採取
月光に当てられて、銀白色の髪が揺れる
袖から流れる赤き雫はそのままに
自分と同じ色を纏うケモノを睨みつける
見た目からして獅子に近い
四足歩行型のケモノはレベルⅥだろう
前脚を軽く動かし1歩踏み出すだけで、地面にヒビが入る。良平と大輝が背後から後ろ脚の動脈、腱を狙って切りかかる。気配に気付いたケモノは後ろに視線を送り、右脚で蹴りつける。良平はもろに蹴りが入り、蹴りの重さで、後方へ飛ばされた。
「グハッ」
「良平!!」
大輝は脚に備えているスーツのエネルギー放出により瞬発力を向上させ、左下腿のアキレス腱に大きく傷を入れた。しかし、ケモノは痛む素振りを見せはするが、倒れようとはしない。
「ハァハァっ」
「大丈夫か?良平」
「あぁ…」
起き上がった良平は、大輝とともに前脚を狙う
ケモノは左後方からくる2人に対し、口腔内の毒腺から分泌した毒液を浴びせようとしていた。
「させるかぁ!」
信弥はその場で高く飛翔し、今にも毒液を出そうとするケモノの頭上目掛けて刀を振り下ろした。
ゴォヴゥウウ
ケモノは脳へのダメージを受け、少しだが体をよろめかせた。そこへ良平と大輝は焦ることなく、刀をななめ横へ振り、前脚の分厚い肉と骨を断ち切った。
火花のように雫が弾け飛んだ瞬間、スーツの出力を最大まで上げた信弥はケモノの脇に入り込み、鳩尾の部分を思っきり突いた。その拍子に、ケモノは片方の脚へ体重が乗り重心がズレ、バランスを崩した。
彼女は抵抗を許すまもなく、横倒しになったケモノへ瞬時に近づき、第5肋骨と第6肋骨の間にある左心室へ刃を突き刺した。そして、その位置から一横指分ズレた所にある毒腺の主幹部へ、ガラスの容器が付属している注射針を刺した。最初は抵抗していたケモノも仲間のおかげで抑え込めている。
ワインに酸素と結合していない暗色の血液を混ぜたような、独特の色をした毒液が機械によって吸い上げられ、ガラスの容器に溜まっていく。容器が満タンになると取り外し、別の容器をセットする。何回か同じ作業を行い、鉄分を多く含んだような血液が混ぜった色になった所で停止する。容器が割れないように保存ケースへ収納し、ゲートへ戻っていく。
―――
<ゲート解放します。離れてください>
皆が無事を喜び、隊員が治療室へ運ばれる中
海音はケースを研究員へ渡す
他の隊員と同じように流れていく天井を見ながら
彼女はどこか暗い表情をしていた