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1話 出会いはいつも必然に




 --新代1065年1月7日

 --光聖王国第1都市

 --レイ

 

 サービス開始したばかりだからか、多くの人で賑やかな雰囲気だ。

 所々で馬車が通っているのも見える。

 おそらく、町の様式は中世ヨーロッパだろうか。

 

 確か先に始めた2人(幼馴染と友人)と待ち合わせの予定だったよな。

 集合場所は、『トカゲ食堂』だったか。

 噴水の近くにあるって言ってたけど、一体どこにあるんだ。

 

 チュートリアルの時に地図をもらっていたし見てみるか。

 えーと地図によると……噴水はこの道を通って右に行って……。


 ドンッ。

 

「……うっ。」


 やってしまった。

 地図に集中しすぎて、前に人がいることに気づかなかった。


「ごめん!大丈夫?」

「ぅ……おかあさん……。」

「ん?」


 どうしたんだろうこの子。

 

「おかあ、さん……がっ……、ぅ……。」

「大丈夫。落ち着いて話してね。何があったの。」

「うっ……、おかあさんと……。

 おかあさんと一緒にリコの実を取りに山へ行ってて……それで……。」

「それで?」

「……それで大きな狼に……襲われて……。

 おかあさんが私の代わりにおとりになって……。」

 

 ……なるほど。

 確か昨日、友人が言っていた。

 このゲームはまるで現実で、クエストの発生さえも偶然に起きることがあると。

 また、ゲーム内の人達は僕たちプレイヤーと違って死んだら蘇ることはない。

 だからこそ、このゲームは本当の人と同じように接するべきだ、と。

 

 もし母親が亡くなったら、

 目の前にいるこの少女はこれからどうするんだ。

 

 将来、彼女が成長して大人になれたとして、

 あの時、力があればと後悔し続けるのだろうか。

 それとも自らを庇って死んだ母親に対して自分勝手だと恨むのだろうか。

 どんな未来であれ、それは――。


 

 

 ――それは、胸糞悪い話だな。


 

 

「大丈夫だよ。お兄さんがなんとかする。」

「本当?」

「ああ。とりあえず君は『トカゲ食堂』っていう場所にいる

 お姉さんとお兄さんに事情を説明してきてほしい。」

「そしたらお母さんは助かる?」

「大丈夫。僕を信じて。」

「……わかった!」

 

 

 森までの道はさっきの地図で記憶済み。

 さて、『人探し』始めますか。

 


 


 


 -------------------------------------------------

 緊急クエスト≪母親の救出≫

 

 クリア条件:少女の母親の救出

 報酬:不明

 内容:不明

 

 

 



 ――適正レベル【30】――

 -------------------------------------------------

 



 



 --新代1065年1月7日 

 -光聖王国第1都市北方面【恵みの森】

 --???



 

「いい?町の方まで走るのよ。」

「でも、それじゃあお母さんが!!」

「大丈夫よ。私は後からちゃんと帰るわ。

 だからね、リサ。走るのよ!」

「……分かった。」


 


 一体どうしてこうなってしまったの……。

 ただ私はかわいい娘と一緒に夕飯用のデザートを取りに行くだけだったのに。


 はぁ。まったくついてない。

 せめて、あの子だけでも助かれば……。

 

『グルルルル……。』


 この凄まじい威圧感――自分でも笑っちゃうくらいの格上ね。

 

「けど、簡単に死ぬわけにはいかないのよ。

 【中級水魔法≪水切(ウォータースライス)≫】!!」


 全盛期の私よりは威力が落ちてるかもしれない。

 けど、それでも中級魔法よ。

 足止めくらいにはなるでしょう。


「なっ、なんで!?」


 無傷!?

 中級魔法をまともに受けたのに傷すらつかないなんて……。


「どんな化け物よ……。」

『グルルルル。』


 なっ!?

 いつの間にもう一体!?


「うっ……。」


 まずいわね。完全に囲まれた。

 一体なら逃げられたかもしれないけど……。


『ウオーン!!』


「くっ!」


 やられた……。まさかまた別の奴がいたなんて。

 なんとか避けれたけど、恐怖で足が動かない……。

 

「はぁ……。ここが私の死に場所なのかな……。」


 長生きして娘の成長をもっと見たかったのに。

 ごめんね、愛しいリサ。どうか幸せに生きて――。


「――やっと追いついた。

 これがあの子の言ってたやつか。思ってたよりでかくないか、この狼。」

 

 誰?

 

「誰かはわからないけど、危険よ!早く逃げなさい!」

「いやいや、そんな足じゃあ戦えないでしょう。

 ここは僕に任せて急いで逃げてください。」

「でもそれじゃあ……あなたが!」

 

「――僕は大丈夫。だから逃げて!」

「でも――。」

「早く!」

 

 

 


 

 --新代1065年1月7日

 --光聖王国第1都市北方面【恵みの森】

 --レイ



 

 こいつ足速すぎだろ!

 何とかしないと、このままじゃ追いつかれてしまう……。


 というか、さっきまで4体ほど狼がいたはずなのに

 1体しかいないのはどういうことだ。


 最初に追いかけてきたのは4体同時だった。

 母親の方に行った狼は1頭もいなかったはず。


 考えてもしかたない。今は何とか状況を打開する方法を考えないと。


「クソ狼が。骨でもしゃぶってろ。」

『ウオーン!』


 な!?

 いきなり、増えた!?

 

 さっきまで、1匹しかいなかったはずだ。

 それが急に4体になった……。


 走りながら考えると息が続かない。

 何とかして対抗策を――。

 

 ≪光聖王国第1都市北方面ボス【呪黒狼】とエンカウントしました。≫


 は?

 ちょっと待って今なんて――。


『グルルルル……。』

「おいおいおいおい……。」


 こいつら、いきなり10体くらいに増えていないか。


 まずい。完全に囲まれた。

 こうなったらもう……戦うしかない!


「ボス戦は増えないっていうのが基本だろうが!」


 【緊急回避】を使うことで何とか避けていられるけど……息が持たない!

 このままでは……。


「ハァハァ……。マズいな。」

『ウオーン!!』

 

 クソッ……。避けられない!!


「グハッ――。」


 ああクソッ。

 食らっちまった。


 死の直前に時間が遅くなるとはこういうことなのか。

 痛覚軽減システムがあるとは言っても少しは痛いものなんだな。

 

 あの母親は助かったかな。

 プレイヤーはデスポーンするとしても、彼らは死ぬらしいからな。

 そう考えると良かったのか。



 

 それにしても勝ちたかったなぁ。

 




「おい玲。お前そんな簡単に諦めるやつだったか?」


 この声は……。


「ほれ、ポーション飲んで2戦目やるぞー。」


 ああクソ。お前は本当に――。


「すまんな。少女の母親を守屋に任せていたらちょっと時間がかかってな。

 けどまあ玲君よ、よく言われるだろう。英雄(ヒーロー)は――。」


「『遅れてやってくる』か。智也。」


「だろ?」


「そういうところだぞ、残念イケメン。」


 正直助かった。あと少し遅かったらデスポーンしていただろう。

 投げ渡されたポーションを受け取り、口に流し込む。

 ポーションの味は正直不味かったが、文句は言えない。

 

 

 さあ……これで準備は整ったか。

 第2ラウンドの始まりだ。







 -------------------------------------------------

 10匹の狼と2人の男。

 混沌とした森の中を、一人の少女が覗いていた。

 -------------------------------------------------


 

 



お久しぶりです。

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