過ち
いくら時間が経っても、頭痛は収まらず
全身を這う気持ち悪さは増すばかりであった。
自分の中で何かを渇望する欲が湧き蠢く。
一旦落ち着こうと、ベッドから起きて水を飲もうと壁伝いに歩いていった。
カーテン越しに、欠けた月が見えた。
ドクンッ!
その瞬間、異様なほど心臓が大きく脈打ち
自分でも分からない何かの感情が全身を包み込み
やがて意識は、深い暗闇へと沈んでいった。
―――
「…!こっちを……オ!…ちを見るんだ!…ミオ!」
「ミオ!」
聞きなれた声が私を光へと戻してくれた
視界が徐々に色を取り戻し、輪郭がはっきりとなっていく
「またせたなぁ、“ミオ”
ようやく目があった」
そこには信じたくない光景があった。琉おじさんの左肩から右脇腹に沿って鋭い何かで引っかかれた傷と右腹部には刺されたような小さい傷があり、そこからは血が流れ続けていた。瞬間、胸の奥がひゅっと冷たく締め付けられた。
そして――私は自分の手のひらを見た。
爪が長く鋭く伸びており、全て真っ赤に染まっている。自身の服にも飛び跳ねた返り血が付着しており、頬には生暖かい水滴を感じ、鉄分の匂いがこびりついていた。
「あ……あっ……あぁ!」
私はもう一度、琉おじさんを見て周りを見渡した。
所々壁や床が壊れており、血液が付着している場所もあった。それに、担架で運ばれている人やすぐそこで腕を押さえながら倒れている人もいた。私に向かって突きつけられている銃口も1つだけではなかった。
その瞬間、理解した
「ぁあああああっ!!」
頭を抱えて、身を震わすしか出来なかった
頭では思い出せなくても、
皮膚が、身体が全てを覚えていた。
あの後、私はその場で暴れ周り玄関の扉を蹴飛ばし、目に映るすべてを壊した。
―
豆腐のように容易く引き裂けた
クッションのように、どこまでも指が深く沈みこんだ。
そう、いとも簡単に。
我慢していたのか、何かが堰を切ったように溢れて誰にも邪魔されたくなかった。
煩い、目障りな目をした存在が
ずいぶんと自分より小さく小さくみえた。
もっと、もっと力を解放すれば…
―
私は気付かぬうちに悦に浸っていた。
破壊したい欲求に自分が飲み込まれ、初めておもちゃを手にした子どものように興奮してしまった。
私はやってはならないことをやってしまった。
ましてや、その行為に浸ってしまうとは
後悔、自責の念などあらゆる感情が
身のうちに巣食った。




