魔力。
……ゾクリ
――死が迫る、足音が聴こえた。
【重要】
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