育ての親
「では、会議はこれで終了します。皆さん、報告等ありがとうございました」
皆、一礼し後方の扉から出ていく。海音も同じように出ようとしたが、誰かに呼び止められる
皇「海音、少し私と話をしよう」
私は緊張しながら、会長のそばの椅子に座った
他の人はおらず、私と会長だけが部屋に残る
「元気にしていたか?しっかり食べているのか?
なんだか前より、少し痩せたかのぅ」
「私は大丈夫です。ご飯もしっかり食べて残してません。痩せたのではなくて、縦に伸びただけですよ」
一つひとつ丁寧に質問を答えている様子を見て、会長は少し困り顔になってしまった。
「儂はお前のおじいちゃんなんじゃから、そんなかたい言葉は使わんでも良かろう」
「で、でも」
「ん?まだこの口は緩まんとか」
「んに!?わ、わひゃったよ」
「ふっはっは、それで良い!良いぞ」
“祖父”にほっぺを引っ張られ、口角が逆らうことなく緩やかなカーブを描く。そんな顔を見て、目尻にクシャっと皺を寄せる祖父
祖父には奥様がいたが、子供はいなかった。医者から2人の間に子供を授かるのは難しいと告げられた。その後も希望は捨てず、何年も子供を待ち続けた。2人は頑張ったが、何年経っても子供は授かれなかった。悲しみの中、愛する奥様の願いから身寄りのいない子供達を引きとり、愛情を注ぎ、彼らを大切に育て上げた。その時、この人達は身寄りのいなかった私を親族の反対を押し切って皇家の養子にしてくれた。戸籍上で私は娘に当たるが、他の養子の子達と、ひと回りも歳が離れているせいか私を孫のように可愛がってくれた。そのためか私の中では祖父のような存在になった。それから、時が経ち今より6年前に奥様は先に旅立ってしまった。祖父の昔と同じような大きな背中はどこか寂しさを語っていた。
私に、皆に与えるのと同じくらい愛情を注いでくれて、家族という温もりを教えてくれた。私は家族の中では末っ子で、置かれた環境からか特に気にかけて貰えた。怖かった視線から力強い大きな背中で守ってくれた。しわくちゃな手のひらで私の頭を優しく安心させるように撫でてくれたことを今でも覚えている。
だからこそ、いつも傍にいてくれるからこそ
白銀色のせいで祖父が傷つくのは見たくなかった
その思いが強いせいか、“おじいちゃん”と
呼んではいけないと思う自分がいる