この世界は
(はぁ、はぁ、はぁ)
月の光を受けて淡く輝いていた刀で首元に斬りかかり、返り血を浴びながら相手の目の中の光が完全に消えるまで敵と対峙した。荒い息を整え、先程まで首元に刺さっていた刀を抜き取り、血を振り払う。他に敵がいるか辺りを見回すが、仲間の手によって命はこときれていた。
倒れてもなお毒臭を放ち、体内から毒液が滴り落ちるケモノは、身体が毒に対応できる守人でなければ戦えない。
このケモノは、その毒の強さ故に昔から人々から畏れられている。体格は龍のような大きい物から体長1mの小さい物まで異なり、集団で襲うケモノや個体で襲ってくるケモノなど様々で、それぞれランクごとに強さを表し識別している。今、データとして残っているものだと、最も強いレベルがⅥとなっている。レベルⅠの基準が銃を使えば人間5人で殺せるレベルである。
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ここは15ものエリアからなっている内の1つ、
エリア10
エリアは、人工的に造られたビル20階建てに相当する壁で四方を仕切られており、ケモノが外へ逃げないように出来ている。エリアごとに区切り、その中で守人が戦うことで効率の良い殲滅を図っている。
危険度が高く、ケモノが多いエリアを鬼邪、準危険エリアを魅陰、人が生活できるエリアを天と呼んでいる。現在、天はエリア3、魅陰は6エリア、鬼邪は整備されているエリアを含め2エリアとなっており、残りが地図で仕切られているだけの守人さえ足を踏み入れていない鬼邪エリアである。今、鬼邪エリアの1つが殲滅され、後に魅陰へ移行される。魅陰から天エリアになるには長い年月が必要とされ、完全に毒臭が無くならなければ、天エリアに移行されず一般の人間が住むことが許されていない。このようなサイクルによって人々が住む天エリアが徐々に増えていくのである。
守人――身体機能は普通のそれとはケタ違いであり、ケモノを一刀両断できる腕力・素早い攻撃を見極め、回避することが出来る動体視力など多岐に渡り、稀にその人だけの固有能力を有することもある。
守人はケモノの毒に身体を慣らすために、鬼邪よりも比較的、毒素の薄い魅陰エリアにて生活する。戦いから帰還した後、守人は壁の自動ドアを通って殺菌室へ入り、身体を洗浄する。そして、服や武器に至るまで何もかもが無毒処理をされることではじめて生活スペースへの入室を許可される。守人が住む建物は、魅陰エリア内でケモノが発生した場合を備え、壁から密着するようにそびえ立っている。