終章:本当の終わり
この小説を開いてくださりありがとうございます。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
厳しい受験を乗り越えて受かった大学。
そこでの生活も俺は全力で楽しんでいた。
「あ、おーい小村ーこっちこっち!」
「おーすぐ行くー!」
大学生になって早三年。
サークルには結局軽音サークルを選んだ。
やっぱりバンドは楽しかったし、ギターもようやく高難度の曲も弾けるようになってきたから、辞めるのは惜しかった。
それに軽音サークルなんて、大学生っぽいでしょ?
白田、、夏目との関係も続いている。
夏目の大学に合わせるために受験は本当に頑張った。
なんとか補欠で滑り込んだ時は運命のようなものを感じた。
「おー小村これから授業?」
「おう、今から。そっちは?」
「俺もだよ。がんばろーぜー」
学内を歩いているとよく声をかけられるし、スマホには複数人からメッセージが届いていた。
(授業終わったら返すか)
遅刻しそうだったので少し急いで行く事にした。
「お、あいつらか」
授業が終わり、メッセージを確認すれば高校の時のバンドメンバーからだった。
内容は今度飯でも食いに行かねーか、とのこと。
勿論行く、が予定もあるのでこれから連絡とっていって予定を合わせていく方針で伝えておく。
他にも今日飲みに行かないかというものも来ていた。
今日はバイトもあるので、断ってしまったが。
そう、大学に入ってからバイトを始めた。
高校の時よりも時間が出来たので少しでもお金を稼ごうと思い始めて。
こんな風に飲みに誘われた時に「母さん、お小遣い」なんて言いたくないしね。
本当に俺は順風満帆な生活を送っていた。
今に不満なんて何一つなかった。
一年後
更に時間が経ってもう四年生になった。
なんとか内定を勝ち取って、今は大学の友達と飲みに来ていた。
「小村は、内定取ったんだって?」
「そうだよ、後それもう三回目」
「え~?んなことないって~」
「お前悪酔いし過ぎ。水も飲め水」
「ほら、他の奴らにも言われてるだろ」
時期的にはもう内定を貰っている学生も多くなってきた時。
打ち上げも兼ての会だったが、こいつはまだ内定を貰っていない。
他のみんなはもう貰っているが、こいつは怠けていたからである。
「おーいそろそろ出るぞー」
なかなかの時間居たので、そろそろ帰ることに。
「うお寒!」
店を出ると、外かなり冷えていて俺達はすぐに解散した。
一人歩いている時、ふとあの時のことを思い出した。
俺が死んで、神様に会った時。
そういえば神様があの時言っていた言葉が無性に気になったが、アルコールのせいか、思い出せなかった。
『明日卒業だね』
『そうだなー、まじで今までお疲れ!』
卒業式の前日、俺は夏目とメールでやり取りをしていた。
卒業、つまりは明日を終えれば俺はこの長い学生時代を終えることになる。
不安は正直ある。
だって会社で働くなんて始めてだし、社会人になる不安なんて多分誰でもある。
そう思うことで俺はやっと眠りにつけた。
「じゃあなー、小村」
「おう、じゃあまた」
卒業式が終わって時間がくる。
この後は夏目と出掛ける予定があるので、俺は帰ることに。
『一旦家帰ってからでいい?』
『いいよー、待ってるねー』
俺は一度帰ってから合流することに。
「あ、やべ。コンビニ行かなきゃ」
親からメールで頼まれたのを忘れているところだった。
コンビニに寄って、目当ての物だけ買って俺はコンビニを出た。
ふと向こう側の道を見れば、学生達がいた。
(卒業式かなんかの帰りか?)
皆楽しそうに笑っていて、俺まで嬉しい気持ちになってしまった。
そして夏目と会う事を考えながら俺は信号を渡った。
でも渡りきることはなかった。
俺は横から突っ込んでくるトラックに気付かなかった。
吹っ飛ばされた俺は朦朧としていて、なにも考えられなかった。
一つだけ分かったのは俺が死ぬこと。
「痛ってて、信号を青だった気がすんだけどな」
確か自分は信号を渡っている時にトラックにはねられた。
「あー夏目んとこ行かなきゃなのに」
そこで俺は違和感に気付いた。
何故俺は生きているのか、いや、なぜここにいるのか。
「ってことは」
俺は思い出した、ここがどこか。
そしてこの後誰が来るのか。
「久しぶりだな、神様」
「私にとっては一瞬だったがな」
再びの対面。
俺は前よりも思考は回っていた。
「んで、俺はやっぱ死んだの?」
「…ああ、その通りだ」
「そっかー、まぁでも事故なら仕方ないかな」
勿論まだまだやりたかったことはある。
これからもっと長い人生があるはずだったからだ。
「事故ではない」
「は?事故だろ。運転手の人がわざと轢いたってか?」
「いいや違う」
「じゃあなんなんだよ!」
神様の言っていることがよくわからなかった。
「そなたは死ぬ運命だった。だからこの死は決まっていた。あの時から」
「は?」
(あの時?もしかして俺が前ここに来た時か?)
「何言ってんだよ…どういうことだ」
「そなたは言ったはずだ。学生時代だと」
「学生…時代?」
その瞬間俺は思い出した。
あの時の言葉を。
「私は学生時代をやり直させてやる、と言ったはずだ。そなたの学生時代は今日終わった」
そして神様は続けていった。
「だから死んだのだ。この死は決まっていた」
「な…」
俺は言いたいことや、考えることやらが無数にあった。
でも、俺は、、あんまりだと、思った。
これまで、、戻ってきてから毎日を必死に生きてきた。
一日一日後悔の無いように過ごしてきた。
でも。
最後が、、、決まってたなんて。
「…もう一度ってのは、、ないよな」
「ああ、ない。これで終わりだ」
そっか、とだけ言って俺はもう何も言わなかった。
しばらく沈黙が続いた後、俺は一言言った。
「俺はこの後、、どうなるんだ?」
「あの世に向かう。そして輪廻転生を繰り返す。記憶は当然無くなる」
「幽霊になって残る、、ってのはいいかな。もう」
また沈黙が続く。
「ではもう送ろう。何か言っておくか」
「いや、もうなんもねーよ」
「そうか」
そして、この後俺はあの世に送られた。
"俺の″人生はここで終わるらしい。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この話は、これにて完結とさせて頂きます。
結末に関しては最初から決めており、その前提のストーリーでした。
一つの話を完結させたのはこれが初めてなので少し思うところもありますが、間違いなく今の自分の全力で書かせていただきました。
これまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
次回作でもお楽しみに!