どこ行ったの?
「うちの母ちゃん、機嫌が悪いと俺のことぶつんだ。最初は痛くて何だか分かんなかったけどさ、我慢したらさ、俺のことぎゅって抱っこしてくれるんだ。大好きも言ってくれるんだ!ずっとぎゅってしてくれるんだぜ!えへへ
それでな!いつも黙ってる母ちゃんが言ったんだ!俺がここにいれば母ちゃん幸せになれるんだって!だから、俺ここにいれるように頑張るんだ」
「私のとこはお家狭くて、ママにパパそれにお兄ちゃんとお姉ちゃんでしょ、弟もいるし。いっつもみんなでひっつきあってた。それにいつもご飯が全然少なくて……お腹の音いっぱい鳴ってた。でも、ここにいたらお腹いっぱい食べれるから幸せ」
ここにきて半年が経った頃、お話してたあの子達と会えなくて、どうしているのか気になった私は担当の琉おじさんに聞いた。
「415番くんと394番ちゃんはどこ行ったの?」
「うーん……そうさなぁ
あの子達は今まで勉強とか色々頑張ってただろ?
……優しい母ちゃんか父ちゃんが迎えにきて一緒に帰ったかもしれんし、誰にでも優しくて優秀だったから特別に、こことは別の素敵な所で過ごしてるかもしれんなぁ」
琉おじさんの声がいつもより優しくて、どこか遠くを見つめている目は悲しそうだった。
「………お別れの言葉言ってほしかったなぁ。黙って行くなんて…寂しい」
後半になるにつれ、声が小さくなっていった海音は涙を目に浮かべ、ゆっくりと俯いた。隣に腰掛けていた琉は震えている小さな子供の肩へ手をまわし、安心させるようにぽんぽんっと撫でる。
「寂しいよなぁ……辛いよなぁ
泣きたくなったら、泣けばいいんだぞ
お前は俺にとっちゃあ、チビでガキだぁ
我慢なんてするなぁ!
俺ァお前に少ししか会えないけどよ
絶対に居なくなったりしねぇからなぁ」
彼はそう言って、泣き出した私の背中を優しく撫でてくれた。
おじさんは仕事の合間を見つけては会いに来てくれた。突然、どこかに行ったという友達はまた1人、1人と増えていった。前までたくさん話してたのに、一緒に頑張ろうって言ってたのに、何でみんな黙ってどこかに行っちゃうの?
行き先を訪ねても具体的なことは濁されてしまった
ねぇみんな、どこに行ったの?