大きな背中
私を包み込んでくれている感触がある
朝日を浴びながら、ゆっくり目を開け
歪んだ視界が、はっきりとなった時
私は彼と目が合った
―――
規則正しく寝息を立てている彼女
紅月ノ夜の前後は眠りが浅いのか、疲れた顔をしている彼女が、今は俺の腕の中で穏やかに寝ている
俺はきゅんっと胸を苦しませながら、もぞもぞと動き始める彼女を見つめる
(まだ ぼーっとしてるな、こいつ)
「し、信弥?」
「ん、そーだよ」
「あれ?なんで、ここにいるの」
「俺が離れようかと交渉したのに、誰かさんが断ったから」
「え?」
「ふっ」
「??」
「俺がここにいる理由はお前のせいだ
それより、よく眠れたか?」
「うん、いい感じ」
「なら、良し。俺はもう少しこのままでいる」
そう言った彼はふわっと笑って
私を優しく抱き寄せてくれた
「わ…」海音が声を出そうとした瞬間
シャーっとカーテンを勢いよく開けられた
大輝「はいはい、朝からイチャイチャしてないで
早く起きろー」
「ちぇっ、いーじゃんかー
これって滅多にない、貴重な時間なんだぞ」
「あー、はいはい。そんなことより、昨日の
報告しないといけないんだから、急いで」
(せっかくの貴重な時間が…
もっと傍にいたかったなぁ。くそっ、大輝め)
渋々といった感じで寝返り、ベッドの端へと座る
名残惜しさが前面に出ている背中が目の前にある
眠りから覚めた時、あなたの瞳は
私を抱き締める腕の強さと同じのように
熱を帯びていた。
(あのね……信弥
あなたがもう少しこのままでいるって言った時
私もこのままがいいって…言いたかった
あなたの腕の中は温かくてほんとに好きなんだって
今まで積もってた温かさが
私の中でほんのり色を持ったみたい
淡い けど自由な色
でも、私はそれがなにか分からないの
なんて言葉にすればいいのか、分からない)