強さとは……
「私はそんなあなたを弱いとは思わない」
空「っ!?」
「今もこうして、弓を引いて弱い自分に負けないよう努力している。一生懸命、頑張っている。それは凄いことだ。素晴らしいことだ。…大抵は弱いからと諦めて自分と向き合うことすら出来ないんだ」
空「……」
「強さという1つの道に縛られることなんてしなくていい。あなたならその道の他にも、…見えるはずよ。力以外に自分が“自分”でいられる道がきっとあるはず。見渡してみて、周りには何も無かった?あなたは独りだったの?」
(俺は……)
《隆「空、そんなとこに突っ立ってないで
こっちこいよ、ほら」
波「空がいなくちゃ、誰が俺のライバルになるん だ!」
圭「空っていつも頑張ってるな。すげぇぞ
そんなだから、負けてられねぇんだよな」
湊「空も仲間なんだから、頼ってよね」
蒼「いいか!俺はお前らのこと、
信じてるからな!」》
空「見つけた……あったよ。
そっか俺………俺独りじゃない」
服を掴んでいた指がそっと離れる。そして、何かを想うように、今度は自分の胸へと触れる
「あなたは“私”とは違う
あなたがいるから、周りは強く在ろうと思えるの。あなたを信じてるから、背中を預けて一緒に戦える。辛いならば、辛いとみんなに伝えればいい。
あの人達はあなたを決して独りで置いていったりしない、仲間なんだから。だからこそ、あなた達は強いのよ」
空「あぁ……なんだか“強い”の意味が
分かった気がする」
瞳を閉じる
先程より、勢いの収まった雨音が聞こえる
空と同じように、目尻から一雫の涙が溢れ
頬を伝っていく
(呼吸が楽だ……嘘みたいに
頭も冴えて、視界が開けてる
暗くて訳が分からなかったのに
今まで、強さに執着し過ぎてたな
自分を信じてなかった
見失ってた……俺は
《はぁ 何で俺弓なんか始めたんだっけ?》
俺は……朝日 空
仲間を守るために弓を始めた!)
目を開き、的に向かい
弓を持ち、矢をつがえ“構える”
顎を引き、いつもより少し重心を前に出し
腹部に力を入れる
スゥーーハァーーー