訓練
守人はケモノと戦う際に得意分野を生かした隊列を組む。身体機能が守人の中で高く、戦闘能力がずば抜けている先遣隊またの名を特殊精鋭部隊。後方から先遣隊を援護する遠距離部隊。怪我をおった隊員を治療する医療部隊。主にこの3つの部隊が中心となりケモノと対峙する。
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戦闘が休みの期間は、自分たちで各々鍛錬をする。魅陰エリアの中、屋外訓練場と隣接する武道場は、先遣隊を含め他の部隊も利用する。一際、注目を浴びていたのは鍛錬用ロボットと対峙する海音の姿である。
聞こえてくるのは彼女の落ち着いた息遣いと的確に相手の弱点をつく音。
ダァアアン!!
相手が刀を振り下ろしたと同時に、足を踏ん張り、身をかがめ、懐に素早く入り込みそのまま斜めに斬りこんだ。相手の左肩から右脇腹にかけて割いた。皆と同じ鍛錬用の刀を使うがその切れ味はまるで鋼のように鋭く、ガシャンと音を立てて崩れ落ちた。そんな鍛錬用ロボットの姿を皆が見て、海音と自分との実力の差に震え上がっていた。
「やっぱりすげぇ」
「俺らとは次元が違うなぁ」
「さすが、先遣隊の先駆者だな。雰囲気が怖すぎるぜ」
「分かる。近寄り難いよな、それにあの見た目が...」
「友達が言ってたんだけど、昔あの人の目がバケモノと同じ色をしてた時があったんだってよ!」
「マジか?!」
「怖いな…それに髪が白色なんてますますバケモノと一緒じゃん」
『おい!誰がバケモノだって??』
「一ノ瀬先輩?!いや、そのーなんというか…」
『髪が白いのがバケモノなら俺だってお前らの言う
バケモノなんだが??』
「ひぇっ!」
『そんなに口が動くなら俺の修行にだって
付き合えるよなぁ?』
「はい!!も、もちろん喜んで(汗)」
――
悠「はぁ、バカだねー、体力バカだよ。あんだけ、俺らとやったのにまだやるつもりなんだ」
良「……修行もそうだが、仲間の為だな」
和「あいつは人一倍、仲間意識が高いからな。
こっちが疲れちまうぜ」
悠「そんなこと言ってるけど、かーくんも
同じくらいだからね」
和「はぁ?!どこが同じだ!!」
大「そこまでだよ。まったく…休憩中なのに、
全然休まってないじゃないか」
悠「怒られてやんのー。あれ?そういえば、
海音どこいっちゃったんだろ」
皆の視線が気にならなくなったのはいつからだろう…
「バケモノ」って呼ばれても泣かなくなったのは……
屋外訓練場の森の中、戦いとは程遠い澄み渡った雲ひとつない空の下、それと同じ色のする花をただぼんやりと眺めていた。風が通る度、波紋のように広がる青い線をみながら、独り座っていた。
後ろから足音がする
信「また、ここに来ていたか。好きだなこの場所が」
「好きかは分からないけど、なんとなく落ち着くんだ」
また柔らかい風が2人の背中を通り抜ける
「確かに、穏やかな気持ちになるなぁ。俺も」
白髪が風に棚引く彼女の横顔を見て…
そっと静かに微笑んだ