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魔法少女の食道楽  作者: 石田空


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お悩み相談にはたい焼き

 最近闇妖精が強くなってきているとは言えど、魔法少女がふたりいたらそうでもない。


「カレイドスコープフレアストーム!!」


 テンカさんの炎が炸裂し、動けなくなった闇妖精を、私が風のブーストを使って一直線に飛び、カレイドタクトを脳天にぶつける。


「いいから、さっさと闇オーラ、吐き出しなさあい……!!」


 ぶん殴ってどうにか今日も闇オーラを吸収し、どこから逃げ出したのか、ひょろひょろに小さくなったハムスターはどこかに走り去ってしまった。

 飼い主さんたちのところに帰れたといいんだけど。


「はあ……終わったぁ。お疲れ様です」

「最近闇妖精が暴れ回ってたから、早めに片付いてよかったよかった」

「ああー……お腹空いたぁ」

「なんだい、ナナは普段からずいぶん食べるじゃないか」


 テンカさんは「今日出してるのはたい焼き屋だけど、来るかい?」と呼ばれる。私も目を輝かせているが、何故か肩に乗っているリリパスまで「たいやき!」とくるくる回って喜んでいる。


「リリパス、いつの間にテンカさんところのたい焼き食べてたの」

「もちもちしててカリッとしてて中が甘ぁーいんですの。大好きですの」

「だそうです」

「妖精まで喜んでくれたんなら、先代も喜ぶよ。それじゃ行くよ」


 夜にたい焼きなんて売れるのかな。たしかにあんこはお通じがよくなるし、甘くておいしいけれど、お酒を飲んだ口には合うのかなと思っていたけれど。

 屋台の周りには意外と人がぞろぞろ待っている。


「私、屋台の店主待ちなんての、初めて見ましたけど」

「ここの先代、元々は高架下でたい焼き屋をやってたんだけど、改装工事の際に店を追い出されて閉めるしかなくなってねえ。そこそこ有名だったのさ。うちも季節が変わったら焼き芋も売れないし、そこを引き取って他の屋台と日替わりでやってるのさ」

「なるほど……既に名前が売れてる店だったんですね」


 たしかにたい焼き屋って、フードコートで気怠げなバイト店員が焼いて出したのと、きちんと訓練された店員さんが焼いて出したのだと、皮とあんこの比率、皮の火の通り加減が全然違うんだ。

 あんこはしっかりと真ん中に、皮は薄過ぎず厚過ぎず表面はカリッと中はもちっと、そしてあんこをしっかりとフィットさせてあんこと皮を同時に食べる。

 言葉にするとこれだけなのに、下手なのだとあんこがしっぽと胴の真ん中に入ってないからふたつに割ったらしっぽに全くあんこが入ってないとかあるし、皮が分厚過ぎて味のない皮の味だけ延々噛み締めないといけなかったり、逆に皮が薄過ぎて持った途端にあんこがムギュッと出てしまったり。

 魔法少女姿だというのに、誰もつっこみを入れないのは妖精の鱗粉のせいあろう。それを浴びている私たちを見ても、誰もそれをおかしいとは気付けない。


「ああ、たい焼き屋さん! どこに行ってたんですか!」

「はいはい。ただいま帰りましたよっと。それじゃあすぐ焼くから待っててくれな?」

「はあい!」


 テンカさんは鉄板に生地を流し入れ、そこにあんこをひょいひょいと入れて焼きはじめた。鉄板から漏れ出てくる香りが既においしそうだ。

 今再会したばかりだというのに、次から次へとたい焼きは売れていき、お客さんもなかなか途切れることがない。さすがに闇妖精との戦闘で待たせてたしなとしばらく眺めていたら、やっとお客さんがはけて、私もテンカさんにお金を支払ってたい焼きを食べることができた。

 私はたい焼きをポンッとふたつに割ってからゆっくりと咀嚼する。

 あんこの熱々さもそうだけれど、生地の美味さ、厚過ぎず薄過ぎない歯触り、表面がカリッと香ばしく中がもっちりした食感がたまらない。


「おいひいれす」

「そりゃよかった。先代の作り方が上手かったんだよ」

「本当に、おいしいです。あのう……もうひとつ買えますか? 持って帰って明日の朝温めて食べようかと」

「そりゃかまわないけど。どうしたんだい、今日はずいぶん粘るじゃないか」

「うう……」


 リリパスは端っこに座ってテンカさんにたい焼きを分けてもらっている。妖精はお金が払えないからタダだ羨ましい。としょうもないことを思いつつ、紙袋にたい焼きを入れてもらい、私はお金を払って受け取った。


「……彼氏ができたんです」

「そりゃめでたいねえ。一個サービスしといてやろうか」

「わっ、わっ。そう何個もサービスしてもらう訳にはいきませんよ」

「で、なんでそんなに浮かない顔を?」

「いやあ……私も元の年齢が元の年齢なんで、結婚を前提にしたお付き合いになる訳ですが……うちの家に彼氏を紹介していいもんかなあと」

「ふむ。それは問題は実家かい? 彼氏かい?」

「実家ですねえ……うちの親、少々思い込みが激しくって、それが原因で不健全家族でしたから、大学入ってからほとんど言い訳して家に帰ってません。さすがに結婚の報告はしないといけませんが……どうしたもんかと」

「ふーむ」


 そりゃ今時絶縁している家だってあるだろうけど。でもお兄ちゃんも家出している中、私までこんなんでいいのかなと思う。


「まあ、そこまで考えている相手だったら、親より先に彼氏と話を付けたほうがいいと思うけどねえ」

「まだ付き合いはじめたばっかりで、そんな重い話していいんですかね?」

「というより、その彼氏とも結婚を前提としたお付き合いするんだったら、早いほうがいいと思うがねえ。俺もかかあと結婚する前にゃさっさとかかあと店の話とかしたもんさ」

「テンカさん結婚されてたんですか……」

「既にかかあはお空に帰ったけどなあ」

「ああ、すみません。余計なこと」

「別にいいがね。でもちゃんと彼氏さんと話しとけよっつうのは本当だ。それはお前さんを守るのにも、彼氏を守るのにも必要なことだって俺ぁ思うよ?」


 さらりとテンカさんからとんでもないことを聞かされつつ、私は考え込んだ。

 実家の話は、はっきり言ってあんまりしたくないし、それをして立川さんに引かれたらどうしようと、ついつい保身に回ってしまうけれど。

 でもそうだよね。テンカさんの言うとおり、これは早めに話をつけないと駄目なことだ。

 はあ、魔法少女の姿で人生相談してるんじゃないよ。私は誤魔化すように「すみません、今食べる用でたい焼きをおかわり!」と叫んだら「それ売り物にならない奴」とあんこのはみ出たたい焼きをただでくれた。

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