10 喰べるね? ★
――圧倒的な力の差。
「……ぃ、ぁ……い、ぃ……ひぃい、ぁ……あ」
上擦った声が喉奥からした。大童はゴキブリのように地べたを這いずり、逃げようとする。
しかし、体が痺れ動けなくなってしまい、その場に伏した。そう、【雷電付与】を自身にかけた反動が来てしまった。
「……うーん。まだまだ必死さが足りないんじゃない、大童くん?」
「…………あひっ、ぃ……ぅ……ば、ぁ…………!?」
本来、30分は持つはずの自身への【雷電付与】……だが、腕を折られた事により大童の心も折れ、スキルが解除されてしまったのだ。
(――……く、くそ……からだが、動かね……)
――そもそもなぜ、俺の【雷電付与】の電撃を纏った体に触れて椎名は無事なのか?
大童の脳裏に疑問が過った。
なんのスキルも持たず、魔力も少ない椎名。そんな奴があの電撃に触れれば即感電死するはず。
その疑問に答えるように椎名は魔力を解放した。
ビシッ、と椎名の立っている地面に亀裂が走る。
凄まじい魔力圧。
「――……な……なんだ、この……魔力は」
椎名から発せられた魔力はレートSSSクラスの魔物を遥かに超えるものだった。
「大童くんは魔力の使い方が雑だよ。もっとしっかり練り込まないと」
「……おま、え……この量の魔力を、ずっと……」
「うん。凝縮圧縮させて纏っていた。どう?一見するとわかんなかったでしょ?」
辺り一帯の魔物の気配が消えた。椎名の魔力を感じ取り逃げたのだと大童はすぐにわかった。
326層の広さは北海道の陸地面積とほぼ同等あると言われている。それを全て満たすのではないかと思わされる程の莫大な魔力量。
(……い、いき……呼吸、が……)
途轍もない魔力圧に呼吸が出来なくなる大童。それに気がついた椎名が魔力をふたたび凝縮した。
「……は、はあ……はあ、はあ……」
大童は改めて理解する。なぜ【雷電付与】が椎名に効かなかったのか。それはシンプルに魔力の差。
自分と相手にあまりに魔力の差があると、ダメージやスキル効果が魔力の層に阻まれ通らない。これに似たことを大童は過去に経験していた。
杏樹。彼女と組手をした時、余りの魔力の膨大さにダメージを入れられなかったのを覚えていた。
(……だが、今の俺はAランクシーカー……駆け出しのEランクだったあの時とは訳が違う、なのに……)
――スキル無しで……この俺のSRスキルが、魔力のみで攻略されたのか……。
絶望が大童の心を包み込む。
「……魔力操作はシーカーの基本だよ。レアリティの高い良い【雷電付与】を持ってはいても、肝心の技術が無かったね」
つまらなさそうな顔で見下ろしてくる椎名。昏い瞳がただ無機質に大童をみていた。
(…………スキル、無し……に、俺が……)
今、この現状から導き出された答え。あの時、椎名の腕を折ることができたのはわざとだということ。
まんまと椎名の意のままに調子に乗らされ、そして遊ばれた。
かつて自分が椎名に対して行なってきた事。
それがそのまま返された。
「……ぁ……あ……ぃ……」
大童はあまりの恐怖に、いつのまにか股間が濡れ失禁していることにも気が付かない。
「けど、大童くんも可哀想だよね」
「……ぇ」
「だって皆行っちゃったでしょ?大童くん一人残してさ」
しゃがみ込み大童に顔を近づける椎名。にこにこと微笑む。
「あれ、気がついてない?檜室くん、姫霧さん、杏樹の三人は、僕の力に気がついていたんだよ?だからさっさとここから立ち去ったんだ……君を置いて。まあ、簡単にいうと囮にされたって事だね」
「……お、とり……」
大童は何を言われているのか分からなかった。いや、理解したくないと思う心がそうさせた。本能的にそれを否定する。
「そうだよ、君は捨てられたんだ。あの三人に……僕とおんなじだね?」
「……は……はぁ……はあ……」
「わかるよ、大童くん。悲しいよね、辛いよね、苦しいよね?なんで自分がって、どうしてって思うよね?すっごくわかるよその気持ち」
椎名が大童の頭を撫でた。
「ああ、本当に残念、君は不要と判断されたんだ。……あ、でも一応言うとさ、この状況だから仕方なく捨てられたんじゃないよ?みたでしょあの判断の速さ、君を見捨てて立ち去ったときのスピード。元々君は疎まれていて、いずれどうにかしたいと彼らは思っていたんだよ……僕、聞いたことがあるんだ。まだ君達のパーティ、ギルドから僕が追放される前のことさ。大童は粗暴で頭が悪くて何をするかわからない、それに前に障害事件を引き起こしていてチャンネルやギルドの看板に傷をつけられた……だからいずれどうにかして排除しないとって。あ、ごめんこれ陰口……いっちゃダメな事だった、ごめんね?でも大童くんも前に言ってたからさ、僕が空気読めないって。それを知ってくれてる大童くんなら、許してくれるよね?……あ、で、話を戻すと、やっぱり君は見捨てられたんだよ。悲しいね。悔しいよね。切ないよね。しかも僕のようにちゃんと追放だっていってくれなかった。これは裏切だよね、余計に悲しくてキツイよね……でも、彼らからすれば丁度よかったのかもね?それにさ、また君の死をネタにして数字が稼げる。もしかすると今頃喜んでるかもなぁ……あ!ああ、また僕は無神経な事を!ごめんね、空気読めないからさ、僕。ほんとにごめん……でも、」
大童が髪を引っ張り上げられる。
「高ランクダンジョンで生き延びてる僕に警戒もせず近づいてきた無能だもん、これは仕方ないよね?」
にいっ、と口角を上げ椎名は歪な笑みを浮かべる。それは大童からすれば邪悪な悪魔のように見え、心に恐怖として植え付けられた。
「あ、ああ、あ……ひっ、ひぃい……」
「じゃあ、暴食るね?」
禍々しい魔力が大童の体を包み込む。
――ッ……グチャ、バキィッ
【重要】
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