刀と弓
「なぁ!来週、皆で武器屋に行こう」
食事中、箸を止めて唐突に机に身を乗り出した信弥が話す。
大「賛成だよ、ちょうど刀の状態見て欲しかったんだよね」
和「なんで、皆で行かなきゃ 悠「新しく出来たお店があるからそこ行こうよ!」被せんな」
良「……行きたい」
真「なら、決まりだな。あっ!海音もついでに引っ張りだそうぜ」
大「いいね!僕らが先遣隊の仲間だからって話してるけど周りの人とはあんまし話さないし、社会に慣れるいい修行になるしね」
―――
信「ってことだから今から行くぞ」
自室の自動ドアを開けてすぐに放たれた言葉。
「はあ?!何が今からよ!何も聞かされてなかったんですけど!!」
信「教えた所でお前、用事があるからってすぐ逃げるじゃん!外にも出ねーし」
「うっ!わ、分かったからちょっと待ってて
いろいろ準備する…」
私と信弥は魅陰エリアの中で比較的、人口が多く、なんでも生活必需品が揃っている町などに出かける際は必ず専用防護マスクを着用しなければいけない。そして、刀などの武器を武器専門店以外で持つと身体に電気が走る手枷も装着し、周りの人に対し敵意がないことを証明し外出をする。
部屋から出て人気の多い場所を歩く。周りから冷たい目を向けられているが気にはしない。マスクや手枷を付け、厳重にする必要があるのかは、人々の顔色を見れば1発で分かるほど白銀色の髪は忌み嫌われているのである。
――
大「あ!こっちだよ!
ここが武器を選べるし、試し切りできる所なんだ」
武器屋〈風雅〉
入り口から入ってすぐに刀を始め、弓、斧などあらゆる武器が揃っている。そして、店員に武器の試し打ちを申し込むと、奥の試し場へ案内される。皆、それぞれ自分に合う刀を手にしそこへ向かう。
カッ!カッ!
先にいるグループから、力強い弓を放つ音が鳴り響く。
「あ、君たち...」
弓を持つ中、体格が良い男性のその言葉を合図に、遠距離部隊の皆が振り向く。白銀色の髪をみて目が会った瞬間、表情が怖ばり目を逸らす者、睨みつける者、恐ろしいモノに出会うかのような驚きの顔をする者など様々な反応をみせる。
ああ、この人たちも同じだ・・・
悠「どうも、蒼一郎さん、お久しぶりです。
皆で弓引きの訓練ですか?」
蒼「あぁ、ここは的を射るときアイツらの皮膚に近い材料を使っているから現場経験の低い皆の訓練用にはピッタリなんだ」
悠「そうなんですよ!俺らもそれ目当てで来てて...あっ!蒼一郎さんこいつら初めましてですよね。ちょうど良かったです。前から話に挙がってる友達を紹介しようと思ってたんです!ここで紹介しちゃってもいいですか?」
蒼「あぁ、構わないよ。ついでに君たちに皆を紹介しよう」
皆「えっ?!」
蒼「何だ?これからちょくちょく合同訓練で会うことになるんだから。今のうちに知っておいた方が良いだろう?」
遠距離部隊のみなさん、納得がいかないご様子。
悠「では!右から鳳条 大輝、一ノ瀬 信弥、皇 海音、早乙女 良平、西園寺 和真で最後は俺、五十嵐 悠斗です!よろしくお願いします」
皆「よろしくお願いします」
蒼「よろしく、悠斗からいろいろ話は聞いてるよ。じゃあ、こっちも右から如月 湊、宮野 波瑠、赤島 圭悟、風間 隆晴 、朝日 空、で俺が青海 蒼一郎だ。俺たちは遠距離部隊の中でも前線を担ってるんだ。俺は何回か君たち先遣隊と一緒に戦いに出て、サポートに回ったことがあるから、班員はだいたい知っているけど。この子達はあまりないかな……。皆良い子達だからこれから仲良くしてね」
全員「よろしくお願いします」
悠「じゃあ、俺達は端の方でやるんで!また」
蒼「ああ、また」
―――
挨拶を済ませた後、1人ずつ刀を握り、前方や側方から実戦のように飛び出てくるケモノを倒していく。この風雅では戦いで倒したケモノを利用し、カラダを機械で操作することでお試しの的として使っている。一人一人に合わせてケモノの難易度や皮膚の強度が変えられるため、自分でパネルを操作し選択していく。
悠「蒼一郎さん、やっぱりかっこいいなぁー。年齢も上だし大人の魅力ってやつ?憧れるよー」
和「なら遠距離部隊に入ればいいだろ?」
悠「頑張って弓引きの練習はしたんだけど……
遠距離は俺の身体に合わなかった…」がくりっ
良「……どんまい」ぽんぽん
海「なんか、あの人達と会った時すごい視線が集まった気がしたんだけどあれって……」
大「戦闘に参加しているとはいえ、部隊配列の関係で僕らと彼らが直接面と向かって会う機会が少ないからここで偶然出会って驚いたんじゃないかな。それに手枷やマスクで防護しているとはいえ、色んな意味で君らは目立つからさー」
海「そんな驚くっていう感じじゃなかったと思うんだけど……」
悠「うーん、でもいきなりは驚くって。それに何回か蒼一郎さんに会ったついでに他の子にも挨拶してるけどみんな優しくて良い子だよ。それに弓を引く姿も凄く綺麗だから!みてよ!」
そう言われ、みんな遠距離部隊の方へ目を向ける
カーンっ!
真っ直ぐに敵の弱点であろう場所へ迷いなく惹かれる矢。
確かに弓を引いている姿は美しい。無駄がなく精錬さが現れているいい立ち姿である。相当努力を重ねていることが分かる射型だ。
中でも蒼一郎さんは、美しさに加えてその鍛え上げられた身体から溢れる強さを弓にのせて引いていた。
信「確かに綺麗だな」
悠「でしょ!それに何回か会えば、だんだん仲良くなれるって」
「………そうなれたらいいなぁ」ぼそっ
あの表情は皆が言う驚きだけではないだろう・・・
他にもきっと・・・
一方、遠距離部隊側では・・・
彼らを見つめながら
湊「うーん、やっぱりちょっと怖いなあ」
蒼「怖いって思うから怖くなるんだぞ、湊。それに湊だけじゃない。最初、俺に会ったときなんて、鬼教官ってみんな怖がってた。でも今じゃあどうだ!怖くなんてないだろう?」
波「うーん、そりゃあそうだけどさー」
蒼「少しずつでいいんだ。少しずつお互いに慣れていければ………」あの子を見つめて
―――
この子達は優しい子だ。
怖いって思いながらも俺に対して
歩み寄ってきてくれた…
だからこそ願わくばあの子の傍にも歩み寄って欲しい
怖いといって皆から距離を取られても何も語らない
あの子の傍に……