願い
いつの間にか、2人とも星を見上げていた
彼女は眠くなってきたのか、俺に身を預け
重たい瞼をゆっくり上下させていた。そんな彼女を愛しく思っていると、彼女の唇がふいに開く
「信弥…」
「ん?」
「私の傍にいてくれてありがとう」
そう言った後、彼女の手は俺の腕に沿って手までつたっていき、優しく握ってくれた。俺も想いを込めて強く握り返す
「………」
ほんの少しの間、だけど俺たちにとっては長い時の中で俺たちは言葉を交わさずにお互いの存在を感じ合っていた。
ふと肩に重さが加わって、隣を見ると眠ってしまった彼女。穏やかそうな顔をしている。
「チュッ」
彼女の柔らかい額に軽く口付けをする
(どうか…
彼女から笑顔が消えてなくなりませんように)
―――
すっかり深く眠ってしまった彼女を
俺は起こさないように慎重に抱いて病室へと戻る
(俺にもどんな夢を見てたのか言えないんだよなぁ
声を殺して泣いてるってことは気付いているのに
私の傍にいてくれて…か。
こんな夜はお前がどっかに消えていなくなるんじゃないかって、雪のように解けて無くなりそうだから、俺のわがままで傍にいるって知ったらまたお前をびっくりさせちゃうかな)
カラカラ
病室のドアを開け、ベッドへ彼女をゆっくり降ろす
腕を身体から離し、立ち去ろうとした瞬間
服がぴんっと張った。彼女は目を閉じているが
手は離してくれないみたいだ
服に引っ張られるように隣へ横になる
肩まで布団を掛け、前にいる彼女を見つめる
俺は手を離してくれるように、彼女の頬へ指を当ててつんつんっと頼んでみた。どうやら、断られたようだ。なら俺は仕方なく、彼女をふわりと包み込んだ
俺の奥底にある温かさが
お前の夢の中まで届くようにと願いながら