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番外編 前日譚 マリッジブルー その2

*あらかじめ謝ります(;^ω^) こんなくだらない嫌がらせですみません(^▽^;) でもエステルにとっては切実です…

マリオンからお茶会への招待状を受け取ったエステルは戸惑っていた。


彼女のフレデリックへの恋心を知っているので、自分が出席しても良いものか迷う。

しかし、王女として三大公爵家の一角であるミラボー公爵家を粗略に扱う訳にはいかない。


結局エステルは招待を受けることにした。


そして現在、マリオンの正面の席に座り、オホホウフフと笑う令嬢たちの会話に温和な微笑みを浮かべながら耳を傾けている。


幸い、エステルに対して敵意を向ける令嬢はいない。

和やかな雰囲気でお茶会は進んでいた。


「それにしてもエステル殿下の結婚式まであと一ヶ月ですわね。結婚式の準備はどうですか?」

「ドレスはもう完成していらっしゃるのですよね?」


やはり結婚式に関する話題が多い。

エステルが身振り手振りでウェディングドレスの説明をすると、令嬢たちは瞳を輝かせた。


他にもアクセサリーやフレデリックの衣装など質問が相次ぎ、エステルが答える様子をマリオンは黙って見つめている。


お茶会は最後まで穏やかな雰囲気のまま終了した。


無事に終わってホッとしたエステルだったが、帰り際にマリオンから「二人だけでお話しがあります」と声を掛けられて内心青ざめた。


嫌な予感しかしない。


しかし、断るのは難しい。エステルは不安を抱えながら小さく頷いた。


エステルが案内された小部屋は、薄暗く物がほとんど置かれていない。

がらんどうの倉庫のような場所で、エステルは恐怖を覚えた。


「マリオン様、あの、こんなところで何を……?」


エステルが振り返ると、背後に立っていたマリオンがガチャンと扉の鍵を閉める。


マリオンはエステルをじっと睨みつけた。


「貴女にわたくしの気持ちなんて分かりっこない!」


エステルの背中にじっとりと冷や汗が噴き出した。


「エステル殿下、わたくしは、ずっとずっとフレデリック様に恋をしておりました。いえ、今でもその気持ちは変わりません」


マリオンの双眸に涙が盛り上がるのが見えて、エステルの胸が痛む。


(気持ちは分かるわ。私だってフレデリックが好き。彼を奪われたら嫉妬に狂ってしまうかもしれない)


「フレデリック様は誰にも恋することがない。そう信じていた時はまだ気持ちが楽でした。誰のものにもならない存在だから仕方ないと諦められたのです」


エステルは返す言葉もない。ただ俯いてマリオンの言葉を聞くほかなかった。


「それなのに! 突然貴女が現れてフレデリック様は変わってしまった。女性が大嫌いで誰にも近寄らせなかったフレデリック様があんな風に……情熱的な愛情を捧げる女性が現れるなんて! わたくしだって一度でいいからあんな風にフレデリック様から見つめられたかった!」


マリオンの目尻から涙がポロポロと溢れる。エステルは黙ったまま立ちすくんだ。


「……ですから、エステル殿下。わたくし、貴女に嫌がらせをすることに決めましたの。女王陛下に訴えても構いませんわ。わたくしはどんな処罰も覚悟しております。床を見て下さい」


何の変哲もない床だと思っていたが、よく見ると微かに魔法陣が浮き上がっている。


エステルは焦った。


「マリオン様っ! 魔法で犯罪を働いたらすぐに魔道具で残滓が検出されて……」

「勿論、存じておりますわ。言ったでしょう。わたくしは覚悟を決めているのです。犯罪者になっても構わない。フレデリック様を失った世界ではもうどうなってもいいのです!」


そう言ってマリオンは呪文を唱え始めた。


「汝の腹が永遠に呪われるように!

汝の腸が災いを呼び込み、不和を生むように!

好きな男の前で昼も夜も汝の屁が止まらざらんことを!」


マリオンは厳かに呪文を唱えた後に、エステルに聞こえないような小声で「光あれ(ルーモス)」と詠唱した。あらかじめ蛍光塗料で床に描いてあった魔法陣がパァッとまばゆい光を放つ。


マリオンは嫌がらせに偽の魔法を仕掛けて、エステルを騙すことにしたのだ。当然魔法陣も偽物だ。

しかし、エステルはそれを知らない。


「こ、これは……なんという魔法なの⁉ 魔法陣を使った魔法は古代に廃れて知る人はいないはず……」


エステルの緑色の瞳が恐怖で見開かれた。


(し、しかも……『屁』? それは……おならってこと⁉ 好きな男性の前で、昼も夜も空気が漏れてしまうということなの⁉)


「ほほほほっ! これはミラボー家に代々伝わってきた秘伝の魔法なのよ!」


そんな魔法があるはずない。マリオンは堂々と出鱈目を宣言した。


しかし、エステルはバカがつくほどお人好しで騙されやすい。素直で人を信じやすい彼女が、マリオンの嘘を見抜けるはずなどなかった。


エステルはよろめきながらミラボー家を後にしたが、見送りに出てきた侍女が心配そうにエステルの背中を見つめていた。

*今夜、新作も投稿予定です(#^^#) 既に17万字書けていて山場は超えているので完結は保証済み♪

*タイトルは↓です(#^^#) 色々ツッコミどころがあると思いますが伏線だと思ってください(;^ω^) 


「君を愛することはない」と言いましたよね?前言撤回はナシです

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