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二周目で俺は  作者: くろむ
5/8

第四章:初恋

この小説を開いてくださりありがとうございます。

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

「小村!そっち行ったぞ!」

「おっけー!」


二年、冬。

市大会準々決勝。


ビー――――


試合終了の音が鳴り、俺達は負けた。

試合が終わって、更衣室でユニフォームから着替える。


「ベスト16だっけ、よくやったよな」

「まぁ頑張ったんじゃね?」


別に最後の大会じゃないし、結果もベスト16。

だけど、悔しかった。


「小村も、凄かったぜ」

「あ?でも負けちまったよ」


本当に頑張ってきた。

どうやったらもっと上手くなれるか、その為にするべきこと。

全てやった自信はある。

でも、この程度なのかもしれない。

俺の様子を見て、視線を逸らした奴もいたけど、そのくらい本気だったからだ。


三学期。

そろそろ俺も受験生に近付きつつある。

勉強は頑張ってはいるけど、平均に追いつくのがやっとだった。

水樹さんに関しては…。


「あ、小村君この前大会だったんでしょ?どうだったの?」

「負けたよ負け。接戦でもなかった」

「そっかー、やっぱり厳しいね」

「そっちもなかったっけ?」

「私は、、まぁまぁだったよ」

「まぁまぁって」


といった具合に話せる仲にはなった。

まぁここまで時間をかけてこのぐらいなんだけどね。


俺の人生は順調である。

部活も勉強も恋愛も。

全て余すことなく堪能している。



三年、春。


三年生になり、またクラスが変わった。

水樹さんとは、別のクラスになってしまったが、連絡先も交換に成功していた。

他にも、普通に廊下ですれ違ったりとか、部活で体育館で入れ替わる時とかに話したりするようにもなっていた。

極めて順調で、嬉しい事である。

他のクラスメイトは、同じグループの奴もいたし先生もハズレじゃなかったので全然いい。

そういえば白田さんは同じクラスだった。

白田さんはやっぱり女バスに入ることになって、それもあって偶に話したりもする。


「なーお前さー」

「ん?」

グループのうちの一人の奴が話しかけてくる。

「まだ水樹さんのこと好きなん?」

「んな、別にいいだろ」

「いやそういうんじゃんくさ、あれ知ってる?」

「あれ?」

こういうやつらと絡むようになっていいことがある。

それは話がよく周ってくるということ。

「四組の田中、告るらしいぜ」

「は?あいつまじかよ」

田中はサッカー部に入ってて、何回か話したこともある。

実際割と良い奴で、モテるらしい。

「今同じクラスだし、狙ってたんじゃね?」

(た、確かに…)

「お前もそろそろ動いた方がいんじゃね?」

「…そうだな」

「え?マジで!?」


実際機会は伺っていた。

それに今年のうちにと思っていたし、今しかないかもしれない。

告るらしいということは、それはまだってことだ。

(先手を打つしかねー)


すると決めたら次に決めることはどこでかだ。

勿論連絡先持ってるしメールで、、はなしだ。

直接言う以外に選択肢なんてない。

でも問題は場所。

この学校には校舎裏なんてものは実質ないし、屋上にも当然行けない。

人の少ない場所すらほとんどない。

だから人が少ないタイミングで言うしかない。


「…おーい。おーい小村!」

「はいはいなんでしょう」

つい考え込んでいたらしい。

「部活、そろそろ行くぞー」

「まじだ急がないと」

練習開始時刻まで少し余裕がないので急がないといけない。

取り敢えずは練習に集中しよう。


練習中


「小村ー悪いんだけど職員室からあれ持って来てー」

「分かったー」

あれとはまぁ色々道具の入ったカバンの事で普段は何故か職員室に置いてある。

体育館に置いてくれてればと何度も思ったがそういうアレらしい。


(…そういえばここは人通り少ないな)

体育館から職員室への道は確かに人が少ない。

この時間だと部活入ってない人は皆帰っているというのが理由だが。


「あれ?小村君」

「え?水樹さん?」

偶然廊下で鉢合わせたみたいだ。

「今日部活休みじゃなかったっけ」

「あー忘れ物しちゃって」

「そっか」


(やばいなんかドキドキしてきた)

「小村君は?」

「あ、あー俺は職員室に」

「そっか、じゃあお邪魔しちゃ悪いね。頑張ってね」

水樹さんが帰ろうとした時。

「待って水樹さん!」

「!」

とっさに声が出てしまった。

絶対に今じゃないと、今だけは違うと言い切れるけど。

今しかないような気がした。

「あのさ、ちょっと言いたいことがあるんだけど」

「どうしたの?」

(やばいドキドキしてきた!緊張して、えっとえっと)

頭がぐわんぐわんして上手く考えがまとまらなかった。

(でも)

そんな中でも一つ、明確に分かる感情がある。

(言うんだ、今しかない!)

「水樹さん、好きです。俺と付き合ってください」

心臓の音がこんなに聞こえたのは生まれて初めてだったけど、そんな事思うほど余裕はなかった。

顔がとんでもなく熱くて、顔もまともに見れないけど、気持ちを伝えた。

しばらく沈黙が続いた。

「あの、えっと…」

「ご、ごめん、急だったよね!でも、その…」

言葉が続かなかった。

「私…」

水樹さんが言葉を発し始めた。

「今はそういうの考えてないの。だから、、ごめん」

そう言って、走っていってしまった。「

俺は振られたらしい。

人生で初めて振られた。

俺は壁にもたれかかりながらゆっくり座った。

そこで少しの間動けなかった。


その後は余りにも遅すぎたのでちょっと皆から怒られはしたが、練習に合流した。

正直全く身が入っていなかった。

どんな風に体を動かしていたかも分からなかった。

そしてなんとなく家に帰って、部屋に入った。

そして俺は泣いた。

二周目で初めて、泣いた。

俺の初恋は三十年以上だってようやく終わった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに!

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