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天藍を想う君 ~あなたの心に触れたくて~  作者: 乙宮 楓
それは悲しさ

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喪失

「うぅ……はッ!?琉おじさん!!」


私はハッと目を覚ました。

それはいつものベッド、景色ではなかった。

私はゆっくりと起き上がり、壁を伝いながら歩いていく。


窓から見えるものは変わらないが、木々が遠く小さくなり地面も遠ざかっていた。部屋の中は前より造りが頑丈になっており、玄関へ続く通路の扉が多くなっていた。


そして――

私は自分の手元を見た。


そこには、今までなかった‘’枷‘’が付けられていた。



ぼんやりと長い時間それを見つめ突っ立っていた。その時、壁の電子モニターに人が映し出された。


虎之助研究員「起きたか?すまないが、先日の件で部屋を含め色々と変更があった。今は自室内もだが、これからは手枷を装着して生活してもらう。」


淡々とした声が、静かに続く


「その手枷は布のように柔軟であらゆる動きに対応できるが、中は特殊構造になっており、君が危険な行動を取った瞬間、電気が流れるようになっている。もちろん、君の成長速度に合わせてその都度、設定の変更が可能だ。」


私は手枷をちらりと見つめる。

静かな圧を発するそれは、やけに冷たく感じた


「君も周りの人を傷つけなくないだろうから、分かってもらいたい。何週間か、検査をして安全が確認でき次第、自室内だけでも解除するように進めていく。一応、君の部屋と他の人が生活する部屋は離させてもらった。急な出来事で脳が処理出来ないと思うが、理解して欲しい。何かあれば、連絡してくれ」


頭の中は混乱していたが、彼女は震える声で尋ねた


「あ、あの!琉おじさんは大丈夫でしょうか?」

「…彼は治療中だ」

「じゃ、じゃあ、生きてるんですね?」


ホッとしたのも束の間


「彼はここではないエリアへ搬送されている。今回のことも含め、機密事項となり彼に関する情報は伝えられないことになった」

「そんな……」

琉おじさんが無事かどうかが分からないなんて……

不安や困惑が入り交じる。


「先日の君が暴走した件に関して、詳しく調査が入る。主に毒液の成分等を調査するようになるだろう。

…………何が原因であんなことになったのかは分からない。だが、報告によると君は………」


「…?」


「君はあの時、瞳が緋色に染まっていた」


「え?!」


思わず、目を見開く


「にわかには信じがたいが、銀白色の髪を揺らしながら緋色の瞳がほんのりと光っていたという。まさにその姿は……なんというか……」


ゆっくりと顔が下がり、声音が小さくなっていく


畏死鬼(バケモノ)と同じですね」


「………色々と辛いとは思う。状況が落ち着き次第で良いから、訓練所に顔を出してほしい。これは命令なんかじゃない、俺からの願いだ。琉は同期の俺にも、君の話を嬉しそうに話してくれた。琉だって、部屋の中に籠らずに外の世界を見てみろって思ってるはずだ」

「………」

「……………ゆっくりでいいから。

何かあれば連絡してくれ」


顔に当たっていた光が消えた。

ここじゃない所……


琉< 優しい母ちゃんか父ちゃんが迎えにきて一緒に帰ったかもしれんし、誰にでも優しくて優秀だったから特別に、こことは別の素敵な所で過ごしてるかもしれんなぁ >


どこかに行ったという友達

あぁ、そういうこと(・・・・)

昔の記憶から、理解が追いついた

(じゃあ、琉おじさんは……?)



「うッ……」

なんとも言えない感情が沸き起こり、目元を暖かくする。必死に飲み込もうとしても、喉の奥で震えて、抑えきれない。なんとか、気持ちを落ち着かせようと足早にベッドサイドへ座った。ふと気付くと、壁際にあるミニテーブルに見知らぬ箱が置いてあった。


箱の中を見てみると、そこにあったのは琉おじさんから貰ったプレゼントだった。分厚いシリーズ本や、可愛いマグカップ、他にもいっぱい。そして、誰かがやってくれたのだろう、所々繋ぎ合わせた縫い目があるクマのぬいぐるみまで。


この子は以前枕元に置いてあった、あの時気付かぬうちに傷をつけてしまったのだろうか。そう思いながら、ぬいぐるみの縫い目を優しく撫でた。そして、


私はそっとぬいぐるみを抱き締め

堰を切ったかのように

目元を一等熱くするものを止めようとはしなかった

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