検査
木漏れ日からいくつもの日々が流れた
いつものように、みんなで切磋琢磨していた昼間
研究員の人がやってきて
「今日は定期検診です。今から案内をしますので
皆さん、付いてきてください」
「はぁー、またか」
「注射痛いのやだなぁ」
皆、愚痴を言いながらも研究員に付いていく
彼らがいる場所は鍛錬場とは程遠く、様々な分野の研究員がそこに集い、研究している。棟内の廊下を進み、検査室へ入る。身長、体重測定に血液検査まで一通り行う。そして、守人にとって重要な毒性検査を行い、検査の結果を待つ
「やはり、数値が異常に高いのはこの二人ですね」
「ああ、ここまで毒に適応できるのは珍しい」
「加えて、特に彼女は素晴らしいなぁ。あの第三次鬼人大戦のバケモノに近いぞ。全体的に能力値が上がってきている」
ゴクリッ
「あ、あの死者数が他より桁違いの大戦で、確認されたと言われるバケモノですか…」
一瞬、空気が静まり返った。
ある研究員は喉を震わせ、額に冷や汗が浮かぶ
「その力が今は人間側にあるなんて……
ふふ、素晴らしいとしか言いようがない!」
「このレベルなら次のエリアでケモノ討伐の際、毒腺を刺激せず、なおかつ毒液そのものを空気に触れさせずに質の高い状態で、貴重なサンプルを採取できるかもしれないですな」
「うまく採取出来れば、さらに強力な兵器が造れますぞ」
「あぁ、早く選定して新しい実験体を用意しなければ」
―――
検査結果を見渡す
前のデータよりも、数値が上がっている
この速度はレベルⅣの蜥蜴型
筋肉の繊維、出力ともに哺乳類型のそれに近い
これじゃあ、まるで……。
徐々に人とは遠く離れている
たまにぽっかりと穴が空いたような感覚が訪れる
言葉にして例えるならば 無に近い
それははたして
心が疲れて、眠っているのか
もしくは心そのものが消えてしまったのか
あの時の私ははたして人として在るのだろうか
仲良く結果について比べあっている人達を見ながら、
ポツンと一人考えている
「やだ、また体重が増えちゃった」
「私もよ」
彼女らは守人ではあるが、私みたいな戦闘型ではなく医療部隊に所属している人が多い。
守人の中で、女性はあまり多くない。身体的故なのか、毒との適合性が男性より低い。その為、番いとなる場合は検査結果から適する者が選ばれる。
それも含めてなのか、同性の中でも私は異質だった
――
ポツンと立っている彼女を見る
1人の影が顔を覗かせる
「あぁ!お姉様!今日も素晴らしい佇まいだわ
お声をお聞きしたいー!!」