足りないモノ
蒼「まあ、今回の訓練に関しては……、急に出現した我無への対応は良かったと思うぞ。お互いに背中を預けてた所も評価のポイントだ……
だが、反省点を挙げるならば急所への一撃的中率はみんな低すぎだ。実戦に何度か出たやつもいるだろうが、このエリア内のケモノと鬼邪エリアのケモノとでは訳が違う。一撃で命中させなければ、こちらが死ぬんだ。それほど、1射、1射のレベルを上げないといけない。
だが……先遣隊に続き、遠距離部隊が結成されてまだ日が浅い。あの強さに付いていくだけでも、今のお前らだと十分てっとこだ」
皆「………」
蒼「弱いままじゃ、この先はそんなに甘くない。
俺たちは前線の中でも後方からの支援……、命のやり取りは先遣隊と比べると少ない。だが、弱いままだとどんなに頑張って矢が届いたとしても敵は死にはしない!
己の力を過信して、仲間を危険に晒すより
鍛錬を積み、業を磨き、強くなれ!そして
お前らにはお前らなりの強さを持って敵に挑め!」
皆「はい!」
蒼「じゃあ、これで反省会は終わり、解散とする
みんな、ゆっくり休んでくれ」
皆「ありがとうございました」礼
―――
湊「蒼さん、なんであの時、俺に射るように頼んだんですか?」
蒼「ああ、あの時か…。湊はやる時はやる男だからな。それに、弓の練習を遅くまでやってて、弓の扱いもまあまあ上手い」
湊「まあまあ、ですか。あはは」
蒼「ふっ。それになぁ……あの時、君の目から強さを感じたからかな」
湊「強さですか?強さ所じゃなくてあの時の俺、不安だらけでしたよ」
蒼「それは…ふふっ、見たら分かった。でもな、あの時の君の目は、仲間を守りたいっていう強い意志があった。その想いが俺と同じだと思ったから、任せたんだ」
湊「でも、それは皆にもあるやつなんじゃあ…」
蒼「いいや、それは誰にでもあるやつじゃないんだ。いいか湊、自分の中に、本当に大切なもの、本当の強さが心にあるやつとないやつでは戦いにおいて全く違うんだ」
湊「俺にとって本当に大切なもの……ですか」
(大切なもの……)
蒼「じゃあ、君は“何の”ために弓を引くのかい?」
湊「えっと……」
蒼「ふふっ、そんなにすぐに答えが出ていたら、俺は苦労しないよ。湊にとって、まだそれは曖昧なものかもしれない。だがそれが、心の奥にすっと入ってくるとき、君はいくらでも誰よりも強くなれる」
(強さ……あの時は夢中だったから、何を想いながら弓を引いてたんだっけ?)
―――
各々が棟内へ入る中、自身の丈より長く伸びた影を見ながら、拳を強く握り1人考える
(あの子の力で、怪我をせず無事に帰ってこれた。
俺はあの子のこと噂で聞いた通り、
バケモノみたいって怖がって……
あの子が知ろうとしてくれたのに、触れられるの
が怖くて拒否してしまった。
俺だけ、皆の役に立ってない
あの子を知ろうとすれば……
戦況は変わっていたかもしれない
もっと効率の良い戦い方が出来たかもしれないのに)