合同訓練
ウゥーンウゥーン
昼前の棟内に響き渡るサイレン
<これより、先遣 壱番隊及び 零番隊、
遠距離 壱番隊は魅陰エリア7にて
合同訓練を行う。直ちに集合せよ
繰り返す……>
―――
信「先遣隊並びに遠距離部隊、整列完了」
「皆さん、集まって頂きありがとうございます。
早速ですが、このエリア内でレベルⅢの
ケモノ《猿怒》が発見されました。他にもレベルⅢより
下位のケモノも、数匹発見されています。
現段階でケモノの数は小規模ですが、いつ増殖するか
わかりません。増殖し被害が生じないように
みなさん、早急にケモノの殲滅をお願いします!
20分後にエリアゲートが開きますので、準備をお願いします!」
蒼「おっ!新しく矢尻を変えたのか」
空「そうなんです。前より重くなったんですけど
その分、出力ケージを上げて殺傷能力を高くしたんです!」
蒼「いいんじゃないか。実戦に出る前にいろいろ試すのは良いことだ…」
皆が戦いの準備をしている中、海音が立ち上がって
海「皆、戦いが開始する前に
私の手を握ってくれないかな……
もし嫌なら、無理しなくても大丈夫なんだけど…」
海音の突然の言葉に、先遣隊のみんなは疑問もなく言われたまま手を握るが、遠距離部隊のみんなは
なぜ握る必要があるのか訳が分からない様子だ。
湊「な、なぜ握る必要が……?」
信「あとで戦いが、始まれば分かる」ニヤッ
圭「説明になってないんですが……」
信「うるさいなぁ、大丈夫だから。握って握って」
皆「ちょっちょっと」「僕は無理だよ」………
海「今からチームを分けます。先遣隊はいつも通り
隊長の指示に従って…。遠距離部隊は部隊長の
青海さんを中心に、湊、波瑠。そして圭悟、隆晴、空で組んでください」
「……はい」「了解」「分かった」
蒼(ほぅ、なるほど……)
―――
それぞれの隊に分かれ、歩みを進める。先頭から
零番隊、先遣 壱番隊、遠距離 壱番隊と続く。
森の中は木々の生気が薄く、ケモノの毒から生じたモヤが濃い。もとより深い影がより暗さを増す
海「止まって。あれは猿怒よ……。
こちらには気づいていないみたい。
私があいつを倒すから、他のケモノを頼みます」
先遣隊(頷く)
遠距離部隊(頷く者、怯える者)
猿怒は知能が高く、強力な顎、硬い岩をも砕くという握力を持っている。1番、敵に回したくないのは、知能のあるケモノだ。こちらの動きを読み、素早く反応するため、死者の数は計り知れない。皆が彼女を追わないのは、逆に足手まといになることを知っているからだ。それほどに彼女は強い
海音が端的に言い放ったあと、列から姿を消した。その場に立ち止まった皆が後方からそのケモノの姿を確認するが目では捉えられない。
そして、先程の海音と別れた場所から、数キロメートルしか離れていない所でレベルⅡのケモノ鱗牙を2体発見。体格は蜥蜴に似ており、小型だが動きが早い。
大「俺たちが切りかかるから、遠距離部隊は俺達の援護を頼む」
「「了解!」」
鱗牙は岩のように硬く鋭い爪を振りかざすが、
和真と悠斗はそれを避け、空いた脇腹に刀を振い
体勢を崩す。音を立てながら倒れた鱗牙に他の隊員が容赦なくいっせいに飛かかる
蒼「あの鱗牙は動きが俊敏だ。
仲間に当てないように集中しろ」
湊「はい……」ふぅーっ
特攻隊が鱗牙と対峙する中、彼らは弓を構え
ギリギリまで弦を引き狙いを定める
ギェェエエエエ!!!
信弥達がお腹に切りかかる間際、鱗牙の甲高い声が鳴り響く。その音が消えた瞬間、倒れた鱗牙の近くの茂みの影からが何かが飛び出てきた。
ドガァアアン
グゥゥヴァァッ
先遣隊が我無によって乱された。あれらは、名の通り自我を持たず上位のケモノの命令により行動をする。先遣隊と対峙していたが、身を潜め鱗牙を狙い撃ちしていた青海班、風間班の居場所が我無にばれ数匹こちらに向かってくる。
バシュッ
圭「次から次へと……ハァハァっ
これじゃあ、鱗牙に上手く当たらない……」
隆「どこを狙えばいいんだ?!」
海「青海班はそこで待機…。
風間班はそこから2時の方向へ進め」
インカムから落ち着いた声が入る。驚きながらも
それぞれの班が一斉に動き始める。