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11/24

11 配信開始


「――と、言うわけで、今回は俺たち三人でD級ダンジョン攻略をしていきたいと思います。皆、応援よろしく」


『まじで!?』

『すげえな』

『カッコいい檜室くん』

『三人はやばいだろ』

『おいおい』

『まあ氷龍の刃だからな』

『さすがSランクパーティ』

『けど大丈夫か?雷豪いないと火力不足じゃね?』

『大丈夫だ問題ない!姫霧がいる』

『カッコいい檜室くん¥50000』

『がんばれ!』

『雷豪どした?』

『なんか体調悪いらしい』

『¥3000』

『がんば!¥20000』


カメラを起動したドローンがふわりと浮いた。それと同時に檜室は手を振り「安心して皆」と手を振る。


「んー、と……ふう」


伸びをして体をほぐす姫霧。彼女の自慢である豊満な胸。胸元が大きく開いたその特徴的な装備は、ギルドの安全対策チームに何度も止められていたが、姫霧はそれを無視していた。


『うおあ』

『すげー』

『付き合いたい』

『姫霧さま』

『可愛いいい』

『おなじパーティになりたい』

『感謝のスパチャ¥3000』

『でけえ』

『おお』

『眼福¥50000』


(あはっ、気持ちいい!ほれほれ、みなさい!そして羨め!スパチャを落とせ豚共!!)


「なーんか、ちょっと暑くなーい?」


はたはたと胸元を見せるように手で扇ぐ。それにより更にスパチャが飛ぶ。


「ダンジョン内に入れば涼しいさ、行こう」


「はあい!」


本来、シーカーとは安全性を最も重視する。資格を得てランクが授けられ、指導された時にその重要性を学ぶ。


しかし生まれながらにして高レアスキルを引き当て、大きな魔力を得て最初からある程度の強さを有している檜室達のような人間には、その危機管理意識が低いものが一定数いる。


「?……杏樹どうした?行くぞ」


呼ばれた峰藤 杏樹は顔をあげにこりと微笑む。


『杏樹様!』

『今日も可愛いなあ』

『美人さん』

『姫霧は可愛い系、杏樹は綺麗系』

『彼女にしてえ』

『しかもSSRスキル持ち』

『しかも貴重な回復スキル!』

『リアル天使様じゃん』

『今日もがんばって¥50000』

『杏樹様ああああ』

『お姉様¥30000』

『ふつくしい』

『俺にもヒールして¥50000』

『付き合ってくれええあ』

『気を付けてね¥10000』


(……なんか、鼻につくんだよねぇ杏樹)


表向きにこにこしながらも心の内では苛立ちが膨らんでいく姫霧 楼火。


(胸もねえし、おばさんなのに、なんで私スパチャでいつも負けてんのかなぁ……しっかり貢げよ豚リスナー共!つーかさぁ、檜室くんもなんでアイツ下の名前呼びなの?私の事は姫霧って呼ぶのに……はん、まあ良いんだけどね。これは表向きのエンタメ。この世には檜室くんより顔の良いイケメンなんて吐いて捨てるほどいるし。んで今の私なら選び放題だしさーあ……って、あれ?っていうかそれなら檜室くんと杏樹がくっついた方がいいまであるか?あー……うんうん、それが良いな!今後の事を考えたら!あったま良い、私!)


「ほら姫霧、行くぞ!何してる!」


「あ、え……」


「なにぼーっとしてるんだ?気をつけろよ、これからダンジョンに行くんだぞ!油断するな!命取りになるぞ!」


「ご、ごめん!」


「……うん、わかってくれれば良いんだ」


檜室の険しい顔が和らぐ。


「強く言ってしまってすまない。……けど、俺はもうあいつのような犠牲は出したくないんだ。椎名のような、犠牲は」


『やっぱり』

『この厳しさは愛か』

『なかないでー』

『檜室くん辛いよね』

『そんなにキツくいわないでよ』

『いや檜室の気持ちはわかる』

『もう仲間を失いたくないよね』

『姫霧さんもわかってるよ』

『椎名は弱かったからな』

『あいつは自業自得じゃね』

『死んだやつのことはやめろ』

『檜室くんが辛くなるでしょ』


涙ぐむ檜室。その心内は……


めちゃくちゃ美味えーーー!!!


定期的にあいつの名前を出してお涙頂戴するだけであらゆるメディアと切抜き師が拡散して知名度がどんどん上がっていく!!登録者も爆増していく!!


悲劇のリーダーを演じているだけでこれは美味しすぎるッ!!


いやあ、ほんとアイツを育ててきた甲斐があったよ!高難度ダンジョンに連れていき守りながら戦うのは苦労したがそれ以上の十分過ぎるリターンが返ってきてる!!


偉い!偉すぎる俺!!先見の明がありすぎるうう!!さっすが檜室 氷河様ああああ!!!


――その悲しみの涙とは裏腹に、内心彼は歓喜の雄叫びを上げていた。そして、姫霧は、


ざっっっけんなよ、てめえ!!ああ、そう、そうだ!これまでずっともやもやしてたけど、これよこれ!!


なんでいつも私だけキツくいわれんのよ!?杏樹だってさっきぼーっとバカ面下げてたでしょーが!!なになに!?なんで、杏樹には優しくして私には厳しい態度とるの!?


あいつがヒーラーだから!?高ランクスキル持ちだから!?顔が綺麗で可愛いから!?私のが若いし綺麗だし可愛いっつーの!!!


ただたまたまSSRスキルが当たってたまたま運が良かっただけの玉の輿クソババアがさあああ!!!


そのスキルがなかったらただのババアな癖に!!!


気取って清楚キャラ作って偉そうにしやがってさ!!!


ああああーイライラするぅ!!!


檜室も杏樹もクソみてぇに苛つくわあ!!


(別に檜室なんか杏樹に取られても良い……でも、この扱いの差はマジで気に入らない!!)


けど、イメージは崩せない……生配信中に喧嘩なんてしたら私のイメージが悪くなる、ここは我慢……ぐぐ、腹立つぅ!!!


いつか暴露本とかだしたろーかな、檜室が椎名を陥れたとかって!!あは、売れそー!!それいーかも!やっぱり私あったま良い!!


それはそうとして今度、檜室と杏樹の飲み物に鼻くそいれたろーっと、ふひひ。


――とんでもなくストレスが溜まっていた。そして、峰藤は、


……なにか、変だ……。


体に残る違和感。


ずっと誰かに視られているような感覚。


(……アビスで、冥くんと会ってからずっと……)


――峰藤 杏樹。謎の違和感に嫌な予感を覚えていた。


「我々『氷龍の刃』は、これよりD級ダンジョン『オラボの巣窟』攻略及び遭難者捜索を開始する!!」


アビスから戻らない大童を欠いた『氷龍の刃』選抜パーティの三人は、そうしてダンジョンへと突入した――






悲劇が待っているとも知らずに。






【重要】

先が気になる、もっと読みたい!と思っていただけたら、ブックマークや☆☆☆☆☆→★★★★★評価、をよろしくお願いします。執筆へのモチベが上がります。

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