少しの変化
<淡い水色の服を着て私に話しかけている……
輪郭ははっきりとせず、全体的にモヤがかかっている
あぁ、またあの夢だ……
何を言っているのか分からないけれど
とても温かく感じてしまうのはなぜだろう>
ズキンっズキンと脈打つ頭を抱えて起き上がる
カーテン越しに皆の寝息が聞こえてくる
そんな彼らを起こさないように彼女は静かに病室から抜け出した
何秒か経って、ムクっと1つの影が起き上がる
―――
窓ガラス越しに小さな星々が輝いているのが見える
椅子に腰掛けた彼女は頭痛が収まるのを待っていた
そして、なぜ泣いていたのか分からないが乾いた涙の跡を拭う
その時、後ろからふわっと背中に毛布がかけられた
驚いて後ろを振り向く
「寒くないか?」
「信弥?!あ、暖かいけど…、起こしちゃった?」
「いいや…起きてた。俺も寝付けなくてさ
気分転換に外に出てきたんだ」
「そうなんだ……」
信弥はそう言いながら、海音の隣に腰掛けた
彼は優しい眼差しで言う
「また…眠れないのか?」
私の涙の跡に気付いたのか、優しくて温かい手のひらが頬に触れる。私はこの温かさが大好きだ。温かさを頬で感じながら、自分の手のひらを重ねる。そして、彼の優しい瞳を私も見つめ返す。
「うん」
「怖い夢でも見たのか?」
「……うん」
「はぁあ……」
私が言った後、彼は大きくため息をついた
そして、私の目を見ながら、彼の顔が近づいてくる。私は反射的にギュッと目を閉じた。
コツンっと信弥の額と私の額がぶつかった。
「その時は俺を呼べって言ってるだろ?
俺が寝てても怖いって言って
俺を叩き起こせばいい
勝手に1人でどこかに行くな…
心配して眠れないから」
「………」
私の心がほわっと温かくなり、胸がギュッと苦しくなる。何も言わない私に対し、彼は距離をとって、私の顔を覗き込む
「おい、分かってるのか?」
「うん……分かった」
彼は私に独りになるなという。怖かったら、素直に怖いと言えという。彼は知らないのだろうか。
彼の言った言葉でどれほど私の心が救われているのか。心の奥底にまた、温かいものが溜まっていく
そして、気づけば頭痛は収まっていた