第二章:理想の今
この小説を開いてくださりありがとうございます。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
俺は中学生になった。
「おーい小村ー!」
呼ばれた方向に振り返ると、走ってこちらに向かってくる男の姿が。
「よ―久しぶりー!」
「言うて一週間くらいだろうが」
この男は前田。
小学校では同じバスケ部としてそこそこ仲良くしていた。
「そういやお前中学でもバスケやんだっけ?」
「おう、そのつもり」
「そっかー、また一緒に頑張ろうな!じゃ、俺先行ってくからー!」
またなー、と言ってあいつは走っていった。
小学性生活は長かった。
中学高校と違い六年もある時点で覚悟していたが本当に長かった。
(ま、その間に計画ほとんど練ったんだけど)
小学校では一周目と同じでバスケ部に入って。
身長は小さいが小学生レベルだったら案外活躍もできた。
試合にも結構出てたしね。
一周目では中学でバスケ部ことはなかったけど、今回は入ろうと思う。
やっぱり何かしらのコミュニティに入っているのは強いと思ったから。
(部活動って奴も青春を感じるよなぁ)
小学生時点の俺の立ち位置は、グループにはいつもいる奴、っていう感じだったと思う。
決してグループ内の中心ではないけどそれに近い存在。
要は組織の幹部的立ち位置だと思う。
なぜここまで思うを連呼しているかというと、確信が出来ないからだ。
計画は自分一人で考えているし、誰かに対してそんな事は聞けないからだ。
つまりは親友的ポジションの奴がいないということ。
別にそういう奴が欲しいのかと言われるとそうでもない。
二周目だなんだと言っても信じる奴はいないからだ。
なんて考えてたらチャイムが鳴り始めた。
「そういや前田の野郎走ってたのそういうことか!」
流石に入学式に遅刻はまずいので急いで集合場所に向かった。
ちなみにギリギリセーフだった。(ちょっとだけ怒られたけど)
入学式が始まり、体育館で長々と先生等が話をしているが、勿論聞いてなどいない。
今日から始まる中学校生活に心を躍らせているだけだった。
(人はやっぱり多いな)
うちの中学校は近所の小学校の二校が合わさるような形だ。
公立の中学に行くなら自動的にこの中学校に行くようになっている。
勿論私立の中学校に行ったりとか引っ越したりとかもあるけど、人数は小学校のほぼ倍。
合わさる方の学校の奴らは当然面識などない。
が、バスケ部だった奴なら多少は知っているかもしれない。
などと考えているといつの間にか式は終わりそうになっていて、今から退場していくようだ。
クラス順に席を立って、教室に向かっていく。
俺のクラスは位置的に最後の方に出ることになる。
体育館から出ていく奴らを見る。
クラスは違くても三年間一緒になるであろう人達。
そのなかで、一人。
綺麗な黒い髪は、短めではあるが髪を切ったのは何カ月か前なのだと分かる様な長さだった。
体育館の出入口の近くでは風が吹いていて、横顔が見えた。
彼女の顔はとても綺麗で、俺は目が離せなかった。
「おい、次出るの俺たちの番」
と隣の席の奴が声を掛けてくれるまで俺は呆然としていた。
「あ、ありがとう」
と小さい声で返しながら、席を立つ。
教室に向かいながら、彼女の事ばかり考えていた。
教室に着き、しばらくの間席で先生を待つことに。
その間に思い出したことがあった。
(彼女の名前は、確か…)
俺は一周目でも彼女に惚れた覚えがある。
本当に俺の初恋だった人。
前は話しかける勇気なんてなかったから、名前を調べることしか出来なかった。
一年の時、移動教室に向かっている最中に俺は教科書を落とした。
その時拾ってくれたのが彼女だった。
でも、それ以来何もなかった。しなかった。
今度こそは…なんて考えていると担任の先生が教室に来ていた。
一旦頭をリセットして、彼女の事は後でまた考えることにした。
担任の先生は一周目の時は違った。
前と同じ中学に来たので、これまでの行動で色々変わったのだろう。
まぁ初日だし、入学式で時間も使ったので今日は後プリントとか、教科書を配るくらいだと思っていた、が。
「今日は最後に自己紹介をしてもらいます!」
(は?)
(入学式あったし下校時間も決まっているのに今日やるのか?
頭おかしいんじゃねぇの? )
なんてちょっと言い過ぎたななんて思いながらも頭は回していた。
確かにさっきからこの先生が熱血っぽい雰囲気があるとは思ってはいた。
それに自己紹介はもう六年間考えてきた。
だから不安になることなどない!そう自分に言い聞かせた。
出席番号順に自己紹介をしていくことに。
俺は小村だから少し余裕はある番号だ。
(よし、思い出せ!俺の六年間を!)
中学高校に上がった時に自己紹介は必須になる。
そう考えた俺は戻ってきてから六年間考えてきた。
そして結論が出た、それは。
"面白い事言うとか無理″だった。
そんなものは天性のものが必要になる。
だから大事なものは!
(よし!次は俺の番。やるしかねぇ!)
席を立ってその場で言う方式なので、出来るだけみんなの方を向いて言わなければならない。
「どうも!小村颯斗です!」
(時間はあんまりないから言うことは名前と後一二個くらいだ!)
「バスケ部に入ろうと思ってます!これからどうぞ!よろしくお願いします!」
(面白さは要らない!とにかく明るく話して接しやすいように!そしてバスケについて触れたから好きなやつとかもなるべく引きつける作戦!)
本当ならもう少し言いたいことはあったが急遽にしてはいい方だとは思った。
不安な気持ちもあったけど、拍手の数と表情からして悪くはなかったようだ。
(はーーーー怖かったーーーーーーー)
その後も無難な感じに進み下校時間に。
(と、取り敢えず初日はクリアかな)
この後は適当に声かけて帰ることに。
「よー小村ー帰ろうぜー!」
「おー帰るか」
バスケ部で仲が良かったやつらと帰ることに。
その中で別小学校の奴とも合わさることに。
(そういえばこいつならあの人の事知ってるかも)
彼女は転校してきた訳ではないので小学校は同じなはずだと思い聞いてみることに。
「なぁ、そっちの小学校でさ、なんか可愛い子いなかったっけ」
「えー、可愛い子可愛い子」
(ほぼ初対面のはずなのに真剣に考えてくれるなんていい奴だなこいつ)
「あー!水樹さんかも!」
(そうだ!水樹、水樹香奈)
「多分そうだと思う」
「なんで突然?てか何がそうなの?」
「あーいやなんか、入学式で見つけてな」
「一目惚れかー?」
なんて皆がからかってくるけど、実際そうだ。
「でも辞めといた方がいいぞ?小学校でも何人振られたか」
二十?三十?なんて話していたがそれも納得のいく存在だった。
「いやそんな多くない気もすんな」
一人の奴が突然言い出した。
「だってなんつーか高嶺の花?っていうのか、なんか避け始めてなかった?」
モテすぎてって事か。
つーかだいたいそういうのって高校とかの話じゃね?小学校でそこまで?
なんて考えてたけど話題が変わっていたので俺も考えないことにした。
「じゃあまた明日なー」
「おーう」
家に帰ってからもう一度作戦を練る。
実際に行ってみて分かることもある。
だから作戦は随時見直していくのだ。
(水樹さんか)
この前は話しかけることすら出来なかったけど今回は…。
今回ならばと、そればかり考えていた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
えーと、また訂正しまーす。
本当は一話一話めちゃ長くする予定だったんですけど、そうするとペースがやばいので、話数とか気にせずバンバン話進めようと思います。
次回もお楽しみに!