序章:もう一度
この小説を開いてくださりありがとうございます。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
もう一度あの時に戻れたら。
きっと皆が一度は考えたことがあると思う。
記憶を持って子供の頃からやり直して。
多分一周目の時とは違う選択をする。
勉強を頑張るだとか、部活だとか。
人に聞けば聞くほど、違う答えが返ってくるだろう。
でも、どれだけ考えてもそんなのは実現不可能だ。
もしも五十年後タイムマシンが生まれたとしても、きっとやり直しなんてものは出来ない。
出来たとしたら、それは多分仮想空間だとか、そういう話。
だから今のこの現状は人生の全てだ。
俺は今年で三十八歳。
仕事はしてない。
大学受験に失敗して、そこから部屋に引きこもっている。
何度か働こうといたことはあったが、面接に行く事すら出来なかった。しなかった。
季節は春で、辺りには桜が咲いていた。
部屋から出ることのない俺は、今それを知った。
コンビニに向かっている俺は昔の記憶を頼りに道をたどっていく。
コンビニに行くのだって久しぶりだった。
(疲れた。やっぱり外に出るのは疲れるな)
なんて考えながらもコンビニに着き、目当ての物だけ買って直ぐに帰った。
辺りはとっく暗くなっていて、人がやけに少なかった。
向こう側の道には、学生の集団がいた。
恐らく仲のいい連中は楽しそうに笑っている。
(俺の人生、どこで間違えたんだろうな)
なんてありがちな考えをしながら歩いている俺は、横から突っ込んでくるトラックに気付かなかった。
吹っ飛ばされた俺は朦朧としていて、何も考えられなかった。
一つだけ分かったのは、俺が死ぬこと。
「いってー。信号青だったはずなんだけどな」
記憶を遡ってみるが、自分は信号を渡っている途中ではねられたはずだ。
「今の俺悪くねぇよなー、ったく何してんだよあいつ」
なんて轢いてきた奴を恨みながら俺はあることに気付いた。
「なんで、生きてんだ?つーかここどこだよ」
辺りを見ればそこは病院でもなければ家でもない。
それにいってー、なんて言ったが体に傷などなく、痛みはどこにもなかった。
(どっかの建物でもねぇな)
取り敢えずここがどこだか知りたかった。
所謂あの世的な物を考えたりもしたが、神様らしきものもいなかった。
「異世界転生とか出来んのかな」
なんて思ったが、直ぐにその考えはなくなった。
だって異世界転生したところで俺はどうしようもない人間だ。
それに俺に戦う勇気はない、仮に俺が最強のチートやろうだとしてもだ。
「つーかまじでなんなんだよ」
かれこれ数十分は何もない気がする。
数十分といっても時間感覚が正しいか分からない。
だって景色は何一つ変わらないし、体の感覚も、なんていうかフワフワしていたからだ。
「哀れな人間よ」
「!!」
今確かに声が聞こえた。
何もない空間で初めて俺以外の情報が入ってきた。
「誰だよお前。ほんでここはどこなんだよ」
とにかく言いたいことは山ほどあったが、取り敢えずはこれが知りたい。
「私はそなたらには神などと呼ばれる存在である。そしてここは私が作り出した世界だ」
(神、こいつが神なのか)
アニメの見過ぎなのか、すんなり受け入れてしまった。
「ほんで神様よ、俺は一体どういう状況なんだよ」
(もしかしてまじで異世界転生すんのか俺?)
なんて考えていたが、結果は違った。
「まず言おう、そなたは死ぬ。このままでは」
やっぱり、俺は死ぬらしい。
まぁトラックに轢かれて生きてる奴はいねぇよな。
「ん?このままではって?」
言い方に含みを感じた。
そう聞くと神は言った。
「そなたは、人生に強く後悔しているな?」
それは俺にとって何よりも効く言葉かもしれない。
俺の人生は後悔してばかりだ。
小さい時から今まで、ずっと。
「…だったらなんだよ」
「やり直させてやろう」
(は?やり直す?何を。人生を?)
思考がまとまらなかった。
神様なら出来るのかもしれない。
言いたいこともわかる。
でも、理解が追い付かない。
「貴様が特に後悔していることはなんだ」
特に、後悔…か。
言ってしまえば人生の全ては後悔していると言える。
でも、特に。
つまり一番ということ。
なら、だったら。俺は。
「学生時代。だと思うぜ」
人生は体感時間では学生で半分を終えているらしい。
実際人生の多くは学生時代で決まると、俺も思っている。
もしも、やり直せるなら。
「そうか、学生時代。か」
そう言うと神はニヤリと笑ってから告げた。
「いいだろう、そなたを学生時代に戻してやる。
記憶は引き継がれる、だが忘れるなよ。
自分の言葉と、意志を」
意識が遠のく中で、その言葉を聞き。
俺は戻ってきた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この話は三話構成を考えております。
文字数もバラバラで、書き方も見にくいものとは思いますが、また見に来てくださいましたら、幸いです。
それでは次回もお楽しみに!